百貨店・ショッピングモールなどの商業施設のwebサイトはどうあるべきか?
百貨店業界は、人口動態の変化や情報化の進展に伴い、競争が激化しています。この中で、商品の品質や機能を強調するだけでは顧客のニーズに応えきれなくなっています。顧客が店舗で感じる満足感や情緒的な価値の提供が求められています。百貨店の強みは多様なブランドや商品を一つの場所で提供することですが、これを進化させた「コト」の消費体験を重視する必要があります。さらに、商業施設や小売店は単なる購入場所から、体験や価値を提供する場へとシフトすることが求められています。このように、現代の消費行動の変化に対応するために、商業施設のウェブサイトや提供する体験を革新する取り組みが重要です。
- Date:
- Author:
- KOJI NAKAGAWA
- Category:
- Marketing

コト消費への変革が進む一方、取り残されるデジタル分野
百貨店業界は、人口動態の変化や情報化・高度化の進行により、市場が一層競争的になっています。この変化の中で、単に商品の品質や機能を強調するだけでは十分でなく、顧客が店舗で感じる直接的な満足感や高揚感、すなわち情緒的な価値の提供が重要となっています。百貨店の強みは、さまざまなブランドやカテゴリの商品を一つの場所で提供することにありますが、これをさらに進化させた「コト」の消費体験が求められています。
百貨店の更なる活性化には、店外からの顧客を引きつけ、その消費を店内で循環させる取り組みが鍵となります。商品だけでなく、関連するイベントやサービスを組み合わせた「コト」としての消費体験を提供し、顧客にエモーショナルな価値を認識させることが重要です。
「コト消費」の観点から見ると、百貨店は単なる商品の集合体ではなく、一連のショッピング体験の場として捉えられます。このアプローチを採用することで、各フロアやコーナーが総体的に結びつき、一つの情緒的価値を形成します。このような取り組みは、各社で行われ売り場改革は進んでいる一方デジタルの活用は、あまり進んでいないのが現状です。
商業施設・小売店・観光の比較
商業施設や小売店は、単なる商品の購入場所ではなく、体験や価値を提供する場としての役割が求められています。この観点から、観光地のwebサイトがどのように情報発信を行っているかを参考にすることができます。
商業施設のサイトが学ぶべきは、観光系サイト
観光サイトは、訪問者に目的地の魅力を伝え、行動を促すための情報を効果的に提供しています。これは、商業施設のwebサイトが目指すべき方向性とも言えるでしょう。
様々な角度からモデルコースを紹介する神奈川トラベルインフォ
神奈川トラベルインフォは神奈川県の観光情報を提供するサービスで、既に設定されたモデルコースから観光客が神奈川の魅力を効率的に体験するためのガイドを提供しています。さらに、観光客は自分の興味や好みに合わせて観光コースをカスタマイズして作成することもできるという利点があります。
観光地の混雑を見える化する京都観光Navi
観光客が京都を巡る際の重要なサポートツールです。このツールを使用することで、人気の観光スポットの混雑度を事前に確認したり、リアルタイムの映像情報を元に効率的な観光ルートを計画することができます。また、大勢の観光客が集まる場所だけでなく、日中でも比較的静かな隠れた観光スポットの情報も提供されており、混雑を避けて落ち着いた観光を楽しむことができます。
パーク内を快適に過ごすための東京ディズニーリゾート・アプリ
東京ディズニーランドや東京ディズニーシーの公式ツールとして、訪問者にさまざまな便利な情報を提供しています。チケットの購入からアトラクションやレストランの待ち時間の確認、さらにはパーク内での位置情報まで、このアプリを使用することで訪問者はよりスムーズにパークを楽しむことができます。
このように、現在の観光サイトは来訪動機の形成にとどまらず、来訪したあとの体験価値を向上させるべく、さまざまな取組が行われています。
商業施設のwebサイトは、チラシ文化から脱却する必要がある。
流通・小売業界は、いまだに過去の業界構造を風習を色濃く残しています。それがチラシ文化です。チラシは紙面の制約がある以上、多くの情報を掲載できません。そのため、商品情報は写真と一言コメントになりがちです。写真と一言コメントは、既に購買意欲がある人には、商品の存在を知らしめ、ほしいかほしくないかの意思決定を迫るためには良いのですが、この物が溢れた時代においてイノベーティブな商品や、需給バランスが崩れており、欲しいのに流通量が足りないようなヒット商品しかその対象になりません。
イベント情報が単なる情報の羅列
イベント情報がタイムリーに更新されることは素晴らしいのですが、イベントの見どころや顧客に対する提案がない
コンテンツなき、商品紹介
流通構造がECの登場により、ディストリビューション機能に価値創出が難しくなった今、商品写真だけでは顧客の興味関心を得ることは、難しくなっています。イベントバナーと商品写真・スペックだけでは来店動機にはなかなか繋がりません。
テクノロジーを活かした顧客体験の創出
現代の技術を最大限に活用することで、更に魅力的なwebサイトを構築できます。
toviraなどをを活用したパーソナライズ
訪問者一人ひとりの興味やニーズに応じた情報提供が可能です。
レストランの混雑状況をリアルタイム表示
館内では、リアルタイムに表示されている施設もありますので、データを再活用することでwebサイトにも表示することが可能です。
ユーザーレビューの活用
ユーザーレビューを登録できるようにし、店舗には良い緊張感を、利用者にはより良い顧客体験を提供することができるようになります。ポイント付与や、プレゼントキャンペーンなどを併用することで、レビュー登録の促進を図ることができます。
テナントが活用できるwebサイト
テナントに編集権限を移譲し、リアルタイムに更新することができることで新商品の入荷や、キャンペーンなどを発信することで販売促進活動の1メニューとして利用することができます。
リテールメディアとしてのwebサイト
上記の取り組みを行うことで、webサイトのプレゼンスが向上します。プレゼンスが向上すれば、広告価値をもち、リテールメディアとしても運営することが可能となります。
まとめ
商業施設のwebサイトの役割は、これまで主に来店前の情報提供や誘引を中心としていました。しかし、時代とともに顧客の消費行動や期待は変化しており、webサイトが担うべき役割も変わってきています。
まず、来店前の情報提供から、滞在中のサポートや後のリピート誘引までのサイクル全体をサポートするための情報やサービスの提供が必要です。例えば、店内の商品配置やサービス、イベント情報をリアルタイムで提供することで、来店客の滞在時間を増やすことができます。また、来店後のフォローアップや、特典提供によってリピート率を高める取り組みも考えられます。
さらに、最近の技術の進展により「デジタルツイン」という概念が注目されています。デジタルツインとは、実世界の物理的なものやプロセスをデジタル上で再現し、シミュレーションや分析を行う技術のことを指します。商業施設の場合、実店舗の動線や商品配置、顧客の動きなどをデジタル上で再現し、最適化のためのシミュレーションや分析が可能となります。
このデジタルツインを利用することで、リアル空間での顧客体験をより良くするための情報やサービスを提供することができます。例えば、混雑状況をリアルタイムで確認できるサービスや、顧客の興味に合わせた商品情報の提供などが考えられます。
また、デジタルツインはオンラインとオフラインの境界を曖昧にし、デジタル空間での情報提供やサービスが、リアル空間の滞在価値を高める重要な要素となります。オンライン上でのレビューや評価、顧客同士のコミュニケーションをリアル店舗の体験と結びつけることで、新しい形の顧客体験の提供が可能となるでしょう。
このように、商業施設のwebサイトは、顧客の期待に応え、新しい価値を提供するための重要なツールとしての役割を増しています。時代の変化と技術の進化を捉え、顧客との関係をより深化させるための取り組みが求められています。