パーソナライゼーションデータは何を選ぶべきか 事例から読み取るデータソース活用法
パーソナライズがビジネスの成功に欠かせない要素となる中、「何を基準にすればよいのか?」と悩む方も少なくありません。顧客の体験を向上させ、満足度やロイヤリティを高めるためには、的確なパーソナライズ基準の選定が重要です。本記事では、業界ごとに異なるパーソナライズの成功事例をもとに、効果的な基準を選ぶためのポイントをご紹介します。
- Date:
- Author:
- KOJI NAKAGAWA
- Category:
- Marketing

パーソナライズデータの選び方がビジネスに与える影響
ビジネスにおいてパーソナライズは、顧客一人ひとりの期待に応える手段として注目されています。顧客の行動や嗜好に応じたパーソナライズは、体験価値の向上、ロイヤリティの向上、そして売上の増加につながる重要な要素です。しかし、パーソナライズの効果を最大化するためには、適切なデータの選定が欠かせません。どのデータを収集し、どのように活用するかは、パーソナライズの効果を左右する重要なポイントです。
この記事が役立つ方へ
パーソナライズの基準を決める際に、「どのデータを基にすれば良いのか?」と悩む方も多いでしょう。この記事では、さまざまな業界の事例を通して、効果的なパーソナライズデータの選び方をわかりやすく紹介しています。業界ごとにどのようなデータが活用され、どのように顧客の満足度やエンゲージメント向上につながっているかを解説します。
パーソナライゼーションデータとは何か
パーソナライゼーションデータとは、顧客に最適化された体験を提供するために利用されるデータのことです。企業はこのデータを活用して、顧客の嗜好や行動に応じた商品やサービス、コンテンツの提供を行い、エンゲージメント向上や売上拡大を目指します。パーソナライゼーションデータには、さまざまな種類があり、それぞれが顧客理解を深め、より精度の高いパーソナライズを可能にします。
パーソナライズに使われる主なデータの種類と特徴
パーソナライゼーションを成功させるためには、顧客のニーズや興味に基づいた情報提供が欠かせません。そのためには、適切なデータの収集と活用が重要です。以下に、パーソナライズに活用される主なデータの種類とそれぞれの特徴、具体的な使用例について説明します。
顧客属性データ
顧客の年齢、性別、職業、所在地などの基本的な情報です。このデータにより、ターゲットの広い範囲での傾向を理解しやすく、顧客層に応じたパーソナライズが可能です。
- 例:年齢に応じた広告配信、特定の地域限定キャンペーンの提供
- 活用方法:オンライン小売では、地域ごとの季節や文化に合わせた商品を提案することができ、ターゲットに即した効果的なアプローチが可能です。
行動データ
ウェブサイトの閲覧履歴、クリック、購入履歴など、顧客がサービス上で行う行動に関するデータです。顧客がどの商品やコンテンツに興味を持っているかを直接示すため、より精度の高いレコメンドに利用できます。
- 例:閲覧した商品に基づく「関連商品」の提案、カート放棄者へのリターゲティング広告
- 活用方法:ECサイトでは、閲覧や購入頻度に応じて、おすすめの商品や割引情報を提供し、リピート率や購入意欲を高める施策に利用します。
嗜好データ
アンケートや診断テスト、レビューなど、顧客の好みや興味を示すデータです。嗜好データは、顧客の個別の好みに基づいてパーソナライズするための有用な情報となります。
- 例:ファッション診断に基づいたスタイリング提案、味の嗜好に応じた食品の提案
- 活用方法:ファッションレンタルや食品のサブスクリプションサービスで、顧客の好みを反映した商品やサービスのカスタマイズが可能です。
商品特性データ
商品自体の特徴を数値化したデータで、色、サイズ、素材、味覚などが含まれます。このデータにより、顧客が好む商品特性に基づいた提案が可能になります。
- 例:ワインの味わい特性に基づくレコメンド、商品素材や色に応じた関連商品の提案
- 活用方法:特定の商品の特徴量を数値化して、顧客の嗜好に合致する類似商品を提案することで、購入率の向上につなげます。
外部データ
ソーシャルメディアの情報、位置情報など外部から取得されるデータです。生活環境や社会的な傾向に基づいた提案が可能になり、顧客の関心やトレンドを捉えたパーソナライズに役立ちます。
- 例:位置情報を活用した近隣の店舗情報提供、SNSのトレンドに基づく商品レコメンド
- 活用方法:飲食店や観光業界などで、顧客のリアルタイムな位置情報を活用し、近隣のプロモーションや提案を行うことで、集客効果を高めます。
成功事例から見るデータ活用法
下記に上げた例で重要な点は、一つのデータのみで行っておらず、商品特性データと顧客属性データの組み合わせなどを活用しています。自社のゴールに合わせた設計が重要です。
アンケートベースのパーソナライズ
airCloset(エアクローゼット)
ファッションレンタルサービスのairClosetでは、顧客が無料診断を受けてスタイリングカルテを作成し、そのカルテに基づいてスタイリストが選んだ服が毎月届けられる仕組みです。会員数が100万人を超えるこのサービスは、顧客の好みに応じたパーソナライズの成功例として注目されています。
snaq.me
食品業界のsnaq.meでは、「りっすのおやつカウンター」という診断を通じて、顧客の好みや苦手な食材に応じたお菓子を提案しています。顧客の嗜好に合わせた商品提供により、個別化された体験を実現しています。
商品データに基づくパーソナライズ
ZOZOTOWN
ZOZOTOWNでは、商品情報の特徴量抽出し、顧客属性との親和性からパーソナライズしています。 商品の特徴量とは、色彩(メイン・サブカラー、カラーコード)、サイズ(着丈、肩幅、袖丈、サイズ展開、フィット感)、素材(主素材、素材比率、伸縮性、透け感)、スタイル(カテゴリー、デザイン、シルエット、シーズン適性)といった基本属性を収集・分析します。
エノテカ
ワイン専門のエノテカでは、ワインの味わいを数値化し、アルゴリズムを活用してパーソナライズされたワインレコメンドを提供しています。このアプローチにより、おすすめワインの購入数が前年と比べて約1.5倍に増加しました。
Spotify
音楽ストリーミングサービスのSpotifyは、ユーザーの聴取傾向を分析し、再生した楽曲やアーティストの頻度、再生時間をもとにパーソナライズされたプレイリストを提供しています。また、各楽曲のテンポやエネルギー、ダンス性といった特徴を数値化し、ユーザーの嗜好に合う楽曲をレコメンドすることが可能です。
商品写真による画像解析
Syte
画像認識AIのSyteは、FarfetchやMarks&Spencerなどで導入されており、顧客がアップロードした画像を解析して色、スタイル、素材などの情報を読み取ります。これにより、顧客が見た写真と似た商品を容易に検索できるため、購入体験が向上しています。
顧客属性を利用したパーソナライズ
日本航空
日本航空では、顧客のIPアドレスや閲覧履歴、年齢・性別などの属性データをもとにリコメンデーションシステムを導入しています。このシステムにより、顧客ごとに適した旅行プランや特集ページを表示し、クリック率が2~3倍に向上しました。これにより、顧客の関心に基づいた情報提供が可能となり、顧客満足度やエンゲージメントの向上に貢献しています。
株式会社フェリシモ
株式会社フェリシモでは、顧客の年齢、購入履歴、嗜好データなどの属性を基にしたパーソナライズを行っています。これにより、顧客に最適な商品提案やキャンペーンが提供され、キャンペーン利用率や有料会員の継続率が向上しました。フェリシモはこうした属性データを活用して顧客ごとに合わせた体験を提供することで、顧客のロイヤリティを高めています。
外部データを利用したパーソナライズ
Starbucks
Starbucksでは、位置情報や気象データを活用し、顧客に最適な商品提案を行っています。たとえば、暑い日には冷たいドリンク、寒い日には温かいドリンクをレコメンドし、位置情報に基づいて近隣店舗の特別キャンペーンを通知することで、来店を促進しています。これにより、顧客のリアルタイムな状況に応じたパーソナライズが実現されています。
Uber
Uberでは、位置情報や時刻、周辺の需要データを使ってパーソナライズしたプライシングや提案を行っています。顧客が特定のエリアにいる場合や繁忙時間帯などでは、その状況に応じた乗車料金や割引を提供することで、利用者の利便性とエンゲージメントを向上させています。
Expedia
Expediaでは、位置情報や季節、イベント情報などの外部データを活用し、旅行先のおすすめアクティビティや観光スポットをパーソナライズしています。たとえば、特定のシーズンに人気のある観光地や現地でのイベント情報をレコメンドし、利用者にとってタイムリーで興味のある内容を提供しています。これにより、旅行体験がさらに充実し、顧客のエンゲージメントを向上させています。
パーソナライゼーションの目標に合ったデータ選び
1. 目標に合うデータを選ぶ
まず、パーソナライズの目標を明確にします。たとえば、「購入頻度を増やす」が目標であれば、購入履歴や閲覧履歴が重要です。「新規顧客の獲得」が目標なら、地域や興味に基づくデータが役立ちます。目標に合うデータだけを選ぶことで、効果が出やすくなります。
2. 顧客体験を向上させるデータを選ぶ
顧客の満足度向上に役立つデータも活用しましょう。たとえば、ECサイトなら過去の閲覧データを活用した商品提案、旅行サイトなら季節や天候に合わせた提案が効果的です。これにより、顧客満足度が上がり、リピーターが増えます。
3. コストと精度のバランスを考える
データ収集にはコストがかかるため、必要なデータに絞るのがポイントです。たとえば、位置情報や天気データは外部から手軽に入手でき、内部で集めるより効率的です。また、完璧な精度でなくても十分な場合は、コストを抑えつつ収集します。
4. 定期的に見直す
データが実際に役立っているかを定期的に確認し、効果が薄いものは改善します。こうすることで、顧客のニーズに応じた最新の提案が可能となり、長期的に良い結果を得られます。
パーソナライゼーションデータの選定とビジネスへの可能性
パーソナライゼーションデータの効果的な選定は、顧客体験の向上とビジネス成果の向上に直結します。本記事では、データ選定の基本的な方法として、ビジネス目標に基づいたデータ選び、顧客体験を重視したデータの活用、収集コストと精度のバランスを取る方法、そして定期的な見直しの重要性について解説しました。
パーソナライゼーションがもたらすビジネスの可能性
適切なデータ選定によって、顧客一人ひとりに合わせた体験を提供できるようになり、満足度やロイヤリティの向上につながります。これにより、顧客の購買頻度が増加し、新規顧客の獲得やリピート利用の促進が期待できます。また、パーソナライゼーションが進化することで、より効率的かつ成果を上げるマーケティングが実現します。
今後のパーソナライゼーションの展望
今後、AI技術やリアルタイムデータの活用がさらに進み、顧客のリアルタイムなニーズに応じたパーソナライゼーションが可能になります。これにより、ビジネスは個々の顧客の状況に即した提案ができるようになり、より一層の顧客エンゲージメントの向上と収益拡大が期待されます。