行動経済学のプロスペクト理論を応用してwebサイトのコンテンツを構成する
私たちは本当に合理的な判断ができているのでしょうか?実は人間の判断や行動には、様々な心理的なバイアスが働いています。今回は、その人間らしい判断の特徴を説明する「プロスペクト理論」についてご紹介します
- Date:
- Author:
- KOJI NAKAGAWA
- Category:
- Marketing

プロスペクト理論の基本的な考え方
プロスペクト理論は、1970年代に行動経済学者のダニエル・カーネマンとアーモス・ツヴェルスキーによって提唱されました。それまでの経済学では、人間は常に合理的な判断をする存在として扱われてきました。しかし実際には、私たちの判断には様々な心理的な要因が影響しています。そこに目を向けた点で、この理論は画期的だったのです。
プロスペクト理論が明らかにした3つの特徴
1. 損失回避の心理
人は同じ金額でも、得をするよりも損をすることの方に強く反応します。例えば、1000円を拾って得をした時よりも、1000円を落として損をした時の方が、心理的なインパクトが大きいのです。
2. リスクへの態度の変化
人は状況によってリスクへの態度を変えます。有利な状況ではリスクを避けたがる一方で、不利な状況ではリスクを取りやすくなります。例えば、投資で利益が出ている時は慎重になりますが、損失を抱えると「取り返そう」として冒険的な投資をしがちです。
3. フレーミング効果
同じ内容でも、情報の提示方法によって受け取り方が大きく変わります。例えば、「手術の成功率が90%」と「手術の失敗率が10%」は同じ内容ですが、前者の方が安心感を与えます。
Webサイトでの活用方法
ユーザー心理に基づいたコンテンツ設計
Webサイトのコンテンツは、ユーザーの行動を左右する重要な要素です。プロスペクト理論の知見を活かすことで、より効果的なコンテンツ設計が可能になります。
- 「残りわずか!」といった在庫情報の表示
- 期間限定セールによる損失回避心理の活用
- レビューや実績による信頼性の確保
セールスポイントと安心材料のバランス
商品の魅力を伝えることは重要ですが、それ以上に重要なのが安心できる情報の提供です:
- アレルギー表示や賞味期限などの安全情報
- 製品の素材や使用方法の詳細な説明
- 返品・交換ポリシーの明確な提示
BtoBビジネスでの活用
法人向けビジネスでは、10件以上の導入事例を提示することでコンバージョン率が改善するというデータもあります。実績を具体的に示すことで、取引先の信頼を得やすくなります。
注意すべきポイント
プロスペクト理論の知見は強力ですが、その使い方には注意が必要です:
- 「閉店セール」を長期間続けるなど、過度な演出は逆効果
- 借金や病気の悩みを抱える人は、リスクを取りやすい傾向がある
- 短期的な売上よりも、長期的な信頼関係を重視する
プロスペクト理論を活かしたWebマーケティング
プロスペクト理論は、人間の判断や行動の特徴を理解する上で非常に有用な考え方です。特にeコマースやWebサービスの提供者は、この理論をもとにサイトのUXやコンテンツ戦略を最適化することで、より効果的なマーケティングが可能になります。
ただし、この理論の活用には倫理的な配慮も必要です。短期的な利益だけでなく、顧客との長期的な信頼関係を築くことを意識しながら、適切に活用していくことが重要でしょう。
今後も顧客中心の視点を持ち続け、プロスペクト理論の知見を活かしながら、より良いWebサイト作りを目指していきたいものです。