BtoBtoC Marketing Complete Guide

代理店開拓からエンドユーザー戦略まで
BtoBtoCマーケティング完全ガイド

「二重の顧客」を同時に攻略する、三方良しのマーケティング戦略をビジュアルで理解する

BtoBtoCは、自社→パートナー企業→エンドユーザーという三者構造のビジネスモデル。BtoBやBtoCとは異なる独自の難しさがあります。本インフォグラフィックでは、この複雑な構造を視覚的にわかりやすく整理し、実践で使える戦略のポイントを解説します。

Section 01

BtoBtoCとは?

企業(B1)が、別の企業(B2)を通じて、最終消費者(C)に商品やサービスを届けるビジネスモデルです。

B1

自社(メーカー等)

B2

パートナー・代理店

C

エンドユーザー

身近な例

素材メーカー → アパレル → 消費者

食品メーカー → 小売店 → 消費者

ECプラットフォーム → 出店企業 → 消費者

SaaS企業 → 導入パートナー → エンドユーザー

BtoBtoCの最大の特徴

「二重の顧客構造」= B2とCに異なる価値を同時に提供する必要がある

B2(パートナー)が求める価値

  • 仕入れコストの安さ
  • 安定供給・業務効率化
  • 十分な利益率(マージン)

C(エンドユーザー)が求める価値

  • おいしさ・品質の高さ
  • 健康・安心感
  • 体験価値・ブランドストーリー

Section 02

BtoBtoCが難しい3つの理由

1

価値のギャップ

B2向けの営業トーク(コスト削減)とC向けのメッセージ(体験価値)が分断し、ブランドの一貫性が崩壊するリスク。

2

データの断絶

エンドユーザーの購買履歴やフィードバックがパートナー企業の中に留まり、自社で活用できない。

3

体験の不一致

代理店ごとに説明が異なる、販促資料が古い、商品知識が不十分——情報の断絶がブランド価値を毀損。

Section 03

代理店・パートナー開拓の戦略

代理店選定の3つの基準

数を増やすのではなく「自社の価値を正しく届けてくれるパートナー」を選ぶ

シナジー

代理店の既存ビジネスにもプラスになる相乗効果があるか?

収益性

十分なマージンと継続的な収益構造を提示できるか?

チャネル非競合

自社の直販チャネルとバッティング(共食い)しないか?

代理店開拓の4つのアプローチ

展示会・業界イベント

ターゲット業界と直接接点を持つ

ターゲットリスト+営業

メリットを明確にした提案書でアプローチ

オウンドメディア・セミナー

ウェビナー等から代理店候補を発掘

パートナープログラム設計

マージン・研修・認定制度を体系化

Most Common Problem

「契約したが売ってくれない」問題への処方箋

根本原因は代理店の努力不足ではなく、「売れる仕組み」が構造的に設計されていないこと。

Step 1

提案のきっかけを与える

自社主導でキャンペーンを実施し「今なら提案しやすい」タイミングを意図的に作る。

Step 2

提案意欲を向上させる

成功事例の共有が鍵。「あの代理店がこれだけ売れた」という実績が強い動機付けに。

Step 3

自社商材で選択肢を埋める

提案書テンプレート・比較表・デモ動画などを充実させ提案のハードルを下げる。

Key Structure

プル効果が生む好循環

エンドユーザーからの「指名」が、代理店の開拓・活性化の最大のドライバー。

B1(自社) ブランド認知施策 B2(代理店) 積極的に提案 C(消費者) 指名・問い合わせ 教育・支援 認知獲得 プル効果 消費者の指名 → 代理店が自発的に動く → 売上拡大

消費者が「あのブランドが欲しい」と感じれば、代理店は「扱わなければ機会損失」と判断し、自ら手を挙げてくれます。

Section 04

効果的な6つのマーケティング手法

toC

オウンドメディア

有益な情報発信でブランド好感度を高め、間接的に小売店での販売増につなげる。

例: ライオン「Lidea」

toC + toB

SNSマーケティング

口コミで購買意欲を高め、「話題だから扱おう」と代理店の活性化にもつながる。

toB

パートナーマーケティング

勉強会・成功事例共有・販促資料提供で代理店の提案力と販売意欲を底上げ。

toC + toB

共同マーケティング

パートナー企業と連携し、双方のブランド力で消費者に訴求。

例: GORE-TEX × アパレル

toB + toC

SEO

toB向け(「○○ 仕入れ」)とtoC向け(「○○ レシピ」)でキーワードを使い分ける。

toB + toC

MAツール・データ連携

代理店・エンドユーザー双方のコミュニケーションを自動化し効率化。

Section 05

成功事例に学ぶ4つの型

01

Intel Inside

上流B

消費者に直接「Intel Inside=高性能で安心」という認知を刷り込み、PCメーカーにとって「搭載しないと売れない」存在に。

核心:エンドユーザーの「指名」が中間パートナーを巻き込む最強の武器

02

キシリトール

上流B

歯科医という「専門家チャネル」にエビデンスを提供し、「歯医者さんが勧める=信頼」という認知を獲得。巨額の広告費なしに市場を創出。

核心:中間パートナーへの「教育支援」が信頼獲得と市場創造の両方を実現

03

ZOZOTOWN × WEAR

中間B

コーディネートアプリ「WEAR」で消費者の購買意欲を高めつつ、アパレルブランドの商品を自然にPR。

核心:独自コンテンツでtoB・toC双方に価値提供するプラットフォーム戦略

04

メトロ

中間B

飲食店に食品を卸すだけでなく、経営サポートやメニュー提案まで実施。飲食店の売上が伸びれば仕入れも増える好循環。

核心:「代理店に売らせる」ではなく「代理店を成功させる」マインドセット

Section 06

戦略設計の7ステップ

1

エンドユーザーの特定

最終的に届く消費者は誰か?ペルソナを具体化する。

2

バリュープロポジションの定義

toB向けとtoC向けの価値をそれぞれ言語化。三方良しの構造を設計。

3

最適なパートナー像の設計と開拓

シナジー・収益性・チャネル非競合の3基準で選定。複数手法でリーチ。

4

パートナーへの教育支援

研修・成功事例共有・販促ツール提供で提案力と販売意欲を継続的に向上。

5

toB / toC 別のKPI設計

toB: アクティブ代理店数・売上高 / toC: 認知度・指名率・最終販売数

6

施策実行と効果測定

toB・toC施策を並行実行し、相乗効果を測定する。

7

代理店との関係性の継続的な改善

定期ヒアリング・満足度調査・インセンティブ見直しで長期的に強化。

Section 07

BtoBtoC × D2C ハイブリッド戦略

BtoBtoCとD2Cは「どちらか」ではなく併用して最適な顧客体験を設計するのが現実的なアプローチ。

BtoBtoC(代理店チャネル)

  • 既存ネットワーク活用で市場拡大が速い
  • 初期投資が低い
  • 顧客データの取得がパートナーに依存

D2C(直販チャネル)

  • 顧客データを直接取得・蓄積可能
  • ブランド体験を完全にコントロール
  • 集客コストが高く販路構築に時間

ハイブリッド戦略の例

D2C(自社EC)で新商品をテスト販売 → 反応の良い商品を代理店チャネルで全国展開

Summary

「三方良し」の3つの原則

BtoBtoCマーケティングの本質は、自社・パートナー・エンドユーザーの三者全てに価値を生む仕組みの設計。

原則 1

エンドユーザー起点

消費者が求める価値を理解し、すべての戦略の起点にすること。プル効果が好循環を生む。

原則 2

パートナーを成功させる

「売らせる」のではなく「成功させる」。教育支援とツール提供が代理店を動かす。

原則 3

一気通貫の戦略設計

代理店開拓から活性化、エンドユーザーへのアプローチまで一貫した戦略を描く。

「BtoBtoCのマーケティングって、結局BtoBとBtoCのどちらに寄せればいいの?」「代理店を増やしたいけど、契約しても売ってくれない…」

BtoBtoCビジネスに携わるマーケティング担当者なら、一度はこうした壁にぶつかったことがあるのではないでしょうか。

BtoBtoCは、自社(B1)→パートナー企業・代理店(B2)→エンドユーザー(C)という三者構造のビジネスモデルです。BtoBやBtoCとは異なる「二重の顧客」を同時に攻略しなければならず、マーケティングの難易度は格段に上がります。

さらに厄介なのが、BtoBtoCに特化したマーケティング情報が世の中に極めて少ないことです。BtoBやBtoCのノウハウは豊富にあっても、「中間のパートナー企業をどう巻き込み、その先のエンドユーザーにどう届けるか」を一貫して語る情報はほとんどありません。

本記事では、BtoBtoCマーケティングの基本構造から、代理店・パートナーの開拓と活性化、エンドユーザーへの価値提供までを一気通貫で解説します。自社のビジネスに当てはめながら読み進めてみてください。

BtoBtoCマーケティングとは?基本構造を整理する

BtoBtoCの定義と3者の関係

BtoBtoCは「Business to Business to Consumer」の略称です。企業(B1)が、別の企業(B2)を介して、最終消費者(C)に商品やサービスを届けるビジネスモデルを指します。

身近な例を挙げると、以下のような構造です。

  • 素材メーカー → アパレルブランド → 消費者(ゴアテックスなど)
  • 食品メーカー → スーパー・小売店 → 消費者(ライオンなど)
  • ECプラットフォーム → 出店企業 → 消費者(Amazon、楽天、ZOZOTOWNなど)
  • SaaS企業 → 導入パートナー → エンドユーザー企業

実は、世の中の多くのビジネスはBtoBtoCの構造を持っています。メーカーが商品を生産し、小売店が仕入れて消費者に販売する——この流れ自体がBtoBtoCだからです。

B1 自社(メーカー等) 供給 B2 パートナー・代理店 販売 C エンドユーザー
BtoBtoCの三者構造:B1(自社)→ B2(パートナー)→ C(エンドユーザー)

BtoBやBtoCとの本質的な違い

BtoBtoCマーケティングの最大の特徴は、「二重の顧客構造」を持つ点にあります。

BtoBであれば、ターゲットは企業の意思決定者です。BtoCであれば、一般消費者を直接攻略します。しかしBtoBtoCでは、パートナー企業(B2)とエンドユーザー(C)の両方を同時に満足させなければなりません。

ここで重要なのが、B2に求められる価値とCに求められる価値は同一ではないという事実です。

たとえば、ある食品素材メーカーの場合を考えてみましょう。飲食店(B2)が求めるのは「仕入れコストの安さ」「安定供給」「調理のしやすさ」です。一方、その飲食店に来る消費者(C)が求めるのは「おいしさ」「健康への安心感」「SNS映え」かもしれません。

BtoB・BtoC・BtoBtoCの比較
項目 BtoB BtoC BtoBtoC
顧客構造 企業 → 企業 企業 → 消費者 企業 → 企業 → 消費者
主なターゲット 意思決定者・担当者 一般消費者 パートナー企業+エンドユーザー
意思決定プロセス 組織的・合理的 個人的・感情的 二段階(B2の採用+Cの購買)
ブランド管理 自社でコントロール 自社でコントロール パートナー企業に依存する部分あり
データ取得 直接取得可能 直接取得可能 エンドユーザーのデータ取得が困難

この二つの異なるニーズを理解し、両者にとって価値のある提案をすることが、BtoBtoCマーケティングの出発点です。

BtoBtoCマーケティングが難しい3つの理由

BtoBtoCのマーケティングがうまくいかない企業の多くは、以下の3つの構造的な課題に直面しています。

1. toB向けの価値とtoC向けの価値のギャップ

先述の通り、パートナー企業とエンドユーザーでは、商品やサービスに対して感じる価値が異なります。B2への営業トーク(コスト削減、業務効率化)と、Cへのマーケティングメッセージ(体験価値、ブランドストーリー)を、整合性を保ちながら設計する必要があります。

ここを「営業部はB2向け、マーケ部はC向け」と分断してしまうと、メッセージに一貫性がなくなり、ブランド価値が毀損される原因になります。

2. エンドユーザーのデータが手元に届かない

BtoBtoCの構造上、エンドユーザーとの接点はパートナー企業が持っています。消費者の属性情報、購買履歴、フィードバックといったデータは、パートナー企業のシステム内に留まっていることがほとんどです。

自社のCRMやMAツールにエンドユーザーのデータを統合できなければ、データに基づいたマーケティング改善は困難です。パートナー企業とのデータ連携の仕組みづくりが不可欠になります。

3. ブランド体験の一貫性を保ちにくい

メーカーがどれだけ優れた商品を作っても、パートナー企業がエンドユーザーに伝える段階で、商品の魅力が正しく伝わらないケースは珍しくありません。

代理店ごとに説明の仕方が違う、販促資料が古いまま使われている、商品知識が不十分——こうした「情報の断絶」は、BtoBtoCビジネスに共通する構造的な問題です。

BtoBtoCマーケティングの3つの構造的課題 課題1 価値のギャップ B2向け:コスト削減 業務効率化 C向け:体験価値 ブランドストーリー → メッセージの分断 課題2 データの断絶 エンドユーザーとの 接点はB2が保有 購買履歴・属性情報が B1に届かない → データ連携が不可欠 課題3 体験の不一致 代理店ごとに 説明が異なる 販促資料の陳腐化 商品知識の不足 → ブランド価値の毀損
BtoBtoCマーケティングにおける3つの構造的課題

代理店・パートナー開拓の戦略と実践

BtoBtoCマーケティングにおいて、中間に位置する代理店・パートナー企業は、エンドユーザーへの橋渡し役です。このセクションでは、代理店の「開拓」と「開拓後の活性化」の両方を解説します。

なぜ代理店開拓がBtoBtoCの成否を分けるのか

BtoBtoCにおいて、自社だけでエンドユーザーすべてにリーチすることは現実的ではありません。代理店やパートナー企業が持つ既存の顧客基盤、地域ネットワーク、業界内での信頼関係を活用することで、はじめて市場をスケールさせることが可能になります。

代理店開拓の本質は「販路の数を増やすこと」ではなく、「自社の価値を正しくエンドユーザーに届けてくれるパートナーを見つけること」です。数だけ増やしても、動かない代理店ばかりでは意味がありません。

代理店選定の3つの基準

質の高いパートナーを見極めるために、以下の3つの基準で選定しましょう。

①自社商材と既存事業にシナジーがあるか

代理店が自社商材を売ることで、代理店自身の既存ビジネスにもプラスになる関係が理想です。たとえば、美容メーカーが美容室に商品を卸す場合、美容室は来店客に追加の価値を提供でき、客単価アップや顧客満足度向上につながります。このような相乗効果があれば、代理店は自発的に提案してくれるようになります。

②代理店にとって十分な収益が見込めるか

マージン設計は代理店のモチベーションを左右する最重要要素の一つです。短期的な手数料だけでなく、継続的に販売することで積み上がる収益構造を提示できるかがポイントになります。

③自社の販売チャネルとバッティングしないか

自社の直販チャネルと代理店の販売エリア・顧客層が完全に重複していると、カニバリゼーション(共食い)が起き、関係が悪化する原因になります。チャネルの棲み分けを事前に設計しておきましょう。

代理店開拓の具体的アプローチ

代理店候補を見つけ、パートナーシップを構築するまでの主な手法は以下の通りです。

展示会・業界イベントは、ターゲット業界の代理店候補と直接接点を持てる有効な場です。単なる名刺交換で終わらせず、自社の「パートナープログラム」の魅力をその場で伝えられるよう準備しておきましょう。

ターゲット代理店リストの作成とアウトバウンド営業も基本的な手法です。業界ディレクトリや既存の取引ネットワークから候補をリストアップし、代理店にとってのメリットを明確にした提案書でアプローチします。

オウンドメディアやセミナーを通じた代理店リード獲得は、中長期的に効果を発揮します。「代理店募集」ページを自社サイトに設けるだけでなく、業界課題に関するウェビナーを開催し、そこに集まった企業の中から代理店候補を発掘するアプローチも有効です。

パートナープログラムの設計は、代理店開拓を仕組み化するための土台です。マージン体系、販促支援の内容、教育研修、認定制度などを体系化し、「このメーカーとパートナーを組むと、こんな支援が受けられる」と一目で伝わるプログラムを用意しましょう。

「契約したが売ってくれない」問題への処方箋

BtoBtoCの代理店ビジネスで最も多い課題が、「代理店契約を締結したものの、実際にはほとんど売ってくれない」という問題です。

この問題の根本原因は、代理店の努力不足ではなく、「売れる仕組み」が構造的に設計されていないことにあります。以下の3ステップで解決を図りましょう。

ステップ1:提案のきっかけを与える

代理店は複数の商材を扱っていることが多く、自社商材の優先順位が低くなりがちです。エンドユーザー向けのキャンペーンやプロモーションを自社主導で実施し、「今なら提案しやすい」というタイミングを意図的に作りましょう。消費者からの問い合わせや指名が増えれば、代理店は自然と動き出します。

ステップ2:提案意欲を向上させる

商品知識の研修会、他の代理店の成功事例共有、合同の販促キャンペーンなどを通じて、「この商材は売れる」という確信を代理店に持ってもらうことが大切です。特に成功事例の共有は効果が大きく、「あの代理店がこれだけ売れた」という実績は強い動機付けになります。

ステップ3:提案選択肢を自社商材で埋める

代理店が顧客に提案する際にすぐ使えるセールスツール(提案書テンプレート、比較表、事例集、デモ動画など)を充実させましょう。提案のハードルを下げることで、競合商材ではなく自社商材が選ばれる確率を高めます。

エンドユーザーへの認知獲得が代理店開拓に好循環を生む

ここでBtoBtoCマーケティングの最も重要な構造を押さえておきましょう。それは、エンドユーザーからの「プル効果」が、代理店開拓・活性化の最大のドライバーになるという点です。

消費者が「あのブランドの商品が欲しい」と感じてくれれば、代理店は「扱わなければ機会損失になる」と判断し、自ら手を挙げてくれます。既存の代理店も、消費者からの指名が入れば積極的に提案するようになります。

エンドユーザーの「プル効果」が生む好循環 B1(自社) ブランド認知施策 B2(代理店) 積極的に提案・販売 C(消費者) 指名・問い合わせ 教育・支援 認知獲得 プル効果 消費者の指名 → 代理店が自発的に動く → 売上拡大
エンドユーザーの「プル効果」がBtoBtoCの好循環を生み出す構造

この好循環を意図的に作り出した代表例が、後述するIntel InsideやキシリトールのBtoBtoCマーケティング戦略です。

自社ポジション別のマーケティング戦略

BtoBtoCのバリューチェーン上で自社がどの位置にいるかによって、とるべきマーケティング戦略は異なります。

上流B(素材メーカー・部品メーカー等)の戦略

上流に位置する企業は、自社の素材や部品がエンドユーザーの目に触れにくいという課題を抱えています。だからこそ有効なのが「成分ブランディング(Ingredient Branding)」です。

成分ブランディングとは、最終製品の中に含まれる素材や部品そのものにブランド価値を持たせ、消費者に認知してもらう戦略です。「Intel Inside」「GORE-TEX」「キシリトール」がその代表例です。

上流B企業がとるべきアクションは次の通りです。

  • エンドユーザー向けの認知獲得施策(広告、PR、オウンドメディア)で消費者にブランドを刷り込む
  • パートナー企業への教育支援を通じて、自社素材・部品の価値を正しく伝えてもらう仕組みを作る
  • 代理店向けの技術研修・商品トレーニングを定期的に実施し、提案力を底上げする
  • 共同マーケティングとしてパートナー企業との共同キャンペーンやイベントを展開する

中間B(プラットフォーム・代理店・卸売等)の戦略

中間に位置する企業は、上流の企業(メーカー等)とエンドユーザーの両方を顧客として抱える独特なポジションにいます。

中間B企業がとるべきアクションは次の通りです。

  • 出店者・加盟店の開拓を「パートナープログラム」として仕組み化し、魅力的な条件で良質な出店者を集める
  • パートナー企業の成功支援を軸にしたマーケティング(経営サポート、販促素材提供、データ分析支援)
  • エンドユーザーのデータ活用を強化し、CRMやMAツールと連携して顧客体験を最適化する
  • プラットフォームとしてのブランド力を高め、消費者が「ここで買いたい」と感じる理由を作る
自社ポジション別:BtoBtoCマーケティング戦略の比較
項目 上流B(素材・部品メーカー) 中間B(プラットフォーム・卸売)
主な課題 エンドユーザーから見えにくい 両面の顧客を同時に満足させる必要がある
有効な戦略 成分ブランディング(Ingredient Branding) 両面マーケットの価値最大化
toC施策の重点 ブランド認知・プル効果の創出 プラットフォーム体験の向上
toB施策の重点 教育支援・共同マーケティング 成功支援・データ分析提供
代表例 Intel、GORE-TEX、キシリトール ZOZOTOWN、楽天、メトロ

BtoBtoCで効果的な6つのマーケティング手法

ここからは、BtoBtoCビジネスで特に効果を発揮するマーケティング手法を6つ紹介します。

1. オウンドメディア(コンテンツマーケティング)

自社メディアを通じて、エンドユーザーに有益な情報を発信する手法です。日用品メーカーのライオンが運営する「Lidea」は、掃除や健康に関する生活情報を発信し、消費者からの信頼を獲得した好例です。直接的に商品を売り込まず、ブランドへの好感度を高めることで、結果的に小売店での販売増につなげています。

2. SNSマーケティング

特にtoC向けのアプローチとして、SNSは大きな効果を発揮します。エンドユーザーの「口コミ」が広がることで、消費者の購買意欲が高まるだけでなく、「あの商品はSNSで話題だから扱おう」と代理店の開拓・活性化にもつながります。

3. 代理店向けパートナーマーケティング

代理店の提案力と販売意欲を高めるための施策です。具体的には、定期的な勉強会・研修の開催、成功事例の共有、共同キャンペーンの企画、すぐに使える販促資料やセールスツールの提供などが含まれます。エンドユーザー向けのマーケティングとセットで実施することで効果が最大化します。

4. 共同マーケティング(コ・ブランディング)

パートナー企業と連携して、双方のブランド力を活かしたマーケティングを行う手法です。ゴアテックスがアパレルブランドと共同で定期的に製品発表会を行っているのが好例です。上流メーカーとパートナー企業の両方の強みを消費者に訴求できます。

5. SEO(検索エンジン最適化)

BtoBtoC企業にとってのSEOは、toB向けとtoC向けで狙うキーワードを使い分ける視点が重要です。たとえば「イノシシ肉 仕入れ」はtoB向け、「イノシシ肉 レシピ」はtoC向けのキーワードです。それぞれのキーワードに合ったコンテンツを用意し、ターゲットごとの流入を設計しましょう。

BtoBtoC企業のSEOキーワード設計例
ターゲット キーワード例 コンテンツの方向性
toB(代理店・パートナー) 「○○ 仕入れ」「○○ 代理店募集」「○○ OEM」 ビジネスメリット、パートナープログラム紹介
toC(エンドユーザー) 「○○ レシピ」「○○ 使い方」「○○ おすすめ」 生活情報、ハウツー、レビュー・比較

6. MAツール活用とデータ連携

マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用することで、代理店向けとエンドユーザー向けのコミュニケーションを効率化できます。代理店経由で得たエンドユーザーの情報をCRMと連携させ、購買履歴に基づいたフォローアップを自動化することが理想です。

成功事例に学ぶBtoBtoCマーケティングの型

ここでは、BtoBtoCマーケティングの成功事例を構造的に分析し、自社に応用できるポイントを抽出します。

事例1:Intel Inside——消費者のプル効果でPCメーカーを巻き込む

半導体メーカーのインテルは、PCメーカーに部品を供給する典型的な上流B企業です。1990年代、自社チップの認知度が低く、PCメーカー側に価格交渉力を握られていたインテルは、大胆にも最終消費者に直接語りかける「Intel Inside」キャンペーンを展開しました。

PCメーカーの広告費の一部をインテルが負担し、広告の最後に「Intel Inside」のロゴを入れる共同マーケティングプログラムを構築。消費者の間に「インテル入ってる=高性能で安心」という認知が広まると、PCメーカー側も「インテルを搭載していること」を売りにするようになりました。

この事例の核心は、上流メーカーがエンドユーザーの指名を獲得することで、中間のパートナー企業(PCメーカー)にとって「扱わざるを得ない存在」になったという構造にある。

事例2:キシリトール——「代理店」としての歯科医を教育して市場を創造

キシリトールガムの成功は、BtoBtoCマーケティングの教科書的な事例です。当時ほぼ無名だったキシリトールを日本市場に広めるため、素材メーカーはまず歯科医という「専門家チャネル」にアプローチしました。

歯科医に対してキシリトールの虫歯予防効果に関するエビデンスを提供し、予防型の歯科医院にキシリトールガムを置いてもらうことで、消費者に「歯医者さんが勧める=信頼できる」という認知を獲得。結果として、巨額の広告費をかけずに大きな市場を創出しました。

この事例のポイントは、中間パートナー(歯科医)への「教育支援」が、エンドユーザーの信頼獲得と市場創造の両方を実現した点にある。代理店に知識を提供し、代理店自身の専門性で消費者に語ってもらう——これは多くのBtoBtoC企業に応用可能なアプローチである。

事例3:ZOZOTOWN × WEAR——プラットフォーム型BtoBtoCの両面戦略

ZOZOTOWNは、アパレルブランド(B2)と消費者(C)をつなぐプラットフォーム型のBtoBtoC企業です。ファッションコーディネートアプリ「WEAR」を通じて消費者の購買意欲を高め、ZOZOTOWN上の商品購入へと誘導する仕組みを構築しました。

消費者にとっては「コーディネートの参考になる」、アパレルブランドにとっては「自社商品が自然にPRされる」という双方向のメリットを生み出しています。

この事例は、プラットフォーム企業が独自のコンテンツ(WEAR)を作ることで、toBとtoCの両方に価値を提供した好例である。

事例4:メトロ——飲食店の経営をサポートして自社売上を伸ばす

会員制食品卸売店のメトロは、単に食品を卸すだけでなく、飲食店の経営サポートやメニュー提案まで行っています。飲食店(B2)の売上が伸びれば、メトロへの仕入れ量も自然と増える——この好循環を仕組み化した事例です。

代理店の成功が自社の成功に直結するBtoBtoCの本質を体現しており、「代理店に売らせる」のではなく「代理店を成功させる」というマインドセットの重要性を示している。

BtoBtoCマーケティング成功事例の比較
事例 自社ポジション 核心となる戦略 成功のメカニズム
Intel Inside 上流B(半導体メーカー) 消費者への直接ブランディング プル効果でPCメーカーを巻き込む
キシリトール 上流B(素材メーカー) 専門家チャネルへの教育支援 歯科医の推奨で消費者の信頼獲得
ZOZOTOWN × WEAR 中間B(プラットフォーム) 独自コンテンツによる両面価値 toB・toC双方にメリットを提供
メトロ 中間B(卸売) 代理店の経営サポート 代理店の成功=自社の成長

BtoBtoCマーケティングの戦略設計7ステップ

最後に、BtoBtoCマーケティングの戦略を実際に設計する際の手順を7ステップで整理します。

BtoBtoCマーケティング 戦略設計7ステップ Step 1 エンドユーザーの特定 Step 2 バリュープロポジションの定義(toB / toC) Step 3 最適なパートナー像の設計と開拓 Step 4 パートナーへの教育支援・セールスイネーブルメント Step 5 toB / toC 別のKPI設計 Step 6 施策実行と効果測定 Step 7 代理店との関係性の継続的な改善 ※ステップ4〜7はPDCAサイクルとして継続的に実行
BtoBtoCマーケティング戦略を設計する7つのステップ

ステップ1:エンドユーザーの特定

まず、自社の商品・サービスが最終的に届く消費者は誰かを明確にします。パートナー企業の顧客属性を調査し、ペルソナを具体化しましょう。

ステップ2:バリュープロポジションの定義

エンドユーザーにとっての価値と、パートナー企業にとっての価値をそれぞれ言語化します。この二つの価値に一貫性があること(=三方良しの構造)が理想です。

ステップ3:最適なパートナー像の設計と開拓

先述の3つの選定基準(シナジー・収益性・チャネル非競合)に基づき、ターゲットとなるパートナー像を定義します。その上で展示会、アウトバウンド営業、オウンドメディアなど複数の手法でパートナー候補にリーチします。

ステップ4:パートナーへの教育支援・セールスイネーブルメント

契約後に「放置」しないことが最重要です。研修、成功事例共有、販促ツール提供を通じて、パートナーの提案力と販売意欲を継続的に高めましょう。

ステップ5:toB/toC別のKPI設計

toB/toC別のKPI設計例
対象 KPI例
toB(代理店向け) アクティブ代理店数、代理店あたりの売上高、提案件数
toC(エンドユーザー向け) ブランド認知度、エンドユーザーからの指名率、最終販売数

ステップ6:施策実行と効果測定

toB向けマーケティング(パートナーマーケティング)とtoC向けマーケティング(ブランド認知施策)を並行して実行し、両者の相乗効果を測定します。

ステップ7:代理店との関係性の継続的な改善

定期的なヒアリング、パートナー満足度の調査、成果に応じたインセンティブの見直しを行い、パートナーとの関係を長期的に強化していきます。

BtoBtoCとD2C——代理店チャネルと直販の使い分け

近年、D2C(Direct to Consumer)モデルが注目を集め、中間の代理店を介さずにエンドユーザーへ直接販売する企業が増えています。

しかし、BtoBtoCとD2Cは「どちらかを選ぶ」ものではなく、併用して最適な顧客体験を設計するのが現実的なアプローチです。

D2Cのメリットは、エンドユーザーとの直接的な関係構築とデータ取得にあります。一方で、全国規模の販路構築や、既存市場への素早い浸透にはパートナーチャネルが不可欠です。

たとえば、自社ECサイト(D2C)で新商品をテスト販売し、反応の良い商品を代理店チャネルで全国展開する——このようなハイブリッド戦略を検討する余地は十分にあります。

BtoBtoCチャネルとD2Cチャネルの比較
項目 BtoBtoC(代理店チャネル) D2C(直販チャネル)
市場拡大スピード 既存ネットワーク活用で速い 自社で構築するため時間がかかる
顧客データの取得 パートナー企業に依存 直接取得・蓄積が可能
ブランド体験の管理 パートナー企業の品質に左右される 自社で完全にコントロール可能
コスト構造 マージン負担があるが初期投資は低い マージン不要だが集客コストが高い
最適な活用場面 全国展開、既存市場への浸透 新商品テスト、ファン育成、データ取得

まとめ:「三方良し」の仕組みをマーケティングで設計する

BtoBtoCマーケティングの本質は、自社・パートナー企業・エンドユーザーの三者すべてに価値を生む「三方良し」の仕組みを設計することにあります。

そのためには、エンドユーザーへの価値提供を起点に考えることが重要です。エンドユーザーが求める価値を理解し、それをパートナー企業と共有し、パートナー企業の成功を支援する。パートナー企業が成功すれば、自社のビジネスも成長する。この好循環こそが、BtoBtoCマーケティングの目指すべき姿です。

代理店の開拓から活性化、エンドユーザーへのアプローチまで、一気通貫の戦略を描き、実行していきましょう。

最終更新日:2026-02-10
編集者:

中川 晃次

再生ファンド傘下の複数企業にて、マーケティングディレクターとして事業再生を牽引。戦略立案から実行まで一貫して手がけ、ECサイトにおいては売上前年比150%成長を5年連続で達成した実績を持つ。現在はマーケティングSaaS「tovira」の開発に加え、BtoB領域のマーケティングコンサルティングを通じて、企業の持続的な成長を支援している。