BtoBマーケティング必読

DMU理解とダークファネル時代の
コンテンツ戦略

複雑化するBtoB購買プロセスを理解し、見えない検討段階から顧客に選ばれる企業になるための実践ガイド

BtoB購買では、複数の人が異なる役割で意思決定に関与します。そして今、顧客は問い合わせ前に60%以上の検討を完了しています。この「見えない検討プロセス」に対応するには、DMU(意思決定単位)の各メンバーに適切な情報を届けることが不可欠です。

参考文献

本記事は以下の研究・調査をもとに構成されています

購買行動研究

The New B2B Buying Journey

著者: Gartner Research

論文を読む

購買意思決定研究

B2B Buyer Insights & Research

著者: Forrester Research

論文を読む

これらの研究により、BtoB購買者の約70%が営業担当者に接触する前に意思決定を済ませていることが明らかになっています。

DMU(意思決定単位)とは?

BtoBの購買では、複数の人がそれぞれ異なる役割で意思決定に関与します。
これがDMU(Decision Making Unit:意思決定単位)です。

すべてのメンバーが納得しなければ、購買は成立しません

現場担当者

「使いやすさ」重視

IT部門

「セキュリティ」重視

経営層

「ROI」重視

DMUの6つの役割

それぞれ異なる関心事と判断基準を持っています

イニシエーター

課題を最初に認識

業務の中で課題を感じ、「これ必要じゃない?」と最初に提起する人。現場担当者が多い。

関心事

  • 課題の解決
  • 業務効率の改善

インフルエンサー

専門知識で影響

技術的な見識で意思決定に大きな影響を与える。IT部門や技術エキスパートが該当。

関心事

  • 技術的実現可能性
  • セキュリティ

デシジョンメーカー

最終決定権

最終的なYes/Noを決める権限者。部長、役員、経営者など。予算承認権を持つ。

関心事

  • 投資対効果(ROI)
  • 戦略との整合性

バイヤー

購買手続き担当

実際の契約・発注手続きを担当。購買部、調達部が該当。価格交渉や条件調整を行う。

関心事

  • 価格の妥当性
  • 契約条件

ユーザー

実際に使う人

日常的に製品を使用する人。満足度が次回購買に直結する重要な存在。

関心事

  • 使いやすさ
  • 実務での実用性

ゲートキーパー

情報管理者

情報の流れをコントロールする。秘書、受付、システム部の窓口など。通す/止めるを判断。

関心事

  • ルール適合性
  • リスク回避

ダークファネルとは?

企業側から見えない顧客の検討プロセスのこと

従来:見える検討プロセス

1
サイト訪問
2
資料ダウンロード
3
セミナー参加
4
問い合わせ

現在:見えない検討プロセス

Google検索で情報収集
口コミサイトでレビュー確認
SNSで評判チェック
YouTube動画で学習
問い合わせ(検討60%完了後)

70%

営業接触前に意思決定済み

60%

問い合わせ時点で検討完了

6-10

参照する情報源の数

DMU別コンテンツ戦略

各メンバーが自分で情報収集できるよう、適切なコンテンツを用意することが重要です

イニシエーター向けコンテンツ

目的:課題認識を深め、解決策の選択肢として認知してもらう

課題解決型ブログ

SEO対策で見つけてもらう

Before/After事例

数字で効果を示す

チェックリスト

課題を客観的に把握

入門ガイド

わかりやすく解説

インフルエンサー向けコンテンツ

目的:技術的な信頼を獲得し、社内での推薦を得る

技術資料・仕様書

API、システム構成図

セキュリティ資料

認証、データ保護方針

技術比較表

競合との機能比較

技術セミナー

詳細な製品説明

デシジョンメーカー向けコンテンツ

目的:投資判断に必要な情報を提供し、承認を得る

ROI計算ツール

投資回収期間を明確に

サマリー資料

1-2ページで要点を

大手企業事例

経営者インタビュー

市場調査レポート

業界トレンド分析

バイヤー向けコンテンツ

目的:スムーズな購買手続きを支援し、契約までの障壁を減らす

明確な料金表

プラン別価格を明示

見積りツール

オンラインで即時取得

契約FAQ

支払条件、契約期間

企業情報

取引実績、財務状況

ユーザー向けコンテンツ

目的:実際の使用イメージを持ってもらい、導入後の不安を解消

デモ動画

3-5分で操作画面を紹介

スクリーンショット

画面キャプチャで説明

チュートリアル

段階的な使い方ガイド

ユーザーレビュー

実際の声を掲載

ゲートキーパー向けコンテンツ

目的:情報の「通過」を促し、意思決定者へのアクセスを確保

会社概要

設立年、資本金、沿革

取引実績

導入企業、認証資格

問い合わせ対応

迅速で丁寧な返信体制

シンプルなフォーム

入力項目を最小限に

今日から始める実践ステップ

優先順位を付けて、段階的に進めましょう

1

フェーズ1
1-2ヶ月

最低限必要なコンテンツ

  • 明確な料金表
  • 3つ以上の導入事例
  • 製品デモ動画(5分程度)
  • 基本的な技術資料
2

フェーズ2
3-4ヶ月

差別化コンテンツ

  • ROI計算ツール
  • 詳細な技術ドキュメント
  • 課題解決型ブログ10本
  • 無料トライアル環境
3

フェーズ3
5ヶ月〜

継続的な改善

  • コンテンツの拡充
  • ウェビナー定期開催
  • ユーザーコミュニティ
  • 効果測定と改善

3つの重要ポイント

DMU視点でコンテンツを設計する

DMUの理解

6つの役割それぞれが異なる関心事を持つ。全員の納得が必要。

ダークファネル対応

問い合わせ時点で検討の60%以上が完了。見えない段階から情報提供を。

適切なコンテンツ

各DMUメンバーに合わせたコンテンツを段階的に用意する。

今日から始めるアクション

自社サイトを評価 不足コンテンツを特定 制作スケジュール作成

「せっかく問い合わせがあったのに、話を聞くと検討がかなり進んでいて、すでに競合と比較されている…」

BtoBマーケティングに携わる方なら、このような経験があるのではないでしょうか。

実は、これは偶然ではありません。近年、BtoB購買において「ダークファネル」と呼ばれる見えない検討プロセスが急速に拡大しています。お客様は問い合わせをする前に、すでにWebサイトで情報収集を済ませ、比較検討を進めているのです。

さらに複雑なのは、BtoBの購買では複数の人が関与するという点です。現場担当者、技術部門、経営層、購買部門…それぞれ異なる立場から、異なる視点で判断します。

この「意思決定に関わる人々」を理解し、それぞれに適切な情報を届けることが、今のBtoBマーケティングで成果を出すカギとなります。

本記事では、BtoB購買における意思決定単位「DMU(Decision Making Unit)」の6つの役割を詳しく解説し、ダークファネル時代にどのようなコンテンツを用意すべきかを具体的にお伝えします。

DMU(Decision Making Unit)とは?

DMU(Decision Making Unit:意思決定単位)とは、BtoBの購買意思決定に関与する人々の集まりのことです。

一般消費者向けの商品であれば、購入者本人が「欲しい」と思えば即決できます。しかし、BtoBでは話が違います。

例えば、新しいMAツールを導入する場合を考えてみましょう:

  • 現場のマーケターが「必要だ」と気づく
  • IT部門が技術的な要件をチェックする
  • 経営層が予算を承認する
  • 購買部が契約手続きを進める
  • 実際に使うのは現場のメンバー全員

このように、複数の人がそれぞれ異なる役割で関与します。これがDMUです。

重要なのは、DMUの各メンバーは異なる関心事を持っているということ。現場担当者は「使いやすさ」、IT部門は「セキュリティ」、経営層は「ROI」に注目します。

すべてのメンバーが納得しなければ、購買は成立しません。だからこそ、それぞれに向けた情報提供が必要なのです。

DMU 意思決定単位 イニシエーター 課題認識 インフルエンサー 専門知識 デシジョン メーカー 最終決定 バイヤー 購買手続き ユーザー 実際に使用 ゲート キーパー 情報管理
図1: DMUの6つの役割とその関係性

DMUの6つの役割:それぞれの特徴と関心事

DMUは一般的に6つの役割に分類されます。それぞれの特徴、関心事、情報収集行動を見ていきましょう。

① イニシエーター(Initiator):課題を最初に認識する人

イニシエーターは、購買プロセスの起点となる重要な役割です。日々の業務の中で何らかの課題や不便さを感じ、「もっと良い方法があるのではないか」「この問題を解決する必要がある」と最初に気づく人です。

多くの場合、現場の最前線で働いている担当者がこの役割を担います。彼らは理論や戦略ではなく、実際の業務を通じて課題を肌で感じています。そのため、「このままではまずい」という切実な問題意識を持っているのが特徴です。

ただし、イニシエーターは必ずしも決裁権を持っているわけではありません。むしろ、持っていないことの方が多いでしょう。そのため、彼らは社内で「この課題を解決すべきだ」と提起し、上司や関係部署を説得する必要があります。

特徴:

  • ニーズを最初に認識・提起する人
  • 「これ必要じゃない?」と言い出す役割
  • 現場で課題を肌で感じている

具体的な職種例:

  • マーケティング担当者
  • 営業担当者
  • 現場のプロジェクトリーダー
  • 業務を直接担当している社員

関心事:

  • 現在抱えている課題の解決
  • 業務効率の改善
  • 自分の仕事を楽にできるか

情報収集行動:

  • Google検索で「課題名 解決」などを検索
  • SNSやコミュニティで情報収集
  • 比較的早い段階から情報を探し始める

② インフルエンサー(Influencer):専門知識で影響を与える人

インフルエンサーは、DMUの中でも特に重要な役割を果たします。彼らは直接の決裁権を持っていないにもかかわらず、その専門知識や技術的な見識によって、意思決定に大きな影響を与えるからです。

特にIT投資や技術的な製品・サービスの導入においては、インフルエンサーの「OK」がなければ、たとえ経営層が興味を持っていても前に進まないことがよくあります。情報システム部門が「セキュリティ上問題がある」と判断すれば、その案件は事実上ストップします。

インフルエンサーは、感情ではなくデータや論理で判断します。彼らを納得させるには、技術的な詳細や客観的な証拠が必要です。逆に言えば、インフルエンサーを味方につけることができれば、社内での推薦者になってくれる可能性があります。

特徴:

  • 情報や意見で意思決定に強く影響する
  • 技術的・専門的知識を持つことが多い
  • 直接の決裁権はないが発言力が大きい

具体的な職種例:

  • IT部門・情報システム部
  • 技術部門のエキスパート
  • 社内コンサルタント
  • 詳しい先輩・同僚

関心事:

  • 技術的な実現可能性
  • 既存システムとの互換性
  • セキュリティやコンプライアンス
  • 導入後の運用負荷

情報収集行動:

  • 技術仕様書やホワイトペーパーを精読
  • 製品の詳細な機能比較
  • セキュリティ対応状況の確認
  • 導入実績や技術的な評価記事を探す

③ デシジョンメーカー(Decider):最終決定権を持つ人

デシジョンメーカーは、文字通り最終的な意思決定を下す人です。彼らのYesがなければ、どれだけ良い提案でも実現しません。そのため、BtoB営業においては最も重要な相手と言えるでしょう。

しかし、デシジョンメーカーは多忙であり、細かい技術的な詳細にまで目を通す時間がありません。彼らが重視するのは、「この投資は事業にどのような価値をもたらすのか」「リスクはどれくらいあるのか」「本当に今やるべきなのか」といった経営的な観点です。

また、デシジョンメーカーは複数の投資案件の中から優先順位をつけて判断しています。限られた予算の中で、最も効果の高い投資を選択しなければならないというプレッシャーがあります。そのため、ROIや戦略的な意義を明確に示すことが重要です。

特徴:

  • 最終的なYes / Noを決める権限者
  • 予算承認権を持つ
  • 複数の選択肢から最終判断を下す

具体的な職種例:

  • 部長・本部長
  • 役員・執行役員
  • 経営者・社長
  • 事業部門の責任者

関心事:

  • 投資対効果(ROI)
  • 事業戦略との整合性
  • リスクの大きさ
  • 競合優位性の確保
  • 導入後の成果

情報収集行動:

  • 要約されたエグゼクティブサマリーを好む
  • 数字やデータを重視
  • 他社の導入事例や成功事例を確認
  • トップ同士の紹介や推薦を重視する傾向

④ バイヤー(Buyer):実際の購買手続きを行う人

バイヤーは、意思決定が下された後に実際の購買手続きを担当する役割です。一見すると単なる事務手続きのように思えますが、実は彼らも購買プロセスに大きな影響力を持っています。

バイヤーは、社内の購買規定やコンプライアンス要件を守る責任があります。たとえデシジョンメーカーがYesと言っても、「この契約条件では社内規定に合わない」「支払い条件が承認できない」となれば、契約は進みません。

また、バイヤーは複数のベンダーとの交渉経験が豊富です。そのため、価格や条件が妥当かどうかを見極める目を持っています。無理な値引き要求をしてくることもありますが、これは彼らの仕事の一部です。バイヤーと良好な関係を築くことが、スムーズな契約につながります。

特徴:

  • 契約・発注手続きを実務的に進める
  • 価格交渉や条件調整を担当
  • コンプライアンスや社内規定を守る役割

具体的な職種例:

  • 購買部・調達部
  • 資材部
  • 経理・財務部門
  • 総務部

関心事:

  • 価格の妥当性
  • 契約条件・支払い条件
  • 社内規定との適合性
  • ベンダーの信頼性
  • 取引実績

情報収集行動:

  • 見積書や契約書のテンプレート確認
  • 価格表や料金体系の詳細
  • 他ベンダーとの条件比較
  • 契約関連の法務的な情報

⑤ ユーザー(User):実際に使う人

ユーザーは、製品やサービスを日常的に使う人です。彼らの満足度は、次回の購買や契約更新に直結するため、非常に重要な存在です。

どれだけ経営層が導入を決めても、実際に使う現場のメンバーが「使いにくい」「役に立たない」と感じれば、その製品は使われなくなります。使われない製品に対して、次の予算が承認されることはありません。

ユーザーが重視するのは、実務での使いやすさです。高度な機能よりも、日常的に使う基本機能がストレスなく動作することを求めます。また、困ったときにすぐにサポートを受けられるか、マニュアルがわかりやすいかといった点も重要です。

ユーザーの声は、イニシエーターやインフルエンサーを通じて経営層にも届きます。「現場から評判が良い」という情報は、継続利用や追加投資の判断に大きく影響します。

特徴:

  • 製品・サービスを日常的に使用する
  • 満足度が次回購買に直結する
  • 導入後の評価を左右する重要な存在

具体的な職種例:

  • 現場の営業メンバー
  • マーケティングチームのメンバー
  • カスタマーサポート担当
  • 製造・物流の現場スタッフ

関心事:

  • 使いやすさ・操作性
  • 学習コストの低さ
  • 日常業務での実用性
  • サポート体制
  • 導入後のトレーニング

情報収集行動:

  • 実際の操作画面のスクリーンショット
  • チュートリアル動画
  • ユーザーレビューや口コミ
  • 無料トライアルやデモ体験

⑥ ゲートキーパー(Gatekeeper):情報をコントロールする人

ゲートキーパーは、DMUの中で最も見落とされがちですが、実は非常に重要な役割です。彼らは情報の流れをコントロールし、誰が誰にアクセスできるかを決める権限を持っています。

典型的なのは経営者の秘書です。営業担当者がいくら社長と話したいと思っても、秘書が「必要ない」と判断すれば、そのアポイントメントは実現しません。また、情報システム部門の窓口担当者も、外部ベンダーからの問い合わせを適切な担当者に振り分けるか、あるいは断るかを判断します。

ゲートキーパーの判断基準は、「この情報や提案は、上司や部門にとって価値があるか」「対応する時間を使う価値があるか」です。彼らを味方につけるには、丁寧な対応と明確な価値提案が必要です。ゲートキーパーに「これは重要だ」と思ってもらえれば、スムーズに意思決定者にアクセスできます。

特徴:

  • 情報や接触を「通す/止める」権限を持つ
  • 意思決定者へのアクセスを管理
  • しばしば見落とされがちだが重要な役割

具体的な職種例:

  • 経営者の秘書・アシスタント
  • 情報システム部門の窓口担当
  • 受付・総務担当
  • 購買ルールを管理する部門

関心事:

  • 自社の方針・ルールとの適合性
  • 上司や部門への負担軽減
  • スムーズな業務進行
  • リスクの回避

情報収集行動:

  • 企業の信頼性チェック
  • 過去の取引実績
  • 問い合わせ対応の質
  • 必要書類の有無

DMUの役割を一覧表で整理

役割 主な関心事 重視する情報 具体例
イニシエーター 課題解決、業務改善 課題解決事例、導入効果 現場担当者
インフルエンサー 技術要件、実現可能性 技術仕様書、セキュリティ資料 IT部門、技術者
デシジョンメーカー ROI、戦略適合性 導入効果データ、経営層向け資料 部長、役員、経営者
バイヤー 価格、契約条件 見積書、契約書、取引実績 購買部、調達部
ユーザー 使いやすさ、実用性 操作画面、チュートリアル、レビュー 現場スタッフ
ゲートキーパー ルール適合、リスク回避 企業情報、実績、必要書類 秘書、受付、システム部

ダークファネルとは?見えない検討プロセスの拡大

ダークファネルの定義

ダークファネルとは、企業側から見えない顧客の検討プロセスのことです。

従来のマーケティングでは、顧客の行動をある程度追跡できました:

サイト訪問 → 資料ダウンロード → セミナー参加 → 問い合わせ

しかし今は違います。顧客は問い合わせをする前に:

  • Google検索で情報収集
  • 口コミサイトでレビュー確認
  • SNSで評判をチェック
  • 比較サイトで他社と比較
  • YouTubeで使い方を学習

これらの行動は、あなたの会社からは見えません。これがダークファネルです。

従来のファネル vs ダークファネル BtoB購買における検討プロセスの変化 従来のファネル (見える検討プロセス) 認知 興味・関心 検討 問合せ 成約 ダークファネル (見えない検討プロセス) Google検索 SNS情報収集 口コミ確認 比較サイト YouTube視聴 問合せ 成約 企業から見えない 検討プロセス 企業が接触可能 な段階 問い合わせ時点で検討の 60%以上が完了
図2: 従来のファネルとダークファネルの違い

なぜダークファネルが拡大しているのか

ダークファネルが拡大している主な理由は3つあります:

1. 情報の民主化

インターネットの発達により、誰でも簡単に情報にアクセスできるようになりました。以前は営業担当者に聞かなければわからなかった情報も、今はWebで簡単に調べられます。

2. 購買行動のデジタル化

特にコロナ禍以降、対面営業が減り、デジタルでの情報収集が主流になりました。展示会やセミナーに参加しなくても、オンラインで十分な情報が手に入ります。

3. 購買者の自律性向上

現代のBtoB購買者は、自分で調べて判断したいと考えています。営業担当者とコンタクトを取るのは、かなり検討が進んでからです。

データで見るダークファネルの実態

複数の調査結果が、ダークファネルの拡大を裏付けています:

  • BtoB購買者の約70%が、営業担当者に接触する前に意思決定を済ませている
  • 問い合わせ時点で、すでに購買プロセスの60%以上が完了している
  • 平均6〜10の情報源を参照してから問い合わせをする

つまり、あなたの会社が顧客と接触できるのは、検討の終盤なのです。

ダークファネルがもたらす課題

この状況は、BtoBマーケティングに大きな課題をもたらします:

  • 競合との比較がすでに済んでいる
  • 間違った情報で判断されている可能性
  • 自社の強みが十分に伝わっていない
  • 早期段階での関係構築ができない

だからこそ、見えない検討段階でも、適切な情報を届ける必要があるのです。

各メンバーに届けるべきコンテンツ戦略

ダークファネルが拡大している今、DMUの各メンバーが自分で情報収集できるよう、適切なコンテンツを用意することが重要です。

ここでは、各DMUメンバーに対して、どのようなコンテンツを用意すべきかを具体的に解説します。

① イニシエーター向けコンテンツ

目的: 課題認識を深め、解決策の選択肢として認知してもらう

用意すべきコンテンツ:

  • 課題解決型ブログ記事
    • 「営業の作業時間が足りない」「リードが増えない」など、具体的な課題をタイトルに
    • SEO対策を施し、Google検索で見つけてもらう
  • Before / After事例
    • 同じ課題を抱えていた企業の改善事例
    • 数字で効果を示す(「作業時間50%削減」など)
  • チェックリスト・診断ツール
    • 「あなたの会社はこんな課題を抱えていませんか?」
    • 自社の状況を客観的に把握できるツール
  • 入門ガイド・基礎知識コンテンツ
    • 「〇〇とは?初心者向け完全ガイド」
    • 専門用語を使わず、わかりやすく解説

配置場所: ブログ、SEO記事、SNS投稿、YouTube動画

② インフルエンサー向けコンテンツ

目的: 技術的な信頼を獲得し、社内での推薦を得る

用意すべきコンテンツ:

  • 技術資料・ホワイトペーパー
    • アーキテクチャ図、システム構成図
    • API仕様書、連携可能なシステム一覧
  • セキュリティ関連資料
    • セキュリティ対策の詳細
    • 取得している認証(ISO27001、プライバシーマークなど)
    • データ保護方針
  • 技術比較表
    • 競合製品との機能比較(客観的に)
    • 技術的な優位性の説明
  • 導入・運用ガイド
    • 導入にかかる期間と工数
    • 必要なリソース
    • 運用時のサポート体制
  • ウェビナー・技術セミナー
    • エンジニア向けの詳細な製品説明
    • Q&Aセッション

配置場所: 資料ダウンロードページ、技術ドキュメントサイト、ウェビナー

③ デシジョンメーカー向けコンテンツ

目的: 投資判断に必要な情報を提供し、承認を得る

用意すべきコンテンツ:

  • ROI計算ツール・シミュレーター
    • 投資額と効果を簡単に計算できるツール
    • 「導入後〇年で投資回収」など明確に
  • 経営層向けサマリー資料(1〜2ページ)
    • 要点を絞った簡潔な資料
    • 数字とグラフを中心に構成
  • 大手企業・有名企業の導入事例
    • 同業他社や競合の導入実績
    • 経営者インタビュー形式の事例
  • 業界トレンド・市場調査レポート
    • 「なぜ今この投資が必要なのか」を示す
    • 第三者機関のデータを引用
  • リスク対策の説明資料
    • 導入失敗のリスクとその対策
    • サポート体制の充実度

配置場所: エグゼクティブ向けページ、事例ページ、提案資料テンプレート

④ バイヤー向けコンテンツ

目的: スムーズな購買手続きを支援し、契約までの障壁を減らす

用意すべきコンテンツ:

  • 明確な料金表・価格体系
    • プラン別の価格を明示
    • 初期費用、月額費用、オプション費用を分けて表示
  • 見積書テンプレート・即時見積りツール
    • オンラインで見積もりを取得できる仕組み
  • 契約関連FAQ
    • 支払い条件(月払い・年払いなど)
    • 契約期間・解約条件
    • 発注から納品までの流れ
  • 必要書類一覧
    • 契約に必要な書類をリスト化
    • ダウンロード可能にする
  • 取引実績・企業情報
    • 会社概要、沿革
    • 主要取引先
    • 財務状況(上場企業の場合)

配置場所: 料金ページ、FAQ、会社情報ページ

⑤ ユーザー向けコンテンツ

目的: 実際の使用イメージを持ってもらい、導入後の不安を解消する

用意すべきコンテンツ:

  • 製品デモ動画
    • 実際の操作画面を見せる(3〜5分程度)
    • 「〇〇する方法」など、具体的なタスク別に
  • スクリーンショット付き機能説明
    • 画面キャプチャを多用した説明
    • 「ここをクリックすると〇〇できる」など具体的に
  • チュートリアル・ハウツー記事
    • 初めてでもわかる使い方ガイド
    • よくある操作を段階的に説明
  • ユーザーの声・レビュー
    • 実際に使っているユーザーのコメント
    • 「使ってみてどうだったか」のリアルな声
  • 無料トライアル・デモ環境
    • 実際に触れる環境を提供
    • トライアル後のサポート体制も明記
  • トレーニング・サポート情報
    • 導入時の研修プログラム
    • マニュアル、ヘルプセンター
    • チャットサポートの対応時間

配置場所: 製品ページ、ヘルプセンター、YouTube、無料トライアルページ

⑥ ゲートキーパー向けコンテンツ

目的: 情報の「通過」を促し、意思決定者へのアクセスを確保する

用意すべきコンテンツ:

  • 会社概要・企業情報
    • 設立年、資本金、従業員数
    • 事業内容の明確な説明
    • 代表者プロフィール
  • 取引実績・導入企業一覧
    • 業界別の導入実績
    • 大手企業・有名企業のロゴ掲載(許可を得て)
  • 信頼性の証明
    • 各種認証・資格
    • 受賞歴
    • メディア掲載実績
  • 問い合わせ対応の質の高さ
    • 迅速な返信(〇営業日以内に返信)
    • 丁寧な対応
    • 必要な情報をすぐに提供できる体制
  • わかりやすい問い合わせフォーム
    • 入力項目は最小限に
    • 問い合わせ目的を選択できる仕組み

配置場所: 会社情報ページ、実績ページ、お問い合わせページ

コンテンツマッピング:誰に、いつ、何を届けるか

DMUの各メンバーに適切なコンテンツを届けるには、コンテンツマッピングが有効です。

コンテンツマッピングとは

コンテンツマッピングとは、「誰が」「どの段階で」「どのような情報を必要としているか」を整理し、適切なコンテンツを配置する手法です。

検討段階別のコンテンツマップ例

検討段階 イニシエーター インフルエンサー デシジョンメーカー バイヤー ユーザー
認知・課題認識 ブログ記事、チェックリスト 業界トレンド記事 市場調査レポート - -
情報収集 導入事例、入門ガイド 技術資料、ホワイトペーパー 経営層向けサマリー 料金表 デモ動画
比較検討 比較表、ウェビナー 技術比較、セキュリティ資料 ROI計算ツール、事例 見積もり、契約FAQ トライアル、レビュー
意思決定 推薦資料 導入・運用ガイド 最終提案資料 契約書類 サポート情報

コンテンツマッピングの実践ステップ

ステップ1:現状の棚卸し

  • 今あるコンテンツをリストアップ
  • どのDMUメンバー向けか分類

ステップ2:不足の特定

  • 上記の表と照らし合わせる
  • 足りないコンテンツを洗い出す

ステップ3:優先順位付け

  • 問い合わせが多い業種・企業規模
  • よく聞かれる質問
  • 競合との差別化ポイント

ステップ4:制作・配置

  • 優先度の高いものから制作
  • サイト内の適切な場所に配置
  • 導線を整備(関連コンテンツへのリンクなど)

ステップ5:効果測定・改善

  • アクセス解析で閲覧状況を確認
  • 問い合わせ数の変化を追跡
  • ユーザーの声を収集して改善

実践:サイトコンテンツの見直しチェックリスト

ここまでの内容を踏まえて、実際に自社サイトのコンテンツを見直してみましょう。

DMU別コンテンツチェックリスト

□ イニシエーター向け

  • 課題解決型のブログ記事が10本以上ある
  • 具体的な数字を含む導入事例がある
  • SEO対策されたコンテンツがある
  • SNSで共有しやすい形式になっている

□ インフルエンサー向け

  • 技術仕様書・ホワイトペーパーがダウンロードできる
  • セキュリティ対策の詳細が明記されている
  • 既存システムとの連携方法が説明されている
  • 技術的な質問に答えるFAQがある

□ デシジョンメーカー向け

  • ROI計算ツールまたはシミュレーターがある
  • 1〜2ページの経営層向けサマリーがある
  • 大手企業の導入事例が掲載されている
  • 業界トレンドや市場データを示すコンテンツがある

□ バイヤー向け

  • 料金表が明確に表示されている
  • オンラインで見積もりが取得できる
  • 契約関連のFAQが充実している
  • 会社の信頼性を示す情報がある

□ ユーザー向け

  • 製品デモ動画がある(3〜5分程度)
  • 実際の操作画面のスクリーンショットが豊富
  • 無料トライアルまたはデモ環境を提供している
  • ユーザーレビューや導入後の声がある
  • ヘルプセンター・サポート情報が充実している

□ ゲートキーパー向け

  • 会社情報が明確に記載されている
  • 取引実績・導入企業が確認できる
  • 問い合わせフォームがシンプルでわかりやすい
  • 問い合わせへの返信が迅速である

サイト全体のチェックポイント

□ 導線の整備

  • 関連コンテンツへのリンクが適切に配置されている
  • DMUメンバーが必要な情報にたどり着きやすい
  • サイト内検索が機能している

□ ダウンロード資料

  • 複数の資料が用意されている(入門編、詳細編など)
  • ダウンロード時の入力項目が最小限
  • ダウンロード後のフォローアップ体制がある

□ モバイル対応

  • スマートフォンでも見やすい
  • 動画がモバイルでもスムーズに再生される

□ 更新頻度

  • 定期的にコンテンツが追加されている
  • 古い情報が更新されている

優先順位の付け方:まず何から始めるべきか

すべてのコンテンツを一度に用意するのは現実的ではありません。優先順位を付けて、段階的に進めましょう。

フェーズ1:最低限必要なコンテンツ(1〜2ヶ月)

必須コンテンツ:

  1. 明確な料金表(バイヤー向け)
    • 問い合わせのハードルを下げる最重要コンテンツ
  2. 3つ以上の導入事例(イニシエーター、デシジョンメーカー向け)
    • 異なる業種・企業規模の事例
    • 具体的な数字を含める
  3. 製品デモ動画(ユーザー向け)
    • 5分程度で主要機能を紹介
  4. 基本的な技術資料(インフルエンサー向け)
    • システム構成図、セキュリティ対策の概要

フェーズ2:差別化コンテンツ(3〜4ヶ月)

競合と差がつくコンテンツ:

  1. ROI計算ツール(デシジョンメーカー向け)
    • 自社で使える簡易シミュレーター
  2. 詳細な技術ドキュメント(インフルエンサー向け)
    • API仕様書、連携事例
  3. 課題解決型ブログ10本(イニシエーター向け)
    • SEO対策を施した記事群
  4. 無料トライアル環境(ユーザー向け)
    • 実際に触れる環境の提供

フェーズ3:継続的な改善(5ヶ月〜)

長期的な取り組み:

  1. コンテンツの拡充
    • 事例の追加(月1本)
    • ブログ記事の追加(週1本)
  2. ウェビナー・セミナーの定期開催
    • 月1回のペースで
  3. ユーザーコミュニティの形成
    • ユーザー同士の情報交換の場
  4. 効果測定と改善
    • アクセス解析
    • 問い合わせ経路の分析
    • コンテンツの改善

すぐにできるアクション

今日から始められることもあります:

今日できること:

  • 自社サイトを上記チェックリストで評価する
  • 不足しているコンテンツをリストアップする
  • 既存の資料を整理し、ダウンロード可能にする

今週できること:

  • 料金表を作成・公開する
  • 既存顧客にインタビューして事例を作成する
  • 製品の操作画面をスクリーンショットで撮影する

今月できること:

  • デモ動画を1本制作する
  • SEO対策したブログ記事を3本公開する
  • 問い合わせフォームを見直し、シンプルにする

まとめ:DMU視点でコンテンツを設計する重要性

BtoBの購買では、複数の人が異なる視点で関与します。それがDMU(Decision Making Unit)です。

そして今、顧客は問い合わせをする前に、すでに多くの情報を集め、比較検討を進めています。これがダークファネルの拡大です。

だからこそ、DMUの各メンバーが必要とする情報を、見えない検討段階から提供することが、BtoBマーケティング成功のカギとなります。

本記事のポイント再確認

  1. DMUには6つの役割がある
    • イニシエーター、インフルエンサー、デシジョンメーカー、バイヤー、ユーザー、ゲートキーパー
  2. それぞれ異なる関心事を持つ
    • 現場担当者は「使いやすさ」、IT部門は「技術要件」、経営層は「ROI」
  3. ダークファネルが拡大している
    • 問い合わせ時点で検討の60%以上が完了している
  4. 各DMUメンバーに適したコンテンツを用意する
    • ブログ、事例、技術資料、デモ動画、ROI計算ツールなど
  5. 優先順位を付けて段階的に進める
    • まずは料金表、事例、デモ動画から

次のステップ

この記事を読み終えたら、ぜひ次のアクションを実行してください:

  1. 自社サイトの現状を評価する
    • チェックリストを使って不足を特定
  2. 優先度の高いコンテンツを決める
    • 問い合わせが多い業種や企業規模に合わせて
  3. 制作スケジュールを立てる
    • フェーズ1の必須コンテンツから着手
  4. 効果測定の仕組みを作る
    • アクセス解析、問い合わせ経路の追跡

DMU視点でのコンテンツ設計は、一度に完成させる必要はありません。少しずつ改善を重ねていくことで、見えない検討プロセスでも顧客に選ばれる存在になれるのです。

今日から、あなたのBtoBマーケティングにDMU視点を取り入れてみませんか?


最終更新日:2026-01-22