サードパーティCookieの廃止は延期され、2025年10月にはGoogleがPrivacy Sandboxの主要技術を取り下げました。Cookieは当面残ります。ただ、BtoBの集客が抱えた問題は何ひとつ解決していません。

ブラウザ側の制限は続き、日本では外部送信規律と個人情報保護法の改正が動いています。匿名の訪問者を広告で追いかける前提が、少しずつ崩れています。

この記事では、2026年時点でCookie規制がどこまで進んだかを整理します。そのうえで、BtoBが影響を受けやすい理由、実名データで集客する設計、法対応の押さえどころを扱います。

読み終えたときに、リード獲得を何から作り直すかが決まっている状態を目指します。

サードパーティCookie規制の現在地|2026年時点で決まったこと

2026年7月時点で、Chromeのサードパーティcookieは廃止されていません。ただし規制が終わったわけでもありません。

Googleは2025年10月17日、Privacy Sandboxの主要技術を段階的に終了すると発表しました。TopicsやProtected Audienceなど10のAPIが対象です(Google|Privacy Sandboxの計画更新)。代替技術として期待されていた枠組みが、大幅に縮小したかたちです。

一方でSafariは2020年3月、Safari 13.1でクロスサイトのcookieを既定でブロックしました(ITmedia NEWS)。Firefoxもトラッカー由来のcookieを遮断しています。Chromeも、扱いをユーザーの選択に委ねる方針です。

Cookie規制の動きを、BtoB集客への影響とあわせて並べます。

時期 出来事 BtoB集客への影響
2020年3月 SafariがサードパーティCookieを完全ブロック Safari経由の訪問者は横断的な追跡が不可に
2023年6月 改正電気通信事業法の外部送信規律が施行 自社サイト側に通知・公表などの対応義務
2024年7月 GoogleがChromeでの一律廃止方針を見直すと発表 対応の期限が見えにくくなる
2025年10月 GoogleがPrivacy Sandbox主要APIの終了を発表 代替技術という選択肢が縮小
2026年7月 改正個人情報保護法が公布 個人関連情報の扱いに新たな規律

「廃止撤回」でも元に戻らない理由

Chromeが方針を変えても、手元のデータは元に戻りません。理由は3つあります。

  1. Safariの制限は継続している。国内のブラウザシェアで2割を超えるとされ、無視できる規模ではない
  2. ファーストパーティcookieにも寿命の制限がある。SafariのITP(=Appleのトラッキング防止機能)では、JavaScript由来のcookieが最大7日で削除される(アドエビス|Cookie規制とは?
  3. 日本の法規制は強化の方向にある。後述の外部送信規律と個人情報保護法の改正が該当する

Cookieが技術的に残ることと、それで顧客を追い続けられることは、別の話です。

なぜBtoBはCookie規制の影響を受けやすいのか

BtoBは、BtoCよりCookie規制のダメージが表面化しやすい領域です。訪問者の母数が小さく、検討期間が長いためです。

効いてくるのは次の4点です。

  • 検討期間がcookieの寿命を超える:製品検討は数か月から1年に及びます。7日や30日で消えるcookieでは、最初の接触と受注を結べません
  • 意思決定者が複数いる:情報収集は担当者、稟議は部長、最終判断は役員という分業が普通です。端末が別々のため、同一商談として束ねられません
  • 母数が小さく推定が効かない:統計モデルで欠損を補う手法は精度が出ません。月間の商談が20件の事業では、推定値を判断材料にできません
  • 社内ネットワークの制約:企業のIPアドレスは共有されます。同じ会社の5人が別々の訪問者になることも、逆に1人にまとまることもあります

4点目は、企業単位でリードを見るBtoBでは特に厄介です。

Web経由でリードを組み立てる考え方は、製造業のWebリード獲得でも整理しています。

4種類のデータを見分ける

対応を考える前に、扱うデータの出どころを4つに分けます。主軸をどれに置くかで打ち手が変わります。

BtoBが主軸に据えるのは、上段の2つ マーケティングで扱うデータを出どころ別に4つへ分類した図。ゼロパーティデータは本人が自ら申告した情報。ファーストパーティデータは自社が直接取得した情報。セカンドパーティデータは他社から提供を受ける情報。サードパーティデータは外部事業者が集めた情報。 ゼロパーティデータ 本人が自ら申告した情報 ファーストパーティデータ 自社が直接取得した情報 セカンドパーティデータ 他社から提供を受ける情報 サードパーティデータ 外部事業者が集めた情報
図1:BtoBが主軸に据えるのは、上段の2つ

違いは「誰が集めたか」と「誰から許可を得たか」です。

  • ゼロパーティデータ:顧客が意図的に提供した情報。フォームの回答やアンケートが該当します
  • ファーストパーティデータ:自社のサイトで直接取得したデータ。会員の閲覧やダウンロードの履歴が中心です
  • セカンドパーティデータ:他社のファーストパーティデータの提供を受けたもの。共催セミナーの参加者リストが典型です
  • サードパーティデータ:外部事業者が広く収集したデータ。規制の直撃を受けているのがこの層です

BtoBで再現性が高いのは、ゼロパーティとファーストパーティの組み合わせです。顧客が自ら名乗り、自社の画面上で行動する。ブラウザの仕様変更に振り回されにくくなります。

ただし、量は増えません。匿名の訪問者を広く集める手法より、接点の母数は小さくなります。社内で先に共有が要ります。

実名データで集客するBtoBマーケティング戦略の全体像

実名データで集客する設計は4つのステップに分かれます。順番を入れ替えると機能しません。

ログイン領域を先に作らないと、実名データは集まらない 実名データで集客する手順を左から右へ示した図。ステップ1はログイン領域を作る。ステップ2は会員登録へ誘導する。ステップ3は行動を実名で記録する。ステップ4は営業と共有する。 1 ログイン領域を作る 2 会員登録へ誘導する 3 行動を実名で記録する 4 営業と共有する
図2:ログイン領域を先に作らないと、実名データは集まらない
  1. STEP1|ログイン領域を用意する(担当:マーケ・情シス/目安1〜3か月)
  2. STEP2|会員登録へ誘導する(担当:マーケ/目安1か月〜)
  3. STEP3|行動を実名で記録する(担当:マーケ/継続)
  4. STEP4|営業と共有する(担当:営業企画/継続)

ログイン領域を用意し、登録の理由を作る

最初にやることは、ログインしないと見られない情報の用意です。ここが弱いと、以降のステップが空回りします。

登録の動機になりやすいのは次の情報です。

  • 詳細仕様書、図面、CADデータ
  • 導入事例の詳細版(企業名や実数値入り)
  • セミナー動画のアーカイブ
  • 取引先ランク別の価格や在庫
  • 製品マニュアル

公開中のコンテンツを会員限定にするだけでは、登録は進みません。営業がメールで個別送付している資料が有力な候補です。

立ち上げ手順はBtoB会員サイトの構築方法で整理しています。

行動を実名で記録する

次は行動の記録です。見るべきはPV数やセッション数ではありません。

「誰が」「何を」「いつ」見たかを、個人と企業の単位で残します。「B社の設計担当が、製品Aの仕様書を今週3回開いた」という粒度です。

記録したい行動を挙げます。

  1. 資料のダウンロード(何を、何回)
  2. 製品ページの閲覧(滞在時間と再訪)
  3. 動画の視聴(どこまで見たか)
  4. FAQの検索キーワード(何に困っているか)
  5. 見積依頼や問い合わせの起票

4つ目は見落とされがちです。FAQの検索履歴には、顧客が言語化していない課題が現れます。

集計と可視化は分析・通知機能が担う領域です。

記録した行動を営業へ渡す

データは、営業が使って初めて価値になります。渡し方を設計しないと、誰も開かない画面が残ります。

渡し方は2通りです。行動を検知して担当営業へ自動通知する方法と、週次で企業ごとの行動サマリーを共有する方法です。

例えばtoviraでは、閲覧やダウンロードの行動を積み上げ、関心の強さとして可視化する考え方をとっています。

実名の行動データを何から集めるか整理したい方へ。tovira では、BtoB会員サイトの設計資料をご用意しています。資料をダウンロードする

Cookieレスで壊れるのは計測

Cookie規制で最初に壊れるのは、集客そのものではなく計測です。ここを混同すると、施策の評価を誤ります。

影響が大きいのは、複数のサイトをまたぐ経路の追跡です。広告のクリックから資料請求までを1本の線でつなぐ計測は、精度が落ちます。

代替は、サーバーサイド計測、広告媒体のコンバージョンAPI、フォームでの流入経路の自己申告です。3つ目は原始的に見えますが、BtoBでは機能します。「弊社をどこでお知りになりましたか」という設問1つで、cookieでは取れない情報が手に入ります。

同意取得と法対応で押さえる範囲

実名データを扱うほど、法令対応の重みは増します。押さえておきたいのは2つです。

  1. 改正電気通信事業法の外部送信規律:2023年6月16日に施行されました。利用者の情報を外部へ送信する場合、通知・公表、同意取得、オプトアウトのいずれかが求められます(のぞみ総合法律事務所|外部送信規律の解説)。アクセス解析タグや広告タグを置くBtoBサイトも、対象になり得ます
  2. 改正個人情報保護法:改正法は2026年7月10日に参議院で可決・成立し、同月17日に公布されました(参議院|改正個人情報保護法の審議情報)。公布から2年を超えない範囲で施行される予定で、政令やガイドラインは今後示されます

自社が何をどこまで対応すべきかは、政令とガイドラインを確認し、法務部門と詰める領域です。確定していない部分を、推測で運用に組み込まないよう注意してください。

よくある質問

サードパーティCookieは結局廃止されないのですか

2026年7月時点で、Chromeでの一律廃止は行われていません。Googleは2025年10月にPrivacy Sandboxの主要APIを終了すると発表し、ユーザーの選択に委ねる方針を維持しています。ただしSafariはすでに完全ブロック済みです。

ファーストパーティCookieなら影響を受けませんか

影響はあります。SafariのITPでは、JavaScript由来のcookieが最大7日で削除されます。数か月の検討プロセスを追うなら、cookie単体に依存しない設計が必要です。

実名データを集めると、リードの数は減りませんか

登録のハードルを設ける以上、獲得件数は減る可能性があります。一方で、名前と所属が分かるリードは営業がそのまま追えます。件数ではなく商談化数で評価軸を組み替えるのが現実的です。

会員サイトを作れば、すぐに実名データが集まりますか

すぐには集まりません。ログインしてでも見たい情報があるか、既存顧客への案内動線があるかで立ち上がりが変わります。取引先を先に招待し、新規へ広げる順序が取りやすい方法です。

まとめ|Cookieの動向を待たず、自社の土台を作る

最新動向を追うだけでは、集客の課題は解決しません。ブラウザや法制度に左右されない土台を、自社側に作る作業が残ります。

要点を整理します。

  1. Chromeでの一律廃止はないが、Safariの制限と国内の法規制は続いている
  2. BtoBは検討期間の長さと母数の小ささから、Cookie依存の影響を受けやすい
  3. 主軸に据えるのはゼロパーティデータとファーストパーティデータ
  4. ログイン領域の用意、会員登録、行動の記録、営業との共有という順で組み立てる
  5. 外部送信規律と個人情報保護法の改正は、法務部門と対応範囲を確認する

まず着手すべきはSTEP1です。ログインしてでも見たい情報があるかを、営業資料から棚卸ししてください。

tovira のカスタマーポータルは、会員の実名の行動データを取得し、営業へ共有するまでを1つの基盤で扱います。自社で実現できるかは、実際の画面でご確認ください。デモを依頼する

出典

  • Google『Update on Plans for Privacy Sandbox Technologies』 privacysandbox.google.com(参照:2026-07-26)
  • ITmedia NEWS『Google、「プライバシーサンドボックス」を実質終了 関連技術のほとんどを廃止へ』 itmedia.co.jp(参照:2026-07-26)
  • ITmedia NEWS『Safari、サードパーティーCookieの完全ブロック宣言』 itmedia.co.jp(参照:2026-07-26)
  • アドエビス『【2026年版】Cookie規制とは?日本の状況・影響・対策方法まで解説』 ebis.ne.jp(参照:2026-07-26)
  • のぞみ総合法律事務所『改正電気通信事業法による外部送信規律(日本版Cookie規制)』 nozomisogo.gr.jp(参照:2026-07-26)
  • 参議院『個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案』 sangiin.go.jp(参照:2026-07-26)
編集者:

中川 晃次

再生ファンド傘下の複数企業にて、マーケティングディレクターとして事業再生を牽引。戦略立案から実行まで一貫して手がけ、ECサイトにおいては売上前年比150%成長を5年連続で達成した実績を持つ。現在はマーケティングSaaS「tovira」の開発に加え、BtoB領域のマーケティングコンサルティングを通じて、企業の持続的な成長を支援している。

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