「先月お渡ししたリード、その後いかがでしょうか」。マーケティング担当者がこう尋ね、営業から明確な返答が返ってこない。BtoB企業で繰り返されている場面です。

原因は、部門の仲が悪いことではありません。「良いリードとは何か」の定義、情報が届く経路、届くまでの速度。この3つが設計されていないだけです。設計のない仕組みは、担当者の努力だけでは回りません。

この記事では、マーケと営業の連携が崩れる原因を4つに分解し、打ち手を扱います。リード情報をリアルタイムで共有する仕組み、実装の4ステップ、連携の状態を測る指標まで踏み込みます。

読み終えたときに、来週どの会議で何を決めればよいかが分かっている状態を目指します。

営業とマーケティングの連携とは|MQLの受け渡しだけでは足りない

営業とマーケティングの連携とは、共通の定義・データ・指標で見込み顧客の検討プロセスを支える状態を指します。リードの一覧を月末に渡す行為は、その一部でしかありません。

MQL(=マーケティング部門が商談化を見込んで選別した見込み顧客)を営業へ渡し、営業が引き受けたものがSQL(=営業が商談として認めた見込み顧客)です。この2つの間で落ちるリードが、連携の課題です。

よくある誤解は、MAツール(=見込み顧客の育成を自動化するツール)を入れれば連携できるという考え方です。ツールは配管であり、何を良いリードと呼ぶかは決めてくれません。

自社の連携が成立しているかは、次の2点で確認できます。

  • 営業とマーケの担当者に別々に「良いリードとは」と聞いて、同じ答えが返るか
  • マーケが渡したリードの現在の状態を、マーケ側が自分で確認できるか

どちらかが「いいえ」なら、施策を増やす前に定義とデータの置き場を整える段階です。

なぜ噛み合わないのか

連携が進まない理由を担当者の姿勢に求めても、状況は変わりません。原因は設計側にあります。

  • 定義のズレ:マーケは資料をダウンロードした人、営業は決裁権を持つ人を指す。同じ言葉が別の対象を指す
  • 情報の遅延:情報が営業に届くのは数日後。届いた時点で他社との商談が始まっている
  • 指標の分断:マーケはMQL数、営業は受注金額を追う。双方が目標達成でも売上が伸びない
  • 文脈の欠落:渡されるのは会社名と担当者名と流入元だけ。関心の中身が分からず、営業は聞き直す
連携が崩れる原因は、この4つに集約される マーケティングと営業の連携が崩れる原因を4つに分類した図。定義のズレは良いリードの基準が部門で違う状態。情報の遅延はリードが営業に届くころには検討が冷めている状態。指標の分断は両部門が追う数字が別々である状態。文脈の欠落は顧客の関心の中身が営業に見えない状態。 定義のズレ 良いリードの基準が違う 情報の遅延 届くころには冷めている 指標の分断 追う数字が別々になる 文脈の欠落 関心の中身が見えない
図1:連携が崩れる原因は、この4つに集約される

最初に手を付けるのは定義のズレです。定義が合わないまま通知を速くしても、「対応しなくてよいリード」が増えるだけです。

文脈の欠落は、検討期間が長い業種ほど効いてきます(製造業のWebリード獲得)。

「良いリード」の定義が共有されていない

スコアリング(=行動や属性に点数を付けて見込み度を測る手法)を入れても、定義のズレは残ります。点数の設計に営業が入っていないためです。

Salesforceの解説では、決裁権者レベルに+15点、資料ダウンロードに+15〜20点を配分し、合計50点以上をMQLとする設計例が紹介されています(Salesforce|MQLとSQLの違いとは?)。

配点に正解はありません。問われるのは、配点表を営業と一緒に作ったかどうかです。属性や文脈も軸に加える3次元スコアリングの考え方もあります。

情報が届くのが遅い

週次でCSVを書き出す運用は、一見きちんと回って見えます。実際には、火曜日に仕様書を開いた担当者へ営業が連絡するのは翌週です。

ハーバード・ビジネス・レビューも、オンライン経由のリードに多くの企業が十分に速く対応できていないと指摘しています(The Short Life of Online Sales Leads)。

検討が動いている瞬間と、営業が連絡する瞬間がずれている。

連携を強化する5つの打ち手|定義・データ・場をそろえる

打ち手には順番があります。定義を決めずにツールを入れ替えても、リードの質は変わりません。着手順に5つ挙げます。

次の表は、5つの打ち手を担当と期間の目安とあわせて並べたものです。

# 打ち手 何を決めるか 主担当 目安期間
1 定義の合意 MQL・SQLの条件、除外条件、差し戻し条件 マーケ責任者+営業責任者 2週間
2 データの1本化 リード情報の置き場所、名寄せの基準 情報システム+マーケ 1か月
3 引き渡しルール 通知の条件・宛先・対応期限 マーケ 2週間
4 逆流の設計 受注・失注理由の返し方と項目 営業 1か月
5 振り返りの場 週次で確認する数字と議題 双方 継続

5つのうち4つは会議で決められます。システム投資が要るのは2番目だけです。

MQLとSQLの定義を1枚に書き出す

定義は口頭の合意で終わらせず、1枚の文書にします。書くべき項目は4つです。

  • 対象条件(どの属性・どの行動を満たしたらMQLとするか)
  • 除外条件(既存取引先、競合、採用目的の問い合わせなど)
  • 引き渡し方法(誰に、どの経路で、いつ渡すか)
  • 差し戻し条件(営業がMQLに該当しないと判断したとき、どう戻すか)

抜けやすいのは4つ目です。差し戻しの経路がないと、営業は不適合なリードを黙って放置します。放置は数字に出ないため、誤解は解けません。

部門間の約束を数字で決める

SLA(=部門間で交わす業務水準の取り決め)を、双方の約束として文章にします。片側だけの目標にしないのが要点です。

マーケ側は「定義を満たすMQLを月◯件供給する」、営業側は「受領から24時間以内に初回接触する」。この対の形で書きます。

数字を決めれば、達成できない月が出ます。そこで担当者を責める運用にすると、記録そのものが残らなくなります。

受注・失注の理由をマーケに戻す

情報の流れは一方通行ではありません。営業から戻す経路がなければ、リードの質は改善しません。

失注理由を自由記述で溜めても、読み返されないまま終わります。選択式の5〜7項目に絞り、補足を一言添える形式にします。

MQLの定義と引き渡しルールを自社の言葉に置き換えたい方へ。tovira ではBtoBの顧客接点設計をまとめた資料をご用意しています。資料をダウンロードする

リード情報をリアルタイムで共有する仕組みの作り方

リアルタイム共有とは、通知を速くすることではありません。営業がその場で判断できる情報を、判断できる形で届けることです。渡す情報は4点セットで考えます。

  • 誰が:会社名だけでなく、担当者個人まで特定する
  • 何を:閲覧したページ、ダウンロードした資料、視聴した動画の具体名
  • いつ:直近の行動の日時と、繰り返し訪問しているかどうか
  • どの温度で:価格や導入事例を見ているのか、技術資料を読み込んでいるのか

難しいのは「誰が」です。匿名のアクセス解析では個人を特定できません。企業単位までなら、IPアドレスから組織名を推定できます。tovira の匿名アクセスの企業単位分析は、この考え方です。

個人まで特定するには、ログインを前提としたチャネルが要ります。会員向けのポータルサイトを持ち、取引先にIDを発行しておく方法です。ログイン後の行動は、推定ではなく実名の記録になります。

製造業の場面で考えます。B社の設計担当者が、今週3回同じ製品の仕様書を開いた。この事実が翌朝に営業へ届けば、電話の一言目が変わります。

通知の設計では、条件・宛先・粒度の3点を決めます。条件を緩くすると通知が増え、営業は見なくなります。2条件の掛け合わせから始めます。

基盤全体の考え方はカスタマーポータルの基本と構築方法、行動の可視化と通知の連動は分析・通知機能で整理しています。

実装は4ステップで進める

順番を守ると、途中で止まりにくくなります。

  1. STEP1|良いリードを定義する(目安2週間/マーケ責任者・営業責任者):条件、除外条件、差し戻し条件を1枚にまとめ、双方の責任者が合意します
  2. STEP2|データを1本化する(目安1か月/情報システム・マーケ):リード情報の置き場所を1つに決め、会社名の表記ゆれを名寄せします
  3. STEP3|通知条件を決める(目安2週間/マーケ):どの行動を検知したとき、誰に知らせるかを決め、1日に届く件数を対応可能な水準に絞ります
  4. STEP4|週次で振り返る(継続/双方):30分の定例で、渡した件数、対応した件数、差し戻した件数を確認します
この順番を守ると、連携は運用として定着する マーケティングと営業の連携を実装する手順を左から右へ示した図。ステップ1は良いリードを定義する。ステップ2はリード情報のデータを1本化する。ステップ3は通知条件を決める。ステップ4は週次で振り返る。 1 良いリードを定義する 2 データを1本化する 3 通知条件を決める 4 週次で振り返る
図2:この順番を守ると、連携は運用として定着する

STEP2で完璧なデータ統合を目指すと、そこで数か月が過ぎます。名寄せは主要顧客の上位2割から始めて構いません。

連携がうまくいっているかを測る指標

MQL数だけを目標に置くと、質を落として件数を作る動機が生まれます。連携の状態は次の5つで見ます。

  • MQL→SQL転換率(渡したうち、営業が商談対象と認めた割合)
  • 初回接触までのリードタイム(受領から最初の連絡までの時間)
  • 未対応リード率(受領後に一度も接触されていない割合)
  • 失注理由の返却率(クローズした案件のうち理由が記録された割合)
  • 商談化率と受注率

なかでも未対応リード率には、連携の実態が表れます。数字が高いなら、定義が営業の実感と合っていない可能性を疑ってください。

前提として、記録が残る環境が要ります。HubSpotの調査では、日本企業の営業組織のCRM導入率は37.2%でした(HubSpot Japan|日本の営業に関する意識・実態調査2025)。指標を測る前に、記録の置き場を決める段階の組織も少なくありません。

よくある質問

営業とマーケティングの連携は、どの部門が主導すべきですか

どちらでも構いませんが、定義の合意だけは双方の責任者が同席して決めます。片方が作った定義を持ち込むと、運用開始後に差し戻しが増えます。

MAツールを導入すれば連携できますか

ツールはデータを流す配管です。何を良いリードと呼ぶか、誰がいつ対応するかは、ツールの外側で決めます。定義がないまま導入すると、通知だけが増えます。

インサイドセールスは必ず必要ですか

必須ではありません。ただしMQLとSQLの間で温度を確かめる役割は誰かが担います。専任を置けない場合、営業担当が受領後24時間以内に一次接触すれば代替できます。

少人数の組織でも連携の仕組みは必要ですか

人数が少ないほど、口頭で伝わるから不要だと考えがちです。しかし担当者が変わった瞬間に、判断基準は消えます。定義を1枚残すところまでは、規模を問わず価値があります。

まとめ|連携は仕組みで担保する

マーケと営業の連携は、関係づくりではなく設計の問題です。扱った内容を整理します。

  1. 連携が崩れる原因は、定義のズレ・情報の遅延・指標の分断・文脈の欠落の4つ
  2. 打ち手は定義の合意から始め、データの1本化、引き渡しルール、逆流の設計、振り返りの場と進める
  3. リアルタイム共有で渡すべきは、誰が・何を・いつ・どの温度で、の4点セット
  4. 未対応リード率と初回接触までのリードタイムを見れば、連携の実態が分かる

今週できることは1つです。

営業責任者と30分の枠を取り、「良いリードとは何か」を紙に書き出してください。顧客接点全体の設計はDCX(デジタル顧客体験)とはでも扱っています。

tovira のカスタマーポータルは、ログイン後の実名の行動データを起点に、マーケから営業への引き渡しを1つの基盤で扱います。自社の運用に合うかは、実際の画面でご確認ください。デモを依頼する

出典

  • Salesforce『【徹底解説】MQLとSQLの違いとは?定義から基準設定、部門連携強化で売上を最大化する方法』 salesforce.com(参照:2026-07-26)
  • Harvard Business Review『The Short Life of Online Sales Leads』 hbr.org(参照:2026-07-26)
  • PR TIMES(HubSpot Japan)『日本の営業に関する意識・実態調査2025の結果をHubSpotが発表』 prtimes.jp(参照:2026-07-26)
編集者:

中川 晃次

再生ファンド傘下の複数企業にて、マーケティングディレクターとして事業再生を牽引。戦略立案から実行まで一貫して手がけ、ECサイトにおいては売上前年比150%成長を5年連続で達成した実績を持つ。現在はマーケティングSaaS「tovira」の開発に加え、BtoB領域のマーケティングコンサルティングを通じて、企業の持続的な成長を支援している。

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