ローレンス・レッシグの『CODE』をBtoBマーケティングから読み直す
Lawrence Lessig's 4 Modalities
レッシグの「4つの規制手段」で
読み解くBtoBマーケティング戦略
「買ってください」と懇願するのではなく、
「この製品を選ぶのが当然」という状況を多角的に設計する。
インターネット法の権威ローレンス・レッシグが提唱した「人の行動を規定する4つの要素」。
このフレームワークを応用することで、複雑なBtoBの意思決定プロセスを攻略する「設計思考」のマーケティングが可能になります。
CODE VERSION 2.0
著者: ローレンス・レッシグ (Lawrence Lessig)
サイバー空間の自由を守るためには、法律だけでなく「コード(技術的設計)」が行動を縛る事実を理解すべきだと説いた名著。インターネットの構造そのものが「規制」として機能するという洞察は、現代のマーケティングにおける「仕組み化」の原点です。
書籍詳細を見る法 (Law)
Compliance
法律や規制、契約による強制力。BtoBでは「選ばないとリスクがある」状況を作る。
規範 (Norms)
Social Standard
社会的な常識や業界の文化。BtoBでは「みんなが使っている」という安心感を作る。
市場 (Market)
Rationality
価格や経済的インセンティブ。BtoBでは「投資対効果(ROI)」の正当性を作る。
構造 (Arch.)
Product Code
技術的・物理的設計。BtoBでは「一度使い始めたら離れられない」仕組みを作る。
BtoBマーケティングへの具体的な応用例
| 要素 | BtoBにおける狙い | 具体的なアクション |
|---|---|---|
| 法 (Law) | リスク回避・正当性 | 「当社製品は〇〇法・ISO認証に対応。未導入はコンプライアンス上のリスク」と訴求する。 |
| 規範 (Norms) | 安心感・社会的合意 | 「業界トップ企業の8割が導入。これが業界標準である」という空気感を醸成する。 |
| 市場 (Market) | ROI・財務的承認 | 「6ヶ月で投資回収が可能。人件費を〇%削減できる」ことをシミュレーションで示す。 |
| 構造 (Arch.) | 継続利用・ロックイン | 基幹システムとAPI連携し、業務フローに深く組み込むことでスイッチングコストを高める。 |
リスク回避・正当性
「当社製品は〇〇法・ISO認証に対応。未導入はコンプライアンス上のリスク」と訴求する。
安心感・社会的合意
「業界トップ企業の8割が導入。これが業界標準である」という空気感を醸成する。
ROI・財務的承認
「6ヶ月で投資回収が可能。人件費を〇%削減できる」ことをシミュレーションで示す。
継続利用・ロックイン
基幹システムとAPI連携し、業務フローに深く組み込むことでスイッチングコストを高める。
戦略の見直しチェックリスト
- 1 法:コンプライアンス担当者が「これは必須だ」と納得する材料があるか?
- 2 規範:業界の「定番」として認知されるための実績を見せられているか?
- 3 市場:CFOや財務部門を説得できる「具体的なROI」を数字で示せているか?
- 4 構造:使えば使うほど価値が上がり、他社への乗り換えが不合理な設計か?
レッシグの『CODE』が教えてくれるのは、良い結果を単に「命令」するのではなく、望ましい行動が自然に起きるように「環境を設計する」という思想です。
顧客に選ばれることを「願う」のではなく、顧客が選ばないことが「不自然」である状態を設計しましょう。
Tomorrow's 3 Actions
現状分析
自社の営業資料を4つの観点で分類し、どの要素が不足しているかを特定する。
競合分析
競合がどの要素(例:安さ=市場)で勝負しているかを知り、別の要素(例:法・構造)で差別化する。
統合施策の設計
4要素を組み合わせたキャンペーンを設計し、全ステークホルダーを納得させる。
突然ですが、人の行動を変えるには何が必要でしょうか?
アメリカの法学者ローレンス・レッシグは、人々の行動に影響を与える要素として「法(Law)」「規範(Norms)」「市場(Market)」「アーキテクチャ(Architecture)」の4つを提示しました。このフレームワークは本来、インターネット社会における規制のあり方を論じるために作られたものですが、実はBtoBマーケティングに驚くほど応用できます。
ローレンス・レッシグとは何者か
ローレンス・レッシグは、アメリカの法学者で、ハーバード大学ロースクールの教授です。彼の専門はインターネット法や著作権法ですが、ビジネスパーソンにとって重要なのは、彼が「人の行動を変える仕組み」について革新的な理論を提示したことです。
レッシグは、音楽や画像などを合法的に共有できる仕組み「クリエイティブ・コモンズ」の創設者としても知られています。また、インターネットの中立性を守る運動や、政治における資金の透明性を求める活動でも著名です。
つまり、彼は単なる学者ではなく、「社会の仕組みをどう設計すれば、人々により良い行動を促せるか」を実践してきた人物なのです。

『CODE』が明らかにしたこと
レッシグの代表作『CODE』(邦題:『CODE VERSION 2.0』)は2000年に初版が、2006年に改訂版が出版されました。この本のテーマは一言で言えば「インターネット空間における規制とは何か」です。
なぜ『CODE』は重要なのか
1990年代、インターネットが普及し始めた頃、多くの人は「ネット空間は自由で、誰も規制できない」と考えていました。しかしレッシグは、この楽観論に疑問を呈しました。
彼が指摘したのは、コード(プログラムやシステム設計)そのものが、最も強力な規制手段になるという事実です。
たとえば:
- Facebookで実名登録が求められるのは、法律ではなく「システムの設計」がそう決めているから
- スマホアプリで位置情報の許可を求められるのは、アプリの「設計」がそうなっているから
- あるWebサイトで特定の情報が見られないのは、アクセス制限という「コード」が働いているから
つまり、「何ができて、何ができないか」は、法律だけでなく、技術的な設計によって決まる、というのがレッシグの洞察です。
4つの規制手段という発見
レッシグは、人々の行動に影響を与える要素として以下の4つを提示しました:
- 法(Law):法律や規則による規制
- 規範(Norms):社会的な常識や文化による規制
- 市場(Market):価格や経済的インセンティブによる規制
- アーキテクチャ(Architecture):物理的・技術的な構造による規制
重要なのは、これらが独立して機能するだけでなく、組み合わせることでより強力になるという点です。
なぜBtoBマーケティングに応用できるのか
ここまで読んで、「インターネット規制の話が、なぜBtoB営業に関係するのか?」と思われたかもしれません。しかし、両者には本質的な共通点があります。
共通点1:「行動変容」がゴール
- レッシグの関心:人々のオンライン行動をどう導くか
- BtoBマーケティングの目的:顧客の購買行動をどう促すか
どちらも「人の行動を変える」ことがゴールです。レッシグが「どうすればネット上で著作権を守れるか」を考えたのと同様に、BtoBマーケターは「どうすれば顧客に自社を選んでもらえるか」を考えます。
共通点2:複数の要素が同時に働く
レッシグは、インターネット空間でも「法律だけ」「技術だけ」では問題は解決できないと指摘しました。同様に、BtoB購買でも:
- 製品が良いだけでは売れない(アーキテクチャだけでは不十分)
- 安いだけでは選ばれない(市場価格だけでは不十分)
- 実績があるだけでは決め手にならない(規範だけでは不十分)
- コンプライアンス対応だけでは差別化できない(法だけでは不十分)
複数の要素を組み合わせて初めて、顧客の意思決定に影響を与えられるのです。
共通点3:「設計」の重要性
レッシグの最大の洞察は、「良い行動を"命令"するのではなく、良い行動が自然に起きる"仕組み"を設計する」という発想でした。
これはBtoBマーケティングでも同じです。顧客に「買ってください」と懇願するのではなく、「この製品を選ぶのが当然」という状況を設計する。これこそが、戦略的マーケティングの本質です。
具体例で理解する
喫煙を減らす例で、4つの手段を振り返りましょう:
喫煙規制の場合
- 法:喫煙を法律で禁止、罰金
- 規範:「タバコは格好悪い」という社会的雰囲気
- 市場:タバコ税を上げて価格を高く
- アーキテクチャ:喫煙所そのものを減らす
BtoB購買の場合
- 法:「この製品を選ばないとコンプライアンス違反のリスク」
- 規範:「業界トップ企業はみんなこれを使っている」
- 市場:「ROIが明確で、経済的に合理的」
- アーキテクチャ:「既存システムと統合されていて、乗り換えが困難」
構造がまったく同じであることが分かります。
なぜ今、このフレームワークが有効か
BtoB市場では、購買の意思決定がますます複雑化しています:
- 関与者が増えている(現場担当者、上司、法務、財務、IT部門、経営層...)
- 検討期間が長期化している
- リスク回避志向が強まっている
単一の訴求ポイント(「安い」「高機能」「実績豊富」)だけでは、すべての関係者を納得させられません。レッシグの4つの視点は、多様なステークホルダーに対して、それぞれに響く価値を設計するための思考ツールになるのです。
4つの視点で考えるBtoBマーケティング
それでは、具体的に4つの手段をBtoBマーケティングに応用していきましょう。
1. 法(Law)=「選ばざるを得ない理由」を作る
ビジネスにおける「法」とは
BtoBの世界では、法律や規制、契約条件、業界ルールが購買の意思決定を大きく左右します。「コンプライアンス上、これを選ばないとまずい」という状況を作れれば、最強の競争優位になります。
実践例
トレンドマイクロのセキュリティ戦略
トレンドマイクロは、セキュリティソフトウェア市場において「法・規制対応」を強力な差別化要因としています。
- ISO27001認証取得企業向けに必要な機能を標準搭載
- GDPR、改正個人情報保護法への完全対応を訴求
- 監査法人との連携により「監査で指摘されないソリューション」としてポジショニング
特に金融機関や医療機関など、厳格なコンプライアンスが求められる業界では、「トレンドマイクロを選んでおけば規制対応は安心」という認識を確立しています。
AWSの金融業界向けクラウド戦略
Amazon Web Services(AWS)は、金融機関向けに規制対応を徹底したクラウドサービスを展開しています。
- 金融庁のクラウドガイドラインへの完全準拠
- 監査対応レポートの自動生成機能
- SOC1/SOC2レポートの提供
「金融機関が安心して使える」という訴求により、従来クラウドに慎重だった金融業界での導入を拡大しました。
なぜ効果的か
BtoB購買では、担当者は「失敗したくない」という心理が働きます。「法的・規制的に問題ない」という保証は、稟議を通す際の強力な武器になります。特に、法務部門やコンプライアンス部門を味方につけられれば、競合優位は揺るぎません。
今日からできること
- 自社製品・サービスが準拠している規格や認証を洗い出す
- 業界特有の規制要件をマーケティング資料に明記する
- 「導入しないことのリスク」を法的観点から説明する資料を作る
2. 規範(Norms)=「みんなが使っている」の力
ビジネスにおける「規範」とは
BtoB購買担当者は常に「業界の他社はどうしているのか?」を気にします。特に日本企業では「横並び」志向が強く、「先進企業が導入している」「業界標準になっている」という事実が、強力な購買動機になります。
実践例
Salesforceのエコシステム戦略
Salesforceは、CRM市場においてシェアNo.1を獲得し、「導入していないことがリスク」という空気を醸成することに成功しています。
- 「Fortune 500企業の90%以上が導入」という実績の訴求
- 年次イベント「Dreamforce」で業界リーダーが登壇し、ベストプラクティスを発信
- AppExchangeを通じたパートナーエコシステムの形成(3,000以上のアプリ)
- ユーザーコミュニティ「Trailblazer」による口コミ促進
導入企業には西松建設、パイオニア、SmartHRなど業種を問わず大手企業が名を連ね、「Salesforceを使っていることが先進的」という規範を作り出しています。
カオナビの人事評価システム市場での戦略
タレントマネジメントシステム「カオナビ」は、人事評価システム市場でシェアNo.1を獲得しました。
- 「導入実績4,000社以上」「ITR調査で人材管理ツールシェア1位」を前面に訴求
- 日清食品ホールディングス、リブセンスなど大手企業の導入事例を公開
- ユーザー同士が情報交換できる「カオナビキャンパス」を運営
- 業界別(製造業トップ10のうち7社が導入、など)の実績を具体的に提示
なぜ効果的か
「誰も首にならない選択」をすることが、BtoB購買の鉄則です。実績のある製品を選べば、仮に失敗しても「業界標準を選んだのだから仕方ない」と言い訳できます。逆に、無名の製品で失敗すれば、選定者の責任が問われます。
今日からできること
- 業界別・企業規模別の導入実績を整理し、見込み客に近い事例を見せる
- カスタマーサクセスストーリーを積極的に発信する
- ユーザーコミュニティやユーザー会を立ち上げ、「仲間意識」を醸成する
- 業界紙やメディアでの露出を増やし、「定番」としての認知を得る
3. 市場(Market)= 価格ではなく「経済合理性」で勝負
ビジネスにおける「市場」とは
価格は最もわかりやすい意思決定要因ですが、BtoBでは単純な「安さ」よりも「投資対効果」が重視されます。「この投資は回収できるのか?」「本当にコスト削減につながるのか?」という財務的な正当性が求められます。
実践例
UiPathのRPA導入ROI訴求
RPAツール大手のUiPathは、ROI(投資対効果)を数値で示すことで導入のハードルを下げています。
- Automation Hub機能でROI(投資収益率)を自動予測
- 「6ヶ月で投資回収可能」といった具体的な数字を提示
- カルビーの事例:年間1万6,000時間の業務削減を達成
- 日本通運の事例:年間341,567時間の業務削減(約18,000人の事務系業務をRPA化)
- 中外製薬の事例:全社規模で約3万時間の業務自動化を実現
CFO向けの資料を別途用意し、「人件費削減額」「エラー削減によるコスト削減」など、財務的な正当性を多角的に訴求しています。
freeeのクラウド会計SaaS戦略
クラウド会計ソフト「freee」は、初期投資のハードルを下げる価格モデルで市場を開拓しました。
- 初期費用ゼロ、月額従量課金モデル
- オンプレミス製品との総所有コスト(TCO)比較表を提供
- 「税理士費用削減シミュレーター」で経済効果を見える化
- 銀行口座との自動連携で「経理工数80%削減」を訴求
- 無料トライアル期間で実際の効果を体験させる
なぜ効果的か
BtoB購買では、現場担当者が「使いたい」と思っても、最終的には経営層や財務部門の承認が必要です。数字で示せない提案は、この段階で止まります。逆に、明確なROIを示せれば、価格が高くても通ります。
今日からできること
- 顧客が得られる具体的な経済効果を数値化する(工数削減、コスト削減、売上増など)
- 競合との比較を、初期費用だけでなくTCOで行う
- 「導入しないことのコスト」(機会損失)も計算に入れる
- スモールスタートできる価格プランを用意し、初期投資のリスクを下げる
4. アーキテクチャ(Architecture)=「抜けられない仕組み」を作る
ビジネスにおける「アーキテクチャ」とは
製品・サービスの設計や仕組みそのものが、顧客の行動を規定します。わかりやすく言えば、「一度使い始めたら、他社製品に乗り換えるのが大変」という状況を、プロダクト設計で作り出すことです。
これこそが、レッシグが『CODE』で最も強調した概念です。法律で禁止しなくても、システムの設計次第で特定の行動を不可能にしたり、逆に促進したりできます。
実践例
SalesforceのCRM/エコシステム戦略
Salesforceは、API連携とエコシステム構築により、圧倒的なスイッチングコストを構築しています。
- 主要な基幹システム(SAP、Oracle、各種MA等)との豊富なAPI連携
- MuleSoftの買収により、200種類以上の連携コネクターを提供
- AppExchangeに3,000以上のアプリが登録され、周辺機能も充実
- 蓄積された顧客データと商談履歴が独自フォーマットで、移行コストが高い
- 富士通の事例:MuleSoftでSAP S/4HANA、Salesforce、各種SaaSをリアルタイム連携
一度Salesforceを導入すると、周辺システムとの連携が進み、データも蓄積されるため、他社CRMへの乗り換えは実質的に困難になります。
サイボウズ kintoneの業務プラットフォーム戦略
サイボウズの「kintone」は、業務フロー全体に組み込まれる設計で継続利用を促しています。
- 申請・承認、案件管理、日報など、複数業務を統合
- 全社員が毎日使うツールになることで、変更の影響範囲が大きくなる
- CData Driversとの連携で、ETL/BIツールとのエコシステムを拡大
- ノーコードでカスタマイズ可能なため、各社独自の業務フローが構築される
企業ごとにカスタマイズされた業務フローが構築されるため、標準的な競合製品への移行が難しくなります。
なぜ効果的か
BtoBで最も重要なのは「継続利用」です。初期導入に成功しても、すぐに他社に乗り換えられては意味がありません。アーキテクチャレベルで「スイッチングコスト」を高めることで、長期的な顧客価値(LTV)を最大化できます。
ただし注意点として、顧客を「閉じ込める」だけでは信頼を失います。本質的な価値提供があった上で、結果的に乗り換えにくくなっている状態が理想です。
今日からできること
- 既存システムとの連携機能を強化し、エコシステムの一部になる
- データの蓄積により価値が高まる設計にする(使えば使うほど手放せなくなる)
- パートナープログラムを充実させ、周辺サービスとの連携を増やす
- ただし、データのポータビリティ(持ち出し可能性)も提供し、倫理的な配慮を忘れない
4つを組み合わせた実践戦略
ここまで4つの要素を個別に見てきましたが、レッシグが強調したように、真に強力なのはこれらを組み合わせた統合戦略です。
ケーススタディ:freeeのクラウド会計市場開拓戦略
背景:弥生会計、勘定奉行など大手がデスクトップ市場を寡占する中、後発のクラウドサービスとして参入
統合戦略:
- 法:電子帳簿保存法・インボイス制度への完全対応を訴求
- 税理士会と連携し、「法改正対応はfreee」という認識を広める
- 「法改正があるとアップデートが自動で行われる」という安心感を訴求
- 規範:中小企業経営者向けセミナーを全国で開催
- 「デジタル化が進んでいる経営者はfreeeを使っている」という印象形成
- 有料課金ユーザー企業数の拡大(2024年3月末時点で業界トップクラス)
- 導入企業による紹介制度で口コミを促進
- 市場:初月無料、月額課金でスモールスタート
- 税理士事務所との提携で、顧問先への導入をパッケージ化
- 「経理工数80%削減」「確定申告書類の自動作成」で経済効果を見える化
- 無料トライアルで「使ってみれば良さがわかる」体験を提供
- アーキテクチャ:銀行API、クレジットカード、POSレジとの自動連携
- 2,300以上の金融機関・サービスとの連携
- 数年分のデータが蓄積されると、他社への移行が実質的に困難に
- 税理士とのデータ共有機能で、関係者全体を巻き込む
- freee人事労務、freee会社設立など周辺サービスとの統合でエコシステム形成
結果:クラウド会計ソフト市場でシェアトップクラスを獲得し、中小企業向けバックオフィスSaaSのリーディングカンパニーに成長
自社戦略の見直しチェックリスト
以下の問いに答えることで、現在のマーケティング戦略の改善点が見えてきます:
法(Law)
- 業界の規制・ルールに対応していることを訴求しているか?
- コンプライアンス担当者を納得させる材料があるか?
- 「導入しないリスク」を説明できるか?
規範(Norms)
- 競合より多くの導入実績を示せるか?
- 業界で「標準」「定番」として認知されているか?
- 顧客コミュニティや口コミの仕組みがあるか?
市場(Market)
- ROI(投資対効果)を具体的な数字で示せるか?
- CFOや財務部門を説得できる資料があるか?
- スモールスタートできる価格設定か?
アーキテクチャ(Architecture)
- 他システムとの連携は十分か?
- 使い続けるほど価値が高まる設計か?
- 乗り換えコストを高める要素があるか(ただし倫理的に)?
まとめ:「設計思考」がマーケティングを変える
レッシグの『CODE』が教えてくれるのは、良い結果を「命令」するのではなく「設計」するという発想です。
BtoBマーケティングも同じです。顧客に「買ってください」と懇願するのではなく、「この製品を選ぶのが当然」という状況を、4つの側面から設計する。これこそが、戦略的マーケティングの本質です。
明日から始める3つのアクション
- 現状分析:自社の営業・マーケティング資料を4つの観点で分類してみる
- どの要素が弱いか?どこに偏っているか?
- 競合分析:競合他社が4つのうち、どの要素で勝負しているかを分析
- 彼らが使っていない要素があれば、そこが差別化ポイント
- 統合施策の設計:単一施策ではなく、4要素を組み合わせたキャンペーン設計
- 例:ホワイトペーパー(規範)→ Webinar(法+市場)→ 無料トライアル(市場+アーキテクチャ)
レッシグの4つの視点は、複雑化するBtoB購買プロセスを読み解くための強力な思考ツールです。ぜひ次回の戦略会議で、このフレームワークを使って議論してみてください。
参考文献
- ローレンス・レッシグ『CODE VERSION 2.0』(翔泳社)
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