操作説明の動画を10本つくったのに、初歩的な問い合わせが減らない。BtoB向けにSaaSやツールを提供する企業の担当者から、たびたび聞く話です。

原因は撮影や編集の質とは限りません。1本に情報を詰め込みすぎている、顧客が見る順番を示せていない、製品のUIが変わって内容が古い。つまずいているのは制作ではなく、設計のほうです。

チュートリアル動画は「何を・何本・どの尺でつくり、どう並べ、どう更新し続けるか」を先に決めると、オンボーディングの資産として機能し始めます。この記事では、カテゴリの割り方、1本の構成、視聴の順路、更新を止めない作り方の4点を扱います。

読み終えたときに、自社が最初に撮る3本が決まっている状態を目指します。

チュートリアル動画とは|操作を「読ませずに1周させる」動画

チュートリアル動画とは、顧客が製品を使い始めるときに、テキストを読まずに操作を一巡できるようにする短い動画です。対象は契約直後から数週間の顧客で、ゴールは製品の理解ではなく最初の作業を終わらせることにあります。

似た言葉と切り分けておきます。製品紹介動画は契約前の相手に価値を伝えるもので、訴求が主目的です。動画マニュアル(=作業手順を網羅的に記録した動画)は、必要なときに参照する辞書に近い存在です。チュートリアル動画はその中間にあり、網羅性より「顧客を詰まらせないこと」を優先します。

動画を手順の伝達に使う流れは、すでに社内業務で定着しています。Jストリームの調査では、企業内の動画活用先として教育・研修が45.7%、業務マニュアルが42.1%を占めました(Jストリーム|動画活用の有効性と今後の活用意向について)。同じ手法を顧客向けに転用したものが、チュートリアル動画です。

この位置づけが決まると、つくるべき本数と尺も決まってきます。

なぜ動画は見られなくなるのか

視聴されない動画には共通点があります。長いことです。

スタディストが、業務で動画マニュアルを利用した2,206名に聞いた調査があります。不満点の最多は「動画の時間が長い」で62.4%、倍速で視聴している人は約3割でした(スタディスト|第1回「動画マニュアル実態調査」)。

同じ調査で理想の長さを尋ねると、「5〜10分」が44.8%で最多になります。長さに不満を持ちながら、理想は5分以上と答える。この捻れが設計のヒントです。

視聴者が長いと感じるのは絶対的な尺ではなく、知りたい1点にたどり着くまでの待ち時間です。1本に5つの操作が入っていれば、4つ分は待ち時間になります。

本数を減らそうと1本にまとめると、かえって見られなくなります。

何を何本つくるか|4カテゴリで棚卸しする

チュートリアル動画の企画は、機能一覧を開くところから始めないでください。機能の数だけ動画をつくると、顧客が見るべき順番が消えます。起点に置くのは、顧客が契約後の1か月でやることです。

その作業を4つのカテゴリに割ると、つくる動画とつくらない動画が分かれます。初期設定編、基本操作編、活用編、管理者編の4つです。

4カテゴリに割ると、つくらない動画が決まる チュートリアル動画を4つのカテゴリに分類した図。初期設定編は契約直後に1回だけ見る動画。基本操作編は最初の1件を完了させる動画。活用編は自社の業務に組み込む動画。管理者編は権限とデータを管理する動画。 初期設定編 契約直後に1回だけ見る 基本操作編 最初の1件を完了させる 活用編 自社の業務に組み込む 管理者編 権限とデータを管理する
図1:4カテゴリに割ると、つくらない動画が決まる

4カテゴリごとに、顧客がやることと本数・尺の目安を並べました。

カテゴリ 顧客がやること 本数の目安 1本の尺
初期設定編 アカウント発行、権限付与、データ投入 2〜3本 60〜90秒
基本操作編 最初の1件を最後まで通す 3〜5本 90秒〜2分
活用編 自社の業務フローに組み込む 2〜4本 2〜3分
管理者編 権限設計、利用状況の確認 1〜2本 90秒〜2分

合計すると8〜14本です。ただし、全部そろってから公開する計画にすると、着手から半年が過ぎます。各カテゴリ1本ずつ、計4本を先に出すほうが現実的です。

最初の1本は「最初の1件を最後まで通す」

最初に撮るのは基本操作編です。請求管理のツールなら1通目の請求書を発行するまで、受発注のポータルなら1回目の注文を送信するまでを、切らずに1本で通します。

機能をひとつずつ紹介する動画では、顧客が自分の作業と結びつけられません。「この機能で何ができるか」ではなく「自分の仕事がここまで進む」と分かる形にします。

途中で管理者側の設定が必要になる場合は、その部分を初期設定編へ切り出します。1本の中で操作する人が入れ替わると、視聴者は自分に関係のない区間を飛ばすようになります。

残りの本数は、問い合わせの多い順に決める

2本目以降は、機能の数ではなく問い合わせの多さで決めます。直近3か月の問い合わせを内容ごとに分類し、件数の多い順に5件並べてください。

候補を絞る材料になるのは、次のような記録です。

  • 導入から30日以内に届いた問い合わせ
  • 電話やオンライン会議で、説明に5分以上かかった内容
  • ヘルプ記事があるのに、それでも聞かれている項目
  • 担当者が画面共有で毎回見せている操作
  • 解約した顧客が、最後に詰まっていた箇所

3つ目が特に効きます。テキストがあるのに聞かれる操作は、文章では伝わらない操作だという証拠です。問い合わせ全体を減らす考え方は問い合わせを減らす方法で整理しています。

尺と構成|1本1目的に割ると、更新も楽になる

尺を先に決めないでください。「1本5分以内」と上限だけを置いても、その5分に3つの操作が入っていれば、顧客が探す手間は変わりません。決めるのは目的の数です。1本につき目的は1つ。そう割った結果として、多くは90秒から3分に収まります。

1本の中身は、次の4ブロックで構成します。

4ブロックに割れば、90秒でも伝わる チュートリアル動画1本の構成を左から右へ示した図。ブロック1はできることを10秒で言う。ブロック2は前提の画面をそろえる。ブロック3は操作を実画面で見せる。ブロック4は次の動画へつなぐ。 1 できることを10秒で言う 2 前提の画面をそろえる 3 操作を実画面で見せる 4 次の動画へつなぐ
図2:4ブロックに割れば、90秒でも伝わる

冒頭の10秒で「この動画を見ると何ができるか」を言い切ります。ここを飛ばすと、顧客は自分向けの動画かどうかを判断できません。続いて前提の画面をそろえます。どの画面から始めるのか、どの権限が必要なのかを示す区間です。本編では操作を実画面のまま見せ、最後に次に見る動画を案内して閉じます。

動画だけで完結させない設計も要ります。先のスタディスト調査では、81.6%が「動画と画像を組み合わせたマニュアル」を希望しました。動画で流れをつかみ、手が止まったら静止画の手順書に戻る。この2段構えが、実際の使われ方に近い形です。動画とテキストを同じ場所に置く運用は、マニュアル機能のような仕組みで実現できます。

割りすぎたときの副作用も押さえます。

  • 前後の文脈が消え、顧客が「今どこにいるのか」を見失う
  • 1つの業務が3本以上に分かれ、再生のたびに探す手間が生まれる

対策は単純です。全体の流れを示す30秒の動画を、先頭に1本だけ置きます。

見る順番を設計する|動画は並べ方で完了率が変わる

8本つくっても、顧客が1本目を選べなければ0本と同じです。並べ方の原則は1つ、カテゴリ順ではなく顧客の作業順にすることです。

制作側はカテゴリ単位で管理したくなります。ただ、顧客が知りたいのは「今日、何から手をつけるか」です。「初日に見る3本」「1週目に見る3本」というパックにして、順路として提示してください。

配布のしかたも見直す価値があります。メールに個別のリンクを貼って送る運用では、次の4点が分かりません。

  • 誰が見たのか
  • どこまで見て離脱したのか
  • まだ見ていない顧客は誰か
  • どの動画が繰り返し再生されているか

顧客がログインする1か所に集約すると、この4点が記録として残ります。例えばtoviraの動画・セミナー機能では、誰がどの動画をどこまで見たかを視聴履歴として保持し、顧客ごとのタイムラインに統合する考え方をとっています。会員制サイトに情報を集める構成そのものは、カスタマーポータルとはで解説しています。

動画とFAQは代替関係ではありません。つまずいた瞬間の即答はFAQの役割で、その設計はFAQサイトの作り方にまとめています。

ロール別に「見せる本数」を変える

管理者と一般利用者に同じ12本を見せると、どちらも見なくなります。一般利用者には基本操作編の3本だけを表示し、管理者編は管理者権限のアカウントにだけ出します。ロールでの出し分けは、動画を減らさずに「その人に見える本数」だけを減らす手段です。

現場の利用者が増えるほど、この差は効いてきます。

動画とマニュアルを会員限定で配信する構成は、資料にまとめています。自社のオンボーディングに当てはめてご検討ください。資料をダウンロードする

更新を回す仕組み|撮り直しを前提に作る

チュートリアル動画の運用が止まる理由は、だいたい2つです。製品のUIが変わって画面が合わなくなること、そして制作した担当者が異動していなくなることです。

動画はいつか撮り直すものだ、と前提を置き換えてください。

そのうえで、撮り直しのコストを下げる作り方があります。

  • ナレーションの音声を入れず、テロップで説明する
  • 1本1目的にして、差し替える範囲を1本に閉じる
  • 画面録画の元データとテロップの原稿を共有ドライブに残す
  • 日付やバージョン番号を画面に映さない

1つ目は迷いやすい点です。ナレーションは分かりやすさに効きますが、文言をひとつ直すだけで録り直しが要ります。更新頻度の高い操作画面はテロップ主体にし、変わりにくい概要説明にだけ音声を入れる。この使い分けが扱いやすい形です。

棚卸しは四半期に1度で足ります。優先して直すのは、再生されているのに途中で止まっている動画です。視聴やダウンロードといった行動を顧客ごとに集計する仕組みがあれば、この判断は数分で終わります(分析・通知機能)。

内製と外注の分け方

判断軸は品質ではなく更新頻度です。UI変更が起きやすい操作画面は内製に寄せ、当面変わらない製品概要や導入事例は外注に出す。この線引きが運用を軽くします。外注するときは、編集用の元データを納品対象に含める契約にしてください。

よくある質問

チュートリアル動画の長さはどのくらいが適切ですか

尺から決めるのではなく、1本の目的を1つに絞ってください。その結果として、90秒から3分に収まることが多くなります。5分を超えるものは、目的が複数混ざっている可能性の高い動画です。

チュートリアル動画は何本くらい必要ですか

初期設定編・基本操作編・活用編・管理者編の4カテゴリで、最終的に8〜14本が目安です。最初は各カテゴリ1本ずつの計4本で公開し、問い合わせの多い順に足していく進め方なら続きます。

ナレーションは入れたほうがよいですか

更新頻度で判断します。操作画面はUI変更のたびに録り直しが発生するため、テロップ主体が扱いやすい形です。当面変わらない概要説明であれば、音声を入れても運用の負担は増えにくくなります。

内製と外注はどちらを選ぶべきですか

両方を使い分けます。変わりやすい操作画面は画面録画で内製し、製品概要や事例紹介は外注に出す形です。外注する際は、編集用の元データを納品物に含めておくと、後の修正を自社で行えます。

動画が見られているかを確認する方法はありますか

会員がログインする自社サイトに動画を置くと、誰がどこまで再生したかを記録できます。メール添付や共有リンクでの配布では視聴の有無が追えず、次に撮る動画の判断材料も残りません。

まとめ|まず3本から始める

チュートリアル動画は、撮り方より割り方で成果が変わります。この記事で扱った手順を整理します。

  1. 顧客が契約後の1か月にやることを、4カテゴリに割る
  2. 各カテゴリ1本ずつ、まず4本を公開する
  3. 1本1目的にして、冒頭10秒で「できること」を言い切る
  4. 四半期に1度棚卸しし、途中で止まっている動画から直す

すべてを一度にそろえる必要はありません。次のアクションとして、直近3か月の問い合わせを5件並べてみてください。そのうち、担当者が画面共有で説明しているものが1本目の候補です。

toviraのカスタマーポータルは、動画の視聴記録をロール別の出し分けと同じ基盤で取得します。誰がどの動画をどこまで見たかを、実際の画面でご確認ください。デモを依頼する

出典

  • 株式会社スタディスト『第1回「動画マニュアル実態調査」 3割がマニュアルを倍速視聴/8割が動画と画像を組み合わせたものを希望』 prtimes.jp(参照:2026-07-26)
  • 株式会社Jストリーム『[2023調査]動画活用の有効性と今後の活用意向について』 stream.co.jp(参照:2026-07-26)
  • tovira『動画・セミナー機能』 tovira.jp(参照:2026-07-26)
  • tovira『マニュアル機能』 tovira.jp(参照:2026-07-26)
  • tovira『分析・通知機能』 tovira.jp(参照:2026-07-26)
編集者:

中川 晃次

再生ファンド傘下の複数企業にて、マーケティングディレクターとして事業再生を牽引。戦略立案から実行まで一貫して手がけ、ECサイトにおいては売上前年比150%成長を5年連続で達成した実績を持つ。現在はマーケティングSaaS「tovira」の開発に加え、BtoB領域のマーケティングコンサルティングを通じて、企業の持続的な成長を支援している。

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