01

商談に使えるのは「何件」ではなく「誰が何をしたか」

同じ行動データでも、2つの型は用途がまったく違います。

TYPE A

集計型

ページごとの閲覧数、資料ごとのダウンロード件数。全体を合計した数値です。

使いどころ:サイトのどこを直すかを決める

TYPE B

個人紐づけ型

「A社の設計担当が、技術仕様書を今週2回開いた」という粒度で残る履歴です。

使いどころ:明日どこへ連絡するかを決める

個人紐づけ型は、顧客がログインする場所を用意して初めて取れます。会員サイトが、その置き場になります。

02

営業が会えた時点で、勝負の前半は終わっている

だからこそ、会う前に何が起きていたかを読む価値があります。

85%

初回面談の前に、候補を絞り終えている

うち29%は「ほぼ決まっている」と答えています。

約40%

営業が接触した時点で、検討はここまで進む

年間300万円以上の大きな買い物でも同じ傾向です。

03

同じ1回でも、行動の種類で重みは変わる

左から右へ、検討の終盤に近づきます。すべてを同じ点数で扱わないことが出発点です。

ページ閲覧

関心の「範囲」が分かる

どの製品を見て、価格や導入条件まで踏み込んでいるか。

資料ダウンロード

社内共有の準備に入った

手元に残す形を求めている、というサインです。

動画視聴

理解の「深さ」が分かる

文章より時間のかかる形式を、あえて選んでいます。

製品比較

候補の絞り込みに入った

他社と並べる作業をしている、最も終盤の行動です。

閲覧だけを積み上げても、検討度は高くない。競合の調査担当や学生も同じ動きをします。判断の主軸には置きません。

04

資料は「どれを」、動画は「どこまで」で読み分ける

1件を1件として数えるのは、もったいない扱いです。

資料に「段階のタグ」を付けて管理する

入口

会社紹介・製品概要

検討

導入事例・比較資料

評価

価格表・技術仕様書

同じ1件でも、下にいくほど「社内で説明や検証を始めた合図」に近づきます。

動画は再生数ではなく、視聴の深さを見る

冒頭30秒で離脱

興味の段階

操作デモを最後まで視聴

導入後を想像している

この2つを同じ「再生1回」として数えると、いちばん濃い顧客が埋もれます。視聴ログが個人に紐づくかを確認しておきます。

05

行動を「誰が・いつ・何をする」に変換する

データが使われない原因は分析力ではなく、この対応表がないことです。自社の商材に合わせて中身を入れ替えて使えます。

価格・見積依頼ページを閲覧

当日中

予算の検討に入った

営業

担当者名で個別に連絡し、条件を確認する

導入事例をダウンロード

翌営業日

社内説明の材料を集めている

インサイドセールス

同じ業種の事例を追加で送る

技術仕様書をダウンロード

2営業日

技術部門が評価を始めた

営業+技術担当

技術者が同席する打ち合わせを打診する

操作デモ動画を最後まで視聴

翌営業日

導入後の運用を具体化している

インサイドセールス

個別デモを案内する

製品比較ページを複数回閲覧

当日中

他社と並べて絞り込んでいる

営業

比較の観点を聞き、違いを説明する

「いつ」を表に入れておくのがポイント。「そのうち連絡する」では、顧客の検討が先に進みます。

06

つまずくのは、だいたいこの5つ

運用を始めて2〜3か月で表面化します。

通知が多すぎて、営業が見なくなる

最初は週に数件届く水準まで絞ります。

社名までしか分からない

担当者にたどり着けず、誰に連絡するかが決まりません。

同意と利用目的の明示が抜けている

会員登録時に、履歴を営業活動に使う旨を示します。法務部門への確認が安全です。

行動が起きる場所が足りない

見るもの・落とすもの・観るものを揃える工程が先に要ります。

マーケと営業でデータの定義が食い違う

「関心が高い」の意味がずれると、通知は無視されます。何点以上を対象にするかを、一度合意しておきます。

SUMMARY

覚えておく3つの原則

4種類すべてを同時に扱おうとすると、立ち上がる前に止まります。まず1つに絞ってください。

数ではなく、名前で見る

合計の件数からは、明日どこへ行くかは出てきません。

変換ルールを先に決める

「この行動を見たら、誰が、いつ、何をする」を紙に書く。

1本だけ回して広げる

最も検討度が高い行動を1つ選び、通知を1本から始める。

「先月の資料ダウンロードは42件でした」。月次報告でそう伝えたところ、営業部長から「で、どこに行けばいいんですか」と返された。BtoB企業のマーケティング担当者から、よく聞く話です。

数を数える分析と、行動を読み解く分析は別物です。件数はコンテンツの良し悪しを測る材料になります。ただ、営業が明日動く理由にはなりません。必要なのは「どの会社の誰が、何を見たか」という粒度です。

この記事では、顧客の行動データ活用を、閲覧・資料ダウンロード・動画視聴・製品比較の4種類に分けて解説します。それぞれから何を読み取り、どの営業アクションに変換するかまで扱います。

読み終えたときに、自社で最初に着手すべき行動が1つに絞れている状態を目指します。

顧客の行動データとは|見た数ではなく「誰が何をしたか」

顧客の行動データ(=顧客がWeb上で取った操作の記録)とは、ページを開いた、資料を落とした、動画を再生した、といった履歴です。BtoBでは、これを2つの型に分けると整理がつきます。

  • 集計型:ページ別のPV数、資料別のダウンロード件数など、全体を合計した数値。施策の良し悪しを判断するために使う
  • 個人紐づけ型:会員IDに紐づいた履歴。「A社の設計担当・佐藤様が、技術仕様書を今週2回開いた」という粒度で残る。個別の営業アクションを決めるために使う

この2つは目的が違います。集計型を細かく見ても、営業が誰に連絡すべきかは出てきません。逆に個人紐づけ型だけでは、サイト全体のどこを直すべきかが分かりません。

商談化を目的にするなら、必要なのは後者です。

個人紐づけ型のデータは、顧客がログインする場所を用意して初めて取得できます。取引先向けの会員サイトやカスタマーポータルが、その置き場になります。

行動データが商談化を左右する理由

営業との初回面談前に、購買先候補を絞り込んでいる企業は85%にのぼります。ワンマーケティングの「BtoB購買プロセス白書2025」による数字です(syncAD|BtoB購買プロセス白書2025)。うち29%は「ほぼ決まっている」と回答しています。

年間契約金額300万円以上の大型購買でも、傾向は同じです。営業が接触した時点で、購買プロセスは平均約40%進んでいたという調査があります(PR TIMES|BtoB大型購買の実態調査)。

営業が会えた時点で、勝負の前半は終わっています。前半に何が起きていたかを知る手がかりが行動データ。顧客が自力で情報を集める体験の設計は、DCX(デジタル顧客体験)とはで扱っています。

商談化に効く行動は4種類|閲覧・ダウンロード・視聴・比較

行動データを活用するときは、すべての操作を同じ重みで扱わないことが出発点です。BtoBの検討プロセスで意味を持つ行動は、大きく4種類に分かれます。

  • ページ閲覧:関心の「範囲」が分かる。どの製品カテゴリを見て、価格や導入条件まで踏み込んでいるか
  • 資料ダウンロード:社内共有の準備に入ったサイン。手元に残す形式を求めている
  • 動画視聴:理解の「深さ」が分かる。文章より時間のかかる形式を選んでいる
  • 製品比較:候補の絞り込みに入った段階。他社と並べる作業をしている
同じ1回でも、行動の種類で検討度の重みは変わる 商談化に効く顧客の行動を4種類に分類した図。ページ閲覧からは関心の範囲が分かる。資料ダウンロードは社内共有の準備を示す。動画視聴からは理解の深さが分かる。製品比較は絞り込みの段階に入ったことを示す。 ページ閲覧 関心の範囲が分かる 資料ダウンロード 社内共有の準備が始まる 動画視聴 理解の深さが分かる 製品比較 絞り込みの段階に入った
図1:同じ1回でも、行動の種類で検討度の重みは変わる

この4つで終盤に近いのは製品比較です。比較ページを繰り返し見ている顧客は、社内でどれを選ぶかの議論に入っています。

一方、ページ閲覧だけを積み上げても検討度が高いとは限りません。競合の調査担当や就職活動中の学生も、同じ動きをします。閲覧は関心の方向を知る材料に留め、判断の主軸には置かない。取り違えると、点数は高いのに商談にならないリストができます。

ダウンロードは「どの資料か」で意味が変わる

同じ1件でも、資料の種類で示す段階が違います。会社紹介や製品概要は情報収集の入口。対して価格表・導入事例・技術仕様書は、社内で説明や検証を始めた合図と読めます。

実務では、資料ごとに「入口/検討/評価」の段階タグを付けます。ダウンロード・資料配布機能のように会員限定で配布する仕組みなら、誰がどの段階の資料を取ったかまで残せます。

動画は再生数ではなく、どこまで見たかを見る

冒頭30秒で離脱した再生と、10分の操作デモを最後まで見た再生を、同じ1回として数えるのは惜しい扱いです。視聴完了は、導入後の使い方を具体的に想像している状態を示します。

動画・セミナー機能を会員向けに使う場合は、視聴ログが個人に紐づくかを確認しておきます。

行動を営業アクションに変換する

行動データが使われない原因は、分析力の不足ではありません。「この行動を見たら、誰が、いつ、何をするか」が決まっていないことです。

下の表は、行動と営業アクションの対応を組んだ例です。自社の商材に合わせて中身を入れ替えて使えます。

トリガーとなる行動 読み取れる状態 担当 アクション 目安タイミング
価格・見積依頼ページを閲覧 予算の検討に入った 営業 担当者名で個別に連絡し、条件を確認する 当日中
導入事例をダウンロード 社内説明の材料を集めている インサイドセールス 同業種の事例を追加で送る 翌営業日
技術仕様書をダウンロード 技術部門が評価を始めた 営業+技術担当 技術者同席の打ち合わせを打診する 2営業日以内
操作デモ動画を最後まで視聴 導入後の運用を具体化している インサイドセールス 個別デモを案内する 翌営業日
製品比較ページを複数回閲覧 他社と並べて絞り込んでいる 営業 比較観点を聞き、差分を説明する 当日中

タイミングを表に入れておくのがポイントです。「そのうち連絡する」では、顧客の検討が先に進みます。

行動データを商談につなげる4ステップ

行動データの活用は、取得・重み付け・通知・修正の4段階で立ち上げます。各段階の担当部門と所要の目安を添えます。

  1. STEP1:取得できる状態を作る(情報システム+マーケティング/目安1〜2か月)。顧客がログインする場所を用意し、会員IDに行動を紐づけます。実名で追いたい資料や動画は、会員限定側に置きます
  2. STEP2:行動に重みを付ける(マーケティング+営業企画/目安2週間)。前章の4種類に点数を割り当てます。比較や技術資料を重く、概要資料の閲覧を軽く置くのが基本形です
  3. STEP3:閾値を超えたら通知する(マーケティング/目安1週間)。合計点が基準を超えた顧客を、営業が日常的に見ている場所へ知らせます
  4. STEP4:結果を見て重みを直す(マーケティング+営業/月次)。通知した案件が商談になった割合を確認し、受注顧客の行動から逆算して配点を組み直します
通知まで設計して初めて、行動データは商談に変わる 行動データを商談につなげる手順を左から右へ示した図。ステップ1は行動を取れる場所を作る。ステップ2は行動に重みを付ける。ステップ3は閾値を超えたら通知する。ステップ4は配点を月次で見直す。 1 行動を取れる場所を作る 2 行動に重みを付ける 3 閾値を超えたら通知する 4 配点を月次で見直す
図2:通知まで設計して初めて、行動データは商談に変わる

この一連を1つの基盤で回す例が、tovira の分析・通知機能です。会員のページ閲覧・資料ダウンロード・動画視聴・製品比較を行動ダッシュボードで集計し、行動の種類と頻度から検討度を点数化。重み付けは自社で設定でき、熱量が閾値を超えると担当者へリアルタイムに通知が飛びます。通知先はSlackやwebhook、CRMのタイムラインへの自動記録にも対応。条件とアクションを組み合わせたアラートルールは、ノーコードで設定できます。

通知は「誰に、いつ、何をするか」まで決める

通知を出すこと自体は目的ではありません。受け取った担当者が次の30分で何をするかまで決めて、初めて仕組みとして機能します。通知文に「対象者名・見たコンテンツ・推奨アクション」を含めると、受け手が迷いません。

配点そのものの組み方は、それだけで一つの設計テーマです。行動・属性・文脈を分けて評価する3次元スコアリングの考え方も参考になります。

行動データの取得から通知までを自社の体制で回せるか、確かめたい方へ。tovira ではカスタマーポータルの機能一覧をまとめた資料をご用意しています。資料をダウンロードする

つまずく5つの落とし穴

失敗は、だいたい似た形をしています。運用開始から2〜3か月で表面化する5つです。

  • 通知が多すぎて、営業が見なくなる:閾値を低くしすぎると1日に何十件も飛びます。最初は週に数件届く水準まで絞ります
  • 社名までしか分からない:IPアドレスからの企業判別では、担当者個人にたどり着けません。誰に連絡するかが決まりません
  • 同意と利用目的の明示が抜けている:会員登録時に、行動履歴を営業活動に使う旨を示します。個人情報保護法では利用目的の特定と通知・公表が求められます(個人情報保護委員会|法令・ガイドライン等
  • 行動が起きる場所が足りない:会員向けコンテンツが数本では、データは溜まりません。見るもの・落とすもの・観るものを揃える工程が先に要ります
  • マーケと営業でデータの定義が食い違う:「熱量が高い」の意味がずれると、通知は無視されます。何点以上を対象とするかを、両者で1度合意しておきます

3つ目は法令が関わるため、設計段階で法務部門に確認しておくのが安全です。

よくある質問

顧客の行動データにはどんな種類がありますか

ページ閲覧、資料ダウンロード、動画視聴、製品比較、検索、フォーム入力などがあります。商談化を目的にするなら、検討段階を読み取りやすい前の4つから着手すると整理しやすくなります。

行動データはどうやって取得しますか

一般のアクセス解析ツールで取れるのは、匿名の集計データが中心です。実名で追うには、顧客がログインする会員サイトやカスタマーポータルを用意し、会員IDに行動を紐づける必要があります。

資料をダウンロードした顧客には、いつ連絡すべきですか

資料の種類で変えます。価格表や技術仕様書のように段階が進んだ資料なら当日から翌営業日、会社紹介などの入口資料なら、次の行動を待つ判断もあります。

行動データの活用にMAツールは必須ですか

必須ではありません。MAツール(=見込み客の育成を自動化するツール)は匿名リードの育成に強みがあります。実名の会員行動を扱うなら、ポータル側の分析・通知機能で完結する構成もあります。

行動データを用意しても営業が使ってくれません

見せ方ではなく、アクションが定義されていないことが原因の場合が多くあります。「この行動を見たら、誰が、いつ、何をするか」を営業と一緒に決め、対象を絞った通知から始めてください。

まとめ|まず1つの行動に絞って通知を回す

顧客の行動データ活用は、分析の高度化から始める必要はありません。4種類すべてを同時に扱おうとすると、立ち上がる前に止まります。最も検討度が高い行動を1つ選び、通知とアクションを1本だけ回すところから始めてください。

  1. 行動データには集計型と個人紐づけ型があり、商談化に使えるのは後者
  2. 意味を持つ行動は閲覧・ダウンロード・視聴・比較の4種類で、重みが違う
  3. 「この行動を見たら、誰が、いつ、何をするか」の変換ルールを先に決める
  4. 取得・重み付け・通知・修正の4ステップで立ち上げ、月次で配点を直す

tovira のカスタマーポータルは、会員の閲覧・ダウンロード・視聴を実名で記録します。検討度が閾値を超えると、担当者へ通知が届きます。自社のコンテンツで何が見えるかは、実際の画面でご確認ください。デモを依頼する

出典

  • syncAD(シンクアド)『企業の購買行動、営業面談前に85%が候補を選定。高額取引ほどプロセスは複雑化・長期化』 syncad.jp(参照:2026-07-26)
  • PR TIMES(株式会社IDEATECH)『【BtoB大型購買の実態調査】営業接触前に購買プロセスの約4割が完了』 prtimes.jp(参照:2026-07-26)
  • 個人情報保護委員会『法令・ガイドライン等』 ppc.go.jp(参照:2026-07-26)
  • tovira『分析・通知機能』 tovira.jp(参照:2026-07-26)
最終更新日:2026-08-04
編集者:

中川 晃次

再生ファンド傘下の複数企業にて、マーケティングディレクターとして事業再生を牽引。戦略立案から実行まで一貫して手がけ、ECサイトにおいては売上前年比150%成長を5年連続で達成した実績を持つ。現在はマーケティングSaaS「tovira」の開発に加え、BtoB領域のマーケティングコンサルティングを通じて、企業の持続的な成長を支援している。

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