紙のカタログをPDFにして、自社サイトに置いた。それなのに「あの製品の仕様はどこですか」という問い合わせが減らない。製造業や卸売業のWeb担当者から、よく聞く話です。

原因は公開していないことではありません。カタログが1枚のファイルのままで、データになっていないためです。型番でもスペックでも絞り込めません。検索エンジンから見ても、1つのURLに数十製品が詰まった塊にしか見えません。

この記事で扱うのは、製品カタログのWeb化を「PDFを置く」で終わらせないための設計手順です。4方式の比較、絞り込み軸の決め方、URL設計、Product構造化データの4点。

読み終えたときに、情報システム部門や制作会社へ渡す設計方針が決まっている状態を目指します。

Webカタログとは

Webカタログとは、製品情報を1件ずつデータとして持ち、Web上で検索・絞り込みできる形にしたものです。紙・PDF・電子ブックとの違いは見た目ではありません。1製品が1レコードとして独立し、固有のURLを持っているかどうかです。

この単位が取れていれば、型番での検索も、耐熱温度での絞り込みも、検索エンジンへの登録も成り立ちます。取れていなければ、どれも成立しません。

背景にはBtoB取引そのもののデジタル化があります。経済産業省の令和6年度調査では、国内のBtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%と公表されました(経済産業省の電子商取引に関する市場調査)。取引先が自分で情報を取りに来る前提が広がっています。

カテゴリ全体の位置づけはカスタマーポータルとはで整理しています。

PDFを置くだけでは、検索の入口にならない

PDFカタログの公開が無駄なわけではありません。ただし、それだけでは「探せる」状態になりません。困る相手は4つです。

  • 社内の営業担当:客先で該当ページを開くまでに時間がかかる
  • 取引先の設計・購買担当:型番は分かるのに、どのPDFにあるか分からない
  • 検索エンジン:1つのURLに数十製品が入り、個別の型番クエリと合いにくい
  • 自社のWeb担当:どの製品が何回見られたかを製品単位で計測できない

PDFは配布物であって、データベースではありません。

更新も厄介です。改訂のたびにファイルごと差し替えるため、旧版のURLが取引先のブックマークに残ります。廃番品の仕様書が数年後まで参照される事故も起きます。

製造業がWebから引き合いを取る全体設計は、製造業のWebリード獲得で扱っています。

【比較表】カタログをWeb化する4つの方式

製品カタログのWeb化には、大きく4つの方式があります。選ぶ基準は、製品点数と改訂の頻度です。

製品数が増えるほど、選べる方式はデータベース型に寄る カタログをWeb化する4方式を並べた図。PDF直リンク型は探せず測れない。電子ブック型はめくれるが検索エンジンに拾われにくい。個別ページ手作り型は製品数が増えると運用が回らない。データベース型は絞り込みとSEOの両方が効く。 PDF直リンク型 探せず、測れない 電子ブック型 めくれるが拾われない 個別ページ手作り型 増えると回らない データベース型 絞り込みとSEOが効く
図1:製品数が増えるほど、選べる方式はデータベース型に寄る

4方式が何を得意とし、どこで詰まるかを横並びにしました。

方式 検索性 SEOの効き方 更新運用 向く製品点数
①PDF直リンク型 低い。ファイル内検索のみ ファイル単位でしか拾われない ファイル差し替え。旧版が残る 〜20点
②電子ブック型 低い。ページ送りが中心 本文がテキストとして拾われにくい 変換のたびに再アップロード 〜50点
③個別ページ手作り型 中程度。ページ単位で到達可 製品ごとにインデックスされる 点数に比例して工数が増える 〜100点
④データベース型 高い。絞り込みと全文検索 一覧・詳細の両方で入口を作れる 項目を直す。CSVで一括更新 50点〜

製品点数が50点を超え、年に複数回の改訂があるなら、④のデータベース型を選んでください。①〜③は、点数が増えた段階で作り直しが視野に入ります。

ただし④には前提があります。製品情報が項目ごとに分解され、型番の表記が揃っていることです。整備前に器だけ導入すると、移行段階で止まります。

検索性を左右するのは絞り込み軸|顧客の探し方から逆算する

絞り込み軸は、自社の商品分類から作らないでください。顧客が探すときに使う言葉から逆算します。

社内の分類は、製造ラインや事業部の都合で決まっています。顧客はその事情を知りません。シリーズ名で並ぶカタログを、用途とサイズで探しに来ます。

軸は5〜7本が扱いやすい範囲です。超える項目は詳細ページの仕様表へ回します。例えばtoviraの製品登録機能では、項目を自由に組み合わせてスペック表を構成できます。

軸の決め方は「問い合わせの文面」を並べるところから

材料は社内にあります。営業へ届いた問い合わせメール、サイト内検索のクエリログ、見積依頼書の記載項目です。

「耐熱120度以上で、フランジ接続の口径50Aはありますか」。この一文を分解すると、耐熱温度・接続方式・口径の3軸が出ます。30〜50件ぶん繰り返すと、軸は収束します。

担当は営業とWeb担当の合同、所要は半日から1日が目安です。

全文検索と絞り込みは、担う役割が違う

2つの機能は、想定する読者が違います。

  • 全文検索:型番や製品名が分かっている人向け。関連度でスコアリングして並べ替える
  • 絞り込み:要件しか決まっていない人向け。条件を足しながら候補を狭める

どちらか一方では取りこぼしが出ます。

結果が0件のときの受け皿も決めます。条件を1つ外した候補を出すか、問い合わせ導線を置いてください。会員限定の項目があるなら、ユーザーロール機能で項目単位の表示制御ができるかも確認します。

絞り込み軸の作り方から公開までの流れを、1冊にまとめた資料をご用意しています。資料をダウンロードする

絞り込み検索のURL設計|どこまでインデックスさせるか

絞り込みを付けた瞬間、URLは組み合わせの数だけ増えます。5軸それぞれに5つの値があれば、掛け合わせは数千パターンです。

この仕組みをファセットナビゲーション(=複数条件を掛け合わせて絞り込むナビゲーション)と呼びます。Googleのファセットナビゲーション解説にURLパラメータの持たせ方が案内されています。押さえる点は4つです。

  1. パラメータは?key=value&でつなぐ標準形式にする
  2. カンマや括弧など独自の区切り文字に条件を詰め込まない
  3. 同じ条件なら、パラメータの並び順を常に同じにする
  4. 値の表記(大文字小文字、全角半角)を統一する

表記や順序が揺れた分だけ、クロールバジェット(=検索エンジンが巡回に割く量)が重複ページに消えます。

インデックスさせる組み合わせを先に決める

すべての絞り込み結果を登録させる必要はありません。方針を3つに分け、軸ごとに割り当てます。

方針 URLの形の例 適用する軸 インデックス
静的パスで持つ /products/valve/ 検索需要のあるカテゴリ・用途。1〜2軸まで させる
パラメータとcanonical /products/valve/?bore=50a 掛け合わせの絞り込み 一覧ページへ集約する
クロールを制限する /products/valve/?sort=price 並び順、表示件数、セッションID させない

基準は検索需要の有無だけです。「バルブ 50A」で調べる人がいれば静的パスの候補、条件を4つ重ねた画面はほぼ検索されません(GoogleのECサイトURL構造ガイド)。

やってはいけないURLの持たせ方

避けたい実装を挙げます。

  • 並び順や表示件数だけが違うURLをすべてリンクで露出させる
  • セッションIDをURLに含めたまま公開する
  • 絞り込み結果から、さらに絞り込み結果へ無限にたどれる
  • 同じ内容に、パラメータ違いのURLを複数割り当てる
  • canonicalに、アクセスされたURLをそのまま出力する

最後の1点は実装ミスとして頻出します。canonicalには、あらかじめ定義した正規URLを入れます(SEMリサーチのファセット設計解説)。

Product構造化データで、製品ページを機械可読にする

構造化データ(=ページ内容を検索エンジンが解釈できる形式で記述する仕組み)を、製品詳細ページに埋めます。JSON-LDなら、画面の表示と切り離して管理できます。

GoogleのProduct構造化データ解説では、用途が2つに分かれます。価格や在庫を含む「マーチャントリスティング」と、レビュー中心の「商品スニペット」です。BtoBの製品カタログは、どちらにも当てはまりません。

無理にofferを作る必要はありません。価格を顧客ごとに出し分ける設計は、顧客ランク別の価格表示で扱っています。

BtoBで最低限入れたいプロパティ

価格を持たない前提での優先順です。

  • name:カタログ上の製品名。型番だけにしない
  • skumpn:自社の管理型番とメーカー型番
  • brand:ブランド名またはシリーズ名
  • image:製品写真の絶対URL
  • description:用途と特徴を1〜2文で
  • additionalProperty:スペック表の各項目を名称と値のペアで

要点はadditionalPropertyです。耐熱温度、口径、材質といった仕様を、そのまま移せます。値はページの表示内容と一致させてください。

Web化を進める4ステップ

器の選定より先に、顧客の探し方を洗い出すところから始めてください。順番を間違えると後戻りが起きます。

探し方を洗い出してから作ると、後戻りが起きない 製品カタログをWeb化する手順を左から右へ示した図。ステップ1は顧客の探し方を洗い出す。ステップ2は項目と絞り込み軸を決める。ステップ3はURL設計とインデックス方針を固める。ステップ4は構造化データを載せて公開する。 1 探し方を洗い出す 2 項目と軸を決める 3 URL設計を固める 4 構造化して公開する
図2:探し方を洗い出してから作ると、後戻りが起きない
  1. STEP1/探し方を洗い出す(営業+Web担当・半日〜1日):問い合わせ文面と検索クエリを並べ、条件を表す語を抜き出す
  2. STEP2/項目と絞り込み軸を決める(Web担当+商品管理・1〜2週間):抜き出した語を軸に落とし込み、5〜7本まで絞る
  3. STEP3/URL設計とインデックス方針を合意する(Web担当+情報システム・数日):3つの方針を軸ごとに割り当てる
  4. STEP4/構造化データを載せて公開し、計測する(Web担当・公開後4〜8週間で評価):Search Consoleで流入クエリを確認する

STEP3を後回しにすると、公開後にURLの付け替えとリダイレクト設定が発生します。

よくある質問

PDFカタログのままだと、SEOで不利になりますか

PDF自体がインデックスされないわけではありません。ただし1ファイルに複数製品が入ると、個別の型番で検索した人の意図と合いにくくなります。HTMLページを主とし、PDFは詳細資料として併置します。

Webカタログの作成に、専用ツールは必要ですか

数十点までなら、既存のCMSで個別ページを作る方法でも運用できます。絞り込み検索や条件別の出し分けが要る段階で、データベース型に切り替えます。

製品が1,000点あります。全ページを個別に作るのですか

手作業では現実的ではありません。製品マスタから自動でページを生成する構成にします。CSVでの一括登録に対応していれば、既存データをそのまま投入できます。

絞り込み検索のURLは、インデックスさせたほうがよいですか

すべてを登録させる必要はありません。検索需要のある軸だけを静的パスで持ち、それ以外はcanonicalで一覧ページへ集約します。並び順や表示件数は、クロール対象から外します。

まとめ

製品カタログのWeb化は、ファイルを置き換える作業ではなく、製品情報をデータに組み替える作業です。

  1. 1製品が1レコード・1URLになっているかが、Webカタログの分かれ目
  2. 製品点数が50点を超えるなら、データベース型を前提に方式を選ぶ
  3. 絞り込み軸は顧客の問い合わせ文面から逆算し、5〜7本に抑える
  4. インデックスさせる組み合わせを、公開前に3つの方針へ割り当てる
  5. Product構造化データは価格を無理に書かず、スペック項目を正確に記述する

次のアクションは、問い合わせメールを30件ほど並べるところからです。

toviraのカスタマーポータルでは、スペック表の自由設計、関連度でスコアリングする全文検索、CSVでの一括登録を組み合わせて製品情報を公開できます。自社のカタログで実現できるかは、実際の画面でご確認ください。デモを依頼する

出典

  • 経済産業省『令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました』 meti.go.jp(参照:2026-07-26)
  • Google 検索セントラル『Managing crawling of faceted navigation URLs』 developers.google.com(参照:2026-07-26)
  • Google 検索セントラル『Ecommerce URL Structure Best Practices』 developers.google.com(参照:2026-07-26)
  • Google 検索セントラル『Intro to Product Structured Data on Google』 developers.google.com(参照:2026-07-26)
  • SEMリサーチ『SEO:Googleが薦めるファセットナビゲーション設計のベストプラクティス』 sem-r.com(参照:2026-07-26)
  • tovira『製品登録機能』 tovira.jp(参照:2026-07-26)
編集者:

中川 晃次

再生ファンド傘下の複数企業にて、マーケティングディレクターとして事業再生を牽引。戦略立案から実行まで一貫して手がけ、ECサイトにおいては売上前年比150%成長を5年連続で達成した実績を持つ。現在はマーケティングSaaS「tovira」の開発に加え、BtoB領域のマーケティングコンサルティングを通じて、企業の持続的な成長を支援している。

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