型番で検索したのに、目当ての製品が出てこない。取引先からそう言われた経験のある方は多いはずです。

原因は多くの場合、元の製品データにあります。営業部門のExcel、設計部門の図面台帳、カタログの入稿データ。同じ製品が3か所で違う番号を持てば、Webに載せた瞬間に矛盾が表へ出ます。

この記事では、製品スペックと型番の管理をオンライン化する手順をデータ側から解説します。型番体系、スペック項目の定義書、単位と表記ゆれの正規化、廃番・後継品・改訂履歴の4領域です。

読み終えたときに、自社の製品マスタをどの順番で整えるかが決まっている状態を目指します。

製品スペック・型番管理のオンライン化とは

製品スペック・型番管理のオンライン化とは、カタログPDFをWebに置き換える作業ではありません。製品情報を項目単位のデータとして1か所に持ち、検索画面もPDFもそこから出力できる状態を指します。

分かれ目は、顧客が絞り込めるかどうかです。ファイルを開いて目視で探す運用は、置き場所が変わっただけです。

オンライン化の段階を、顧客ができることで整理しました。

段階 情報の持ち方 顧客ができること 限界
第1段階:PDF配布 ファイル単位 最新版を1か所から取得できる 中身を検索・比較できない
第2段階:製品ページ化 ページ単位のHTML ページ内検索と外部検索からの流入 項目をまたいだ絞り込みができない
第3段階:構造化マスタ 項目単位のデータ スペック条件での絞り込み、横並び比較、ロール別の出し分け 項目設計と表記統一が前提になる

第3段階に進んで初めて、「使用圧力3MPa以上、材質SUS316、接続口径15A」で候補を絞り込めます。取引先の設計担当者が求めているのは、この操作です。

第2段階のページを数千点ぶん量産してから構造化に着手すると、作り直しが発生します。項目設計を先に済ませるほうが早く終わります。

オンライン化が進まない本当の理由は、データ側にある

製品情報の公開プロジェクトが止まるとき、議題はたいてい「どのツールを使うか」です。しかし障害は、ツールより手前にあります。

詰まる箇所は、次の4つに集約されます。

  • 型番体系の不統一:営業の型番、設計の図番、基幹システムの品目コードが一致していない
  • スペック項目の粒度差:ある製品は「サイズ」1項目、別の製品は「幅・奥行・高さ」3項目になっている
  • 単位と表記のゆれ:kgとキログラム、SUS304とSUS-304が混在している
  • 廃番と改訂履歴の欠落:いつ仕様が変わり、どれが後継品なのかを記録していない
公開が止まる原因は、この4つのデータ課題に集約される 製品情報のオンライン化を止める4つのデータ課題を並べた図。型番体系の不統一は同じ製品に複数の番号がある状態。スペック項目の粒度差は比較も絞り込みもできない状態。単位と表記のゆれは検索でヒットしない状態。廃番と改訂履歴の欠落は古い仕様が残り続ける状態。 型番体系の不統一 同じ製品に複数の番号がある スペック項目の粒度差 比較も絞り込みもできない 単位と表記のゆれ 検索でヒットしない 廃番と改訂履歴の欠落 古い仕様が残り続ける
図1:公開が止まる原因は、この4つのデータ課題に集約される

4つに共通するのは、紙とExcelの時代には表面化しなかった点です。人が読むならゆれは文脈で吸収されますが、検索とフィルタは吸収しません。

ゆれは、公開した瞬間に顧客の目へ触れます。

なぜ社内で型番の呼び方が割れるのか

型番が割れるのは不注意ではなく、部門ごとに管理の目的が違うためです。設計は図面の版数、生産は工程と部品構成、営業は顧客に伝わる呼び名を追いたい。

統合の順番を間違えないでください。3系統を1つに統一するのではなく、「どれを顧客向けの正とするか」だけを決めます。残りは対応表で紐づけます(製造業のデジタル化|カタログ・CADデータの会員提供)。

型番体系をどう決めるか

型番体系の設計で最初に決めるのは、桁数でも区切り記号でもありません。「意味を持たせるかどうか」です。

生産管理では、仕様を読み取れる品番を「意味あり品番」、連番のような品番を「意味なし品番」と呼び分けます。

観点 意味あり型番 意味なし型番
KZ-3000-SUS-15A P0000482
長所 型番を見れば仕様が分かる。現場の会話で通じる 仕様が増えても破綻しない。桁あふれが起きない
短所 選択肢が増えると体系が崩れる。桁数が伸び続ける 人が覚えられない。口頭のやりとりに向かない
向く用途 顧客に見せる表示用 システム内部の管理キー

意味あり型番は現場で強い一方、仕様が増えると破綻します。材質を1桁で表す設計だと、4種類目が出た時点で体系の外に置くことになります。

意味なし型番は破綻しませんが、人が扱えません。

表示用の型番と、内部の管理キーを分ける

現実的な解は、両方を持つことです。顧客に見せる表示用型番と、内部の不変キーを別の列で管理します。内部キーの条件は2つ。発番後に変更しないこと、廃番後も使い回さないことです。

コードの扱いは、流通業界の標準規格が参考になります。GS1 JapanのGTIN設定ガイドラインでは、1つの取引単位に1つのGTINを設定するのが原則です。異なる商品に同一のGTINは設定できません。成分や内容量など表示が変わる場合は、新しいGTINを設定します。

自社の型番も同じです。スペックが変わったのに型番を据え置けば、過去の出荷品と現行品の区別が付かなくなります。

スペック項目のマスタ設計|検索できる粒度まで項目を割る

スペック項目は、公開してから増やすと作り直しになります。項目定義を先に固めるのが最短です。

粒度の基準は1つだけ。顧客が絞り込みに使う値は、独立した項目に切り出します。自由記述の「仕様」欄に押し込めば、検索対象から外れます。

項目定義書に持たせる7つの列

項目定義書は、Excelの1シートで足ります。列は次の7つです。

何を書くか 記入例
項目名 顧客に見せる正式名称。社内の略称は使わない 最高使用圧力
データ型 数値/文字列/選択肢/日付/ファイル/画像 数値
単位 項目側で1つに固定する MPa
選択肢 取りうる値の一覧。ここにない値は登録させない SUS304/SUS316/SCS13
必須・任意 未入力のまま公開してよいか 必須
公開範囲 どのロールに見せるか 全会員/代理店のみ
検索対象 絞り込み条件に使うか、使う場合の形式 使う(数値範囲指定)

見落とされやすいのは「公開範囲」と「検索対象」の2列です。仕入価格のように代理店にだけ見せる項目を項目単位で制御できないと、一般会員向けのページを二重に作ることになります。設計例はユーザーロールで情報・価格を出し分ける仕組みにあります。

表記ゆれは公開前ではなく入力時に潰す

表記ゆれの一括置換は、件数が増えるほど失敗します。公開直前のクレンジングではなく、入力時に選ばせる設計にしてください。

  1. 取りうる値が有限なもの(材質、色、規格)は選択肢型にする。自由入力を許さない
  2. 数値は数値型と単位固定にする。単位はセルに書かず項目定義側で決める
  3. 英数字は半角へ統一する。全角の型番は登録できないようにする
  4. 自由記述の備考欄は、検索対象から外すと決めておく

単位の統一は社内ルール以前の問題でもあります。計量法第8条第1項は、取引または証明に法定計量単位以外を用いてはならないと定めています(取引又は証明における規制)。

例えばtoviraでは、製品登録機能でスペック項目を自由に設計できます。選択肢やファイルは型ごとに登録する考え方です。

製品情報の項目設計と公開範囲の決め方をまとめた資料をご用意しています。資料をダウンロードする

廃番・後継品・改訂履歴をどう持つか

オンライン化で最も後回しにされ、最も問い合わせを生むのがこの領域です。廃番品の情報を消せば、既存顧客は保守部品を探せなくなります。

製品の状態は「販売中かどうか」の2値では足りません。少なくとも5段階で持たせます。

ステータス 顧客に見せるか ページに表示するもの
現行品 見せる 通常のスペックと図面
生産終了(在庫販売中) 見せる 生産終了日と在庫状況
受注終了 見せる 後継品へのリンク
廃番(保守対応中) 見せる 補修部品と互換情報、保守期限
完全終息 見せる 過去仕様の閲覧と後継品への導線のみ

どの状態でも製品ページを消さない。これが原則です。削除すれば、旧型番で検索した顧客は「該当なし」に行き着きます(問い合わせを減らす方法)。

後継品リンクは双方向で持たせてください。新品側にも「旧型番の後継です」と記載すれば、旧型番で流入した顧客を受け止められます。

改訂履歴は「いつ・どこが・誰の承認で」を残す

改訂履歴は、変更前後の値だけでは足りません。最低限、次の5点を1レコードとして残します。

  • 改訂日(適用開始日とWeb公開日を分けて持つ)
  • 改訂した項目名と、変更前・変更後の値
  • 改訂の理由(材料変更、法規対応、誤記訂正)
  • 承認者
  • 対象となるロットや製造番号の範囲

「誤記訂正」を他の理由と区別しておくと後から効きます。仕様が変わったのか、記載を直しただけなのか。この区別がないと、問い合わせのたびに調査へ時間を取られます。

既存データをオンラインへ移す4ステップ

移行は、データの棚卸しから始めます。ツール選定を先に走らせると、要件が固まらないまま見積もりを取ることになります。

  • STEP1|現行型番の棚卸し(目安2〜4週間・営業/設計/生産管理):部門ごとの番号をすべて出し、対応表を作ります。ここで対象件数が確定します
  • STEP2|項目定義書の作成(目安2〜3週間・製品企画):共通項目とカテゴリ固有の項目を分けて設計すると、後から製品群を追加しやすくなります
  • STEP3|正規化とCSV一括登録(目安3〜6週間・情報システム):表記を揃え、選択肢マスタを作り、主力カテゴリから順に投入します
  • STEP4|公開範囲と更新ルールの設定(目安1〜2週間・全部門):ロールごとの閲覧可否と、更新の担当・承認フローを決めます(ユーザーロール機能
項目定義を先に固めると、移行の手戻りが減る 製品マスタ移行の手順を左から右へ示した図。ステップ1は現行型番を棚卸す。ステップ2は項目定義書を作る。ステップ3は表記と単位を正規化する。ステップ4は公開範囲と責任を決める。 1 現行型番を棚卸す 2 項目定義書を作る 3 表記と単位を正規化する 4 公開範囲と責任を決める
図2:項目定義を先に固めると、移行の手戻りが減る

期間の目安は、数千型番規模の部門横断プロジェクトを想定した値です。

運用を止めないための決めごと

公開した製品マスタは、放っておけば3か月で古くなります。運用設計で決めるのは2点だけです。

  • 項目ごとの更新責任者:その項目の値を決めている部門に持たせる。価格は営業、材質は設計という割り当てにする
  • 新製品登録の締め切り:発売日の何営業日前までに登録を終えるかを商品化プロセスに書き込む

更新責任者を1人に集約した瞬間、その人の作業待ちが全社のボトルネックになります。

よくある質問

型番管理はExcelのままでは難しいのでしょうか

数百型番までで社内閲覧に限るならExcelでも運用できます。難しくなるのは顧客に直接見せる場合です。同じファイルの複数版が散らばると、どれが最新かを保証できません。

意味あり型番と意味なし型番、どちらを採用すべきですか

一方を選ぶ必要はありません。表示用型番は意味あり、内部の管理キーは意味なしで持つ構成が扱いやすくなります。既に定着しているなら、内部キーを裏側に足す進め方が現実的です。

廃番になった型番を、別の製品に付け直してもよいですか

避けてください。過去の見積書や図面に残った型番が、別の製品を指すことになります。GTIN設定ガイドラインでも、異なる商品に同一のコードを設定しないことが原則とされています。

既存のカタログPDFはそのまま使えますか

添付ファイルとしては使えます。ただし、PDFの中身は検索や絞り込みの対象になりません。スペック値は別途データとして登録し、PDFは詳細資料として紐づけます。

まとめ|型番とスペック項目が決まれば、公開は作業になる

製品スペック・型番管理のオンライン化は、ツールを選ぶ前にデータを決める作業です。要点を整理します。

  1. 型番は全社統一を目指さず、「顧客向けの正」を決めて残りは対応表で紐づける
  2. 表示用型番と内部キーを分け、内部キーは変更も使い回しもしない
  3. 絞り込みに使う値を独立させ、項目定義書の7列で管理する
  4. 廃番品のページは消さず、後継品リンクを双方向で持ち、改訂履歴を残す

次のアクションは、項目定義書のシートを1枚作ることです。主力カテゴリ1つぶんで構いません。全体像の整理にはカスタマーポータルとはもお読みください。

toviraのカスタマーポータルは、自由設計のスペック表と項目単位のロール制御を1つの基盤で扱えます。自社の型番データで動くかは実際の画面でご確認ください。デモを依頼する

出典

  • GS1 Japan『GTIN設定ガイドライン』 gs1jp.org(参照:2026-07-26)
  • 経済産業省『2.取引又は証明における規制』 meti.go.jp(参照:2026-07-26)
  • tovira『製品登録機能』 tovira.jp(参照:2026-07-26)
編集者:

中川 晃次

再生ファンド傘下の複数企業にて、マーケティングディレクターとして事業再生を牽引。戦略立案から実行まで一貫して手がけ、ECサイトにおいては売上前年比150%成長を5年連続で達成した実績を持つ。現在はマーケティングSaaS「tovira」の開発に加え、BtoB領域のマーケティングコンサルティングを通じて、企業の持続的な成長を支援している。

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