検索ワード≠本当のニーズ。「言語化できていない顧客」に届くWebコンテンツの設計法購買行動の"言語化度"で変わるBtoBコンテンツ戦略

    BtoB Web Content Strategy

    検索ワード ≠ 本当のニーズ。
    「言語化できていない顧客」に届くWebコンテンツの設計法

    同じキーワードで訪れるユーザーでも、課題の「言語化度」はまったく異なります。この違いを理解すれば、コンテンツ戦略が変わります。

    「コンテンツを量産しているのに、問い合わせが増えない」――BtoBマーケティングでよく聞く悩みです。その原因の多くは、ニーズを明確に言語化できているユーザーにしか対応していないこと。本インフォグラフィックでは、ユーザーの「言語化度」を3段階に分類し、それぞれに合ったコンテンツ設計の全体像を図解します。

    参考文献・引用元

    本記事は、以下の学術文献・業界調査に基づいて構成されています。

    1

    Dixon, M. & Adamson, B. (2011)

    The Challenger Sale: Taking Control of the Customer Conversation — BtoB購買プロセスの57%が営業接触前に完了

    2

    Kotler, P. et al. (2017)

    Marketing 4.0: Moving from Traditional to Digital — 5Aモデルと顧客影響構造

    3

    FocusVision / Demand Gen Report (2019)

    B2B Buyers Survey Report — BtoB購買者は購買前に平均13本のコンテンツを消費

    4

    Google / Nielsen メタ分析 (2018-2020)

    Think with Google — フルファネル戦略でROI最大45%向上

    The Core Problem

    検索ワードの裏側に
    隠れた「本当のニーズ」

    ▲ 検索ワードに表れる領域

    SFA 比較
    勤怠管理 料金

    多くのBtoBサイトが対応しているのはここだけ

    水面=検索行動の境界

    曖昧な課題認識(言語化度:中)

    営業 効率化 方法 DX 何から始める SFA とは メリット

    漠然とした不満(言語化度:低)

    営業 うまくいかない 社内 非効率 業務 もやもや

    この水面下のユーザーに対応するコンテンツが、多くのサイトで不足している

    3 Layers Model

    検索行動の「言語化3層モデル」

    サイトに来るユーザーは全員「検索」しています。しかし、その検索ワードの精度=言語化度は3段階に分かれます。

    Level High

    言語化度「高」

    解決策を指名できている段階

    自分の課題を認識し、解決策のカテゴリを知り、具体的な製品名まで特定。「比較したい」「料金を知りたい」と、次のアクションも明確です。

    SFA 比較 勤怠管理 中小企業 料金 〇〇 vs △△

    Level Mid

    言語化度「中」

    方向性は見えているが曖昧な段階

    「何かを改善したい」という方向性は持っているが、どんなソリューションが必要か整理できていない。キーワードの粒度が粗い状態です。

    営業 効率化 方法 DX 何から始める SFA とは メリット

    Level Low

    言語化度「低」

    課題感はあるが言葉にできていない段階

    漠然とした不満や違和感があり、検索ワード自体が「何を知りたいのか」を正確に表現できていない。ハウツー記事を読んでも「なんか違う」と感じて離脱します。

    営業 うまくいかない 社内 非効率 業務 もやもや

    User Behavior

    「言語化できていない」
    ユーザーの4つの特徴

    感覚的なキーワードで検索

    ソリューション名ではなく「営業 成果 上がらない」のような自分の感覚をそのまま入力。検索ワードと解決策が結びついていない。

    「〇〇 とは」型で探索する

    「SFA とは」「MA ツール とは」のように用語を学習している段階。まだ比較・検討には至っていない。

    ゴールなく回遊→離脱

    「記事A → 記事B → トップ → 記事C → 離脱」。何かを探しているが見つからないまま去っていく。

    ハウツー記事に満足しない

    「10の方法」を求めているように見えて、実は「うちの根本原因は何?」という診断を求めている。

    サイト内行動の比較

    言語化度「高」── 直線的にCVへ

    比較記事 料金ページ 導入事例 問い合わせ ✓

    言語化度「低」── 回遊して離脱

    記事A 記事B トップ 記事C 離脱 ✗

    Content Mapping

    言語化度別
    コンテンツ設計マッピング

    各層のユーザーに対して、どんな役割のコンテンツを用意すべきか。

    言語化度「高」 → CV直結型

    役割

    比較・選択を支援し、CVに直結させる

    主な形式

    比較記事、料金表、導入事例、FAQ、デモ依頼

    KPI

    CVR、SQL数、商談化率

    言語化度「中」 → 課題構造化型

    役割

    課題に「名前」をつけ、言語化を支援する

    主な形式

    診断チャート、チェックリスト、課題整理記事、WP

    KPI

    MQL数、DL数、滞在時間

    「セルフ診断」や「チェックリスト」は特に有効。ユーザーが項目に自分を当てはめるプロセス自体が「課題の言語化」の行為になるため。

    言語化度「低」 → 課題発見・気づき型

    役割

    「自分にもこの問題がある」と気づかせる

    主な形式

    問題提起記事、トレンド、ストーリー、統計記事

    KPI

    PV、新規訪問率、回遊率

    最重要ポイントは「自分ごと化」。具体的なデータ+読者の日常と接続する問いかけの組み合わせで「うちのことかも」と感じさせる。

    The Verbalization Staircase

    「言語化の階段」で
    ユーザーをCVへ導く

    3層のコンテンツを「点」ではなく「階段」として連結させ、段階的に言語化度を引き上げます。

    1
    低 → 中

    「気づき」を得る

    漠然とした不満に構造を与え、課題の解像度を一段上げるコンテンツ。

    記事例:「"営業がうまくいかない"の正体は?よくある5つの原因パターン」

    CTA:「自社の課題をチェックしてみる → セルフ診断へ」

    2
    中 → 高

    「課題を整理する」

    課題の方向性をさらに具体化し、「自分に必要なのはこういうツールだ」と気づかせるコンテンツ。

    記事例:「勤怠管理の課題パターンは4つ。あなたの会社はどのタイプ?」

    CTA:「ツールの選び方ガイド(無料DL)」

    3
    高 → CV

    「解決策を比較・評価する」

    課題が明確になったユーザーが、具体的なソリューションを比較検討しCVに至るコンテンツ。

    記事例:「クラウド勤怠管理システム主要5社比較|規模別の最適な選び方」

    CTA:「まずは無料デモで操作感を確認 → デモ依頼」

    Implementation

    「階段」を実装する
    3つの仕掛け

    仕掛け①

    CTAの言語化度対応

    記事の言語化度に合った「次の一歩」をCTAに設定。低→「診断する」、中→「比較ガイド」、高→「デモ依頼」。

    仕掛け②

    関連記事レコメンド

    同じ言語化度の記事だけでなく、「一段上の言語化度の記事」も関連記事に含めて、階段を上る導線をつくる。

    仕掛け③

    内部リンク設計

    記事本文中の内部リンクを「言語化の進行方向」に沿って配置。読み終わる頃に課題が整理されている体験を。

    Action Plan

    明日から始める3ステップ

    01

    棚卸しする

    既存コンテンツを言語化度の3層で分類。多くの場合「低〜中」向けが大幅に不足していることが判明します。

    02

    不足層を埋める

    まずは言語化度「中」向けから着手。「一押しでCVに近づく層」であり、ホワイトペーパーとしてリード獲得にも直結。

    03

    階段を設計する

    CTA・関連記事・内部リンクを再設計し、回遊を通じて言語化度が自然に上がる「階段」動線を構築。

    コンテンツ設計のカギは
    「ユーザーの言語化度」にある

    原則 1

    言語化できている人には
    「答え」を提供する

    原則 2

    曖昧な人には課題に
    「名前」をつけてあげる

    原則 3

    言葉にできない人には
    「気づき」を与える

    多くのBtoBサイトが「言語化できている層」向けに偏っている今、「言語化できていない層」に向き合うコンテンツ設計は、大きな差別化要因となります。

    購買行動の"言語化度"で変わるBtoBコンテンツ戦略

    「コンテンツを量産しているのに、問い合わせが増えない」「検索流入はあるのに、CVにつながらない」――BtoBのWebマーケティングに取り組む企業が、必ずと言っていいほどぶつかる壁です。

    この問題の根本原因は、多くの場合「自社サイトのコンテンツが、ニーズを明確に言語化できている顧客にしか対応していない」ことにあります。

    以前、私たちは「ニーズを"言語化できているか"で決まる広告の選び方」という記事で、顧客の課題の言語化度合いに応じて最適な広告手法が変わることを解説しました。本記事ではこの「言語化」フレームワークを、Webサイト上のコンテンツ設計に応用します。

    Webサイトには、広告と決定的に異なる前提条件があります。それは「訪問者は全員、何らかのキーワードを検索して来ている」ということ。つまり、完全な非認知層は存在しません。全員が「何かしらの言葉を入力できた」人たちです。

    しかし、その検索ワードが本当のニーズを正確に言い当てているかどうかは、別の話です。「SFA 比較」と入力した人と「営業 うまくいかない」と入力した人では、課題の言語化度はまったく異なります。そして後者のような「言語化が不完全な状態で来訪しているユーザー」は、実はサイト訪問者の大多数を占めている可能性があります。

    本記事では、検索行動における「言語化のグラデーション」を整理し、それぞれの言語化度に対応するWebコンテンツの設計法を具体的に解説します。

    第1章:検索行動にも「言語化の3層構造」がある

    検索ワード = 本当のニーズ、ではない

    Webサイトのコンテンツ設計において、もっとも陥りやすい誤りは「検索ワードをそのままユーザーのニーズとして受け取ること」です。

    たとえば、「営業 効率化 方法」と検索した人のニーズは「営業を効率化する方法を知りたい」でしょうか? 表面的にはそのとおりです。しかし、この検索の背後には「チームの営業成績が下がっているが原因がわからない」「上司から改善を求められたが何から手をつけていいか整理できない」「SFAというツールの存在自体を知らない」といった、まだ十分に言語化されていない課題が隠れている可能性があります。

    検索意図の分析において、GIG社の白砂氏は「インサイトとは、ユーザーの顕在化していない(=言語化できていない)本音」であると述べています。検索ワードはあくまで氷山の一角であり、その下には言語化しきれていない深層のニーズが存在します。

    ▼ 水面(検索行動の境界) 検索ワード 「SFA 比較」「勤怠管理 料金」 曖昧な課題認識 「営業 効率化 方法」「DX 何から」 漠然とした不満・違和感 「営業 うまくいかない」「業務 もやもや」 言語化度:高 ニーズが明確 言語化度:中 方向は見えるが曖昧 言語化度:低 言葉にできていない 多くのBtoBサイトが 対応しているのはここだけ この領域のユーザーに 対応できていない 図1:検索ワードと潜在ニーズの氷山モデル 検索ワードはニーズ全体のごく一部。水面下の「言語化できていない領域」にこそ多くのユーザーがいる

    検索行動の「言語化3層モデル」

    前回の広告記事では、顧客を「非認知層・潜在層・顕在層」の3層に分類しました。Webサイトの文脈では、全員が何らかの検索をしているため、この分類を「検索ワードの言語化精度」で再定義します。

    第1層:言語化度「高」 ── 解決策を指名できている段階

    検索ワードの例:SFA 比較 勤怠管理システム 中小企業 料金 〇〇 vs △△

    この層のユーザーは、自分の課題を認識し、解決策のカテゴリを知り、具体的な製品名やサービス名まで特定できている状態です。「比較したい」「料金を知りたい」「導入事例を見たい」と、次のアクションも明確です。多くのBtoBサイトが注力しているのはこの層向けのコンテンツです。

    第2層:言語化度「中」 ── 方向性は見えているが曖昧な段階

    検索ワードの例:営業 効率化 方法 バックオフィス 工数削減 DX 何から始める SFA とは メリット

    課題の存在は認識しており、「何かを改善したい」という方向性は持っています。しかし、具体的にどんなソリューションが必要なのか、自社の問題の本質が何なのかは、まだ整理しきれていません。検索ワードは正しいけれど「粒度が粗い」状態です。

    第3層:言語化度「低」 ── 課題感はあるが言葉にできていない段階

    検索ワードの例:営業 うまくいかない 社内 非効率 なんとかしたい 働き方 改善 何をすれば 業務 もやもや

    「何かが問題だ」という漠然とした不満や違和感があり、検索窓に入力はしたものの、検索ワード自体が「何を知りたいのか」を正確に表現できていない状態です。こうしたユーザーは、一般的なハウツー記事を読んでも「なんか違う」と感じて離脱します。なぜなら、本人すら自分のニーズを正確に把握できていないからです。

    なぜ「言語化度」がコンテンツ設計に重要なのか

    えそらLLC社は、潜在ニーズを「引き出せるもの」と「仮説として導き出すもの」の2種類に分類しています。前者は問いかけのきっかけがあれば本人が言語化できるニーズ、後者は第三者が行動観察から推測するしかないニーズです。

    Webコンテンツにおいても同様の考え方が適用できます。言語化度「中」のユーザーには、「あなたの課題はこういうことではないですか?」と問いかけるコンテンツが有効です。一方、言語化度「低」のユーザーには、「こんな状況に心当たりはありませんか?」と課題の存在そのものに気づかせるコンテンツが必要です。

    つまり、コンテンツの役割は言語化度によってまったく異なります。

    • 言語化度「高」 → 比較・選択の支援(答えを提供する)
    • 言語化度「中」 → 課題の整理・構造化の支援(問題に名前をつけてあげる)
    • 言語化度「低」 → 課題の発見・自分ごと化の支援(気づきを与える)

    第2章:「言語化できていない」ユーザーの検索行動を理解する

    言語化が不十分なユーザーはどう動くか

    BtoBサイトのアクセス解析を見たことがある方なら、こんな経験はないでしょうか。「検索流入で来ているのに、すぐに離脱する」「複数ページを回遊しているのに、CVポイント(問い合わせ・資料ダウンロード)に到達しない」。

    これらの行動は、言語化度が低い〜中程度のユーザーに特徴的なものです。彼らの行動パターンを整理すると、以下のような傾向が見えてきます。

    特徴①:抽象的・感覚的なキーワードで検索する

    言語化度が低いユーザーは、具体的なソリューション名ではなく、自分の「感覚」をそのまま検索窓に入力します。営業 成果 上がらない 経理 作業 多い 社内コミュニケーション 問題のように、課題を自分の言葉で表現しようとするものの、その言葉が解決策の世界と結びついていない状態です。

    特徴②:「〇〇 とは」型のKnowクエリで探索する

    何かの記事で見かけた用語を手がかりに、SFA とは MA ツール とは DX とは 中小企業のように調べます。まだ解決策のカテゴリを学習している段階であり、比較・検討には至っていません。

    特徴③:複数ページを回遊するが、特定のゴールに向かわない

    言語化できているユーザーは「料金ページ → 導入事例 → 問い合わせフォーム」のように直線的にCVへ向かいます。一方、言語化が不完全なユーザーは「ブログ記事A → ブログ記事B → トップページ → ブログ記事C → 離脱」のように、何かを探しているが見つからないまま去っていきます。

    言語化度「高」のユーザー ── 直線的にCVへ向かう 比較記事 SFA 比較 料金ページ プラン確認 導入事例 実績確認 問い合わせ CV達成 ✓ 言語化度「低」のユーザー ── 回遊して離脱する ブログ記事A なんか違う… ブログ記事B これも違う… トップページ 戻ってみる ブログ記事C うーん… 離脱 図2:言語化度別サイト内行動パターン 言語化度が高いユーザーはCVに直進する。低いユーザーは「探しもの」が定まらず回遊・離脱する

    特徴④:一般的なハウツー記事では満足しない

    「営業 効率化 方法」で来訪したユーザーに「営業を効率化する10の方法」を提示しても、「そうじゃないんだよな……」と感じて離脱するケースがあります。なぜなら、本人が本当に知りたいのは「10の方法」ではなく、「自社の営業がうまくいかない根本原因は何なのか」だからです。方法論を求めているように見えて、実は課題の診断を求めている。ここに、検索ワード(表層的な言語化)と潜在ニーズ(本当の課題)のギャップがあります。

    「検索しているのにニーズがわからない」矛盾

    「顧客はなぜ自分のニーズがわからないのか」という問いについて、マーケティング研究者は興味深い指摘をしています。人間の行動は意識ではとらえきれず、日々の膨大な活動のなかでニーズとして言語化されるのはごく一部にすぎないという見解です。多くのニーズは言語化されないまま眠っており、それを掘り起こしてくれるような情報や体験に出会ったとき、はじめて「そうそう、これが知りたかった!」となるわけです。

    Biz/Zineの記事が指摘するように、「言語化できないインサイト」は、ユーザー自身に直接尋ねても正確には出てこない。だからこそ、コンテンツ側から「こういうことではありませんか?」と仮説を提示するアプローチが有効になる。

    BtoBの文脈では、この「言語化されない眠ったニーズ」を持つ人が、漠然としたキーワードであなたのサイトを訪れています。その人たちに対して「あなたが探しているのは、もしかしてこういうことではありませんか?」と導いてあげるコンテンツ。それこそが、多くのBtoBサイトに欠けているピースです。

    第3章:言語化度別 コンテンツ設計マッピング

    ここからは具体的な設計に入ります。言語化度の3層それぞれに対して、どのようなコンテンツを用意すべきかをマッピングします。

    言語化度「高」向けコンテンツ ── CV直結型

    比較・選択を支援し、問い合わせ・デモ依頼・トライアルなどのCVに直結させるコンテンツです。

    適切なコンテンツ形式

    • 製品・サービスの比較記事(「〇〇 vs △△」型)
    • 料金・プラン紹介ページ
    • 導入事例・お客様の声
    • FAQ・よくある質問
    • 無料トライアル・デモ依頼ページ
    • ROI試算ツール

    タイトル例

    • 「〇〇ツール主要5社を徹底比較|機能・料金・導入実績で選ぶ」
    • 「〇〇導入で売上30%向上。A社の事例に学ぶ成功のポイント」
    • 「〇〇の料金体系を完全解説。自社に最適なプランの選び方」

    KPI:CVR(コンバージョン率)、SQL数、商談化率、CPA

    この層向けのコンテンツは、多くのBtoBサイトがすでに十分に用意しているケースが多いです。課題は、このコンテンツだけでは「言語化できている限られた母集団」にしかリーチできないという点にあります。

    言語化度「中」向けコンテンツ ── 課題構造化型

    ユーザーの漠然とした課題に「名前」をつけ、課題の構造を整理してあげるコンテンツです。「あなたの問題はこういう問題です」と言語化を支援します。

    適切なコンテンツ形式

    • 課題の類型化・整理記事(「〇〇がうまくいかない3つの原因」型)
    • セルフ診断・チェックリスト(「あなたの営業組織の課題はどのタイプ?」型)
    • フレームワーク解説記事(問題を分析するための思考ツールを提供)
    • 業界別・部門別の課題マップ
    • 用語解説+実務への接続(「〇〇とは?」からさらに踏み込んだ内容)
    • ホワイトペーパー・ガイドブック

    タイトル例

    • 「営業の生産性が上がらない原因は3パターンに分類できる」
    • 「あなたの会社に必要なのはSFA?MA?CRM?課題別ツール診断チャート」
    • 「バックオフィスの"なんとなく非効率"を可視化する5つの指標」
    • 「DXを進める前に確認すべき"現状の業務課題"チェックリスト」
    • 「BtoB営業の属人化を防ぐ組織設計のフレームワーク」

    KPI:MQL数、コンテンツDL数、ページ滞在時間、関連コンテンツへの回遊率

    このコンテンツの最大の役割は、ユーザーの頭の中にある「もやもや」を構造化してあげることです。「あなたの課題は"営業がうまくいかない"ではなく、"商談後のフォローアッププロセスが属人化している"という問題です」と、漠然とした課題に具体的な名前をつける。これにより、ユーザーの言語化度は「中」から「高」へ引き上げられ、次のアクション(比較・検討)が可能になります。

    特に「セルフ診断」や「チェックリスト」は、BtoBにおいて非常に有効なフォーマットです。ユーザーが自分の状況を項目に当てはめるプロセスそのものが「課題の言語化」の行為だからです。

    言語化度「低」向けコンテンツ ── 課題発見・気づき型

    まだ自分の課題を正確に認識できていないユーザーに、「あなたにもこの問題があるかもしれませんよ」と気づきを与えるコンテンツです。課題の存在そのものに目を向けさせます。

    適切なコンテンツ形式

    • 問題提起型記事(「多くの企業が見落としている〇〇の落とし穴」型)
    • 業界トレンド・未来予測(「2026年、〇〇業界に起きる3つの変化」型)
    • 他社のストーリー・体験談(「A社の部長が"ある朝"気づいた業務の無駄」型)
    • 兆候指摘型記事(「こんな兆候はありませんか?」型)
    • データ・統計に基づく現状分析記事
    • 経営者・有識者インタビュー

    タイトル例

    • 「"特に問題ない"は本当か?営業組織が気づかないまま抱える3つのリスク」
    • 「月曜朝の会議が長い会社は、営業プロセスに問題がある可能性」
    • 「競合他社はすでに動いている。〇〇業界のDX最新事情」
    • 「紙の報告書がまだ残っていませんか?バックオフィスの見えないコスト」
    • 「"うちの営業は優秀だから大丈夫"が危険な3つの理由」
    • 「導入企業の70%が"もっと早くやればよかった"と回答した理由」

    KPI:リーチ数(PV・UU)、新規訪問率、SNSシェア数、次ページへの回遊率

    この層向けコンテンツでもっとも重要なのは「自分ごと化」です。抽象的な業界動向の話だけで終わらせず、読者が「あ、これうちのことかも」と感じる具体的なシーンや数字を盛り込みます。

    たとえば「営業のDXが進んでいます」と書くだけでは、まだ課題を認識していない人には響きません。「あなたの会社では、営業担当者が1日のうち何時間を報告書作成に費やしているか把握していますか? ある調査によれば、営業担当者の勤務時間のうち実際に顧客と対話しているのは全体の約3割にすぎません」のように、具体的なデータと読者の日常に接続する問いかけを組み合わせることで、「もしかして自分たちにも当てはまるかもしれない」という気づきを生みます。

    3層のコンテンツ設計 まとめ

    言語化度 ユーザーの状態 コンテンツの役割 主な形式 KPI
    解決策を指名検索 比較・選択の支援 比較記事、料金、事例、FAQ CVR、SQL数
    方向性は見えているが曖昧 課題の構造化・言語化支援 診断、チェックリスト、フレームワーク解説 MQL数、DL数
    漠然とした課題感で検索 気づき・自分ごと化の促進 問題提起、トレンド、ストーリー PV、回遊率

    第4章:言語化を"段階的に促す"サイト内動線の設計

    コンテンツは「点」ではなく「階段」で設計する

    前章で3層のコンテンツを整理しましたが、これらを個別の独立した記事として配置するだけでは不十分です。重要なのは、言語化度の低い状態で来訪したユーザーを、コンテンツの力で段階的に「言語化できる状態」へと導くサイト内動線です。

    これを私たちは「言語化の階段」と呼んでいます。

    STEP 1 「気づき」を得る 言語化度:低 → 中 問題提起・トレンド記事 CTA 「診断してみる」 STEP 2 「課題を整理する」 言語化度:中 → 高 診断・チェックリスト・WP CTA 「比較ガイドを見る」 STEP 3 「比較・評価」 言語化度:高 → CV 比較記事・事例・料金 👤 来訪 CV 図3:「言語化の階段」モデル 各ステップのCTAが「次の段」への架け橋となり、言語化度を段階的に引き上げる

    具体的には以下のような流れです。

    ステップ1:「気づき」を得る(言語化度:低 → 中)

    ユーザーが営業 うまくいかないのような曖昧な検索で来訪した場合、最初に出会うべきは「課題発見型コンテンツ」です。たとえば「"営業がうまくいかない"の正体は?よくある5つの原因パターン」という記事が、漠然とした不満に構造を与えます。読者はこの記事を通じて、「自分の問題は"商談数の不足"ではなく"商談後のフォロー漏れ"かもしれない」と、課題の解像度が一段上がります。

    ステップ2:「課題を整理する」(言語化度:中 → 高)

    課題の方向性が見えたユーザーには、さらに具体化を促すコンテンツを提供します。「商談フォロー漏れを防ぐ仕組みづくりガイド」のようなホワイトペーパー、あるいは「あなたの営業プロセスの課題はどこに?セルフ診断チャート」のようなインタラクティブコンテンツです。ここで、ユーザーは「自分に必要なのはSFAのようなツールらしい」という認識に至ります。

    ステップ3:「解決策を比較・評価する」(言語化度:高 → CV)

    課題が明確になったユーザーは、いよいよ具体的なソリューションの比較に入ります。「SFA主要5社比較」や「〇〇導入事例」、料金ページなどが受け皿となり、問い合わせやデモ依頼につながります。

    「言語化の階段」を実装する3つの仕掛け

    では、この「言語化の階段」をサイト上で実装するために、どのような仕掛けが必要でしょうか。

    仕掛け①:記事内CTAの言語化度に合わせた設計

    言語化度「低」向けの記事の末尾に、いきなり「お問い合わせはこちら」「デモ依頼」のCTAを置いても、ユーザーはまだそのアクションを取る準備ができていません。代わりに、「まずは自社の営業課題をチェックしてみませんか? → セルフ診断へ」「もっと詳しく知りたい方へ → ホワイトペーパーDL」など、「次の一歩」に自然につながるCTAを設計します。

    CTAも言語化度に合わせて段階的に変えることがポイントです。

    記事の言語化度 推奨CTAの例
    「チェックリストで自社を診断する」「関連ガイドを無料でダウンロード」
    「ソリューション比較ガイドを見る」「事例で効果を確認する」
    「無料デモを試す」「導入相談を予約する」

    仕掛け②:関連記事レコメンドによる「次のステージ」への誘導

    記事の末尾やサイドバーに表示する関連記事は、「同じ言語化度の記事」だけでなく、「一段上の言語化度の記事」も含めるべきです。たとえば、言語化度「低」の「営業組織が見落としがちな3つのリスク」の関連記事に、言語化度「中」の「営業プロセス課題診断チャート」を配置する。こうすることで、ユーザーはサイト内の回遊を通じて自然と「言語化の階段」を上っていきます。

    仕掛け③:コンテンツ間の内部リンクを「言語化の流れ」で設計する

    記事本文中に他の記事への内部リンクを設置する際も、「言語化の進行方向」を意識します。言語化度「低」の記事の中で、ある課題タイプについて詳しく解説する箇所で「この課題についてさらに詳しくは、〇〇の記事をご覧ください」と言語化度「中」の記事へ誘導する。これにより、「記事を読み終わる頃には、少し課題が整理できている」という体験を提供できます。

    「言語化の階段」設計の具体例

    BtoB SaaS企業が、勤怠管理システムを販売しているケースで考えてみましょう。

    段階 言語化度 記事タイトル例 読者の気づき 記事末CTA
    第1段 低 → 中 「残業時間の把握、本当にできていますか?"見えない残業"が企業にもたらすリスク」 うちも残業の実態をちゃんと把握できていないかもしれない 「自社の勤怠管理の現状を5分でチェック → 診断はこちら」
    第2段 中 → 高 「勤怠管理の課題パターンは4つ。あなたの会社はどのタイプ?」 うちは"データの手動集計型"の課題だな。クラウド化すれば解決できるのか 「クラウド勤怠管理ツールの選び方ガイド(無料DL)」
    第3段 高 → CV 「クラウド勤怠管理システム主要5社比較|従業員規模別の最適な選び方」 自社の規模と課題に合うのは〇〇だな 「まずは無料デモで操作感を確認 → デモ依頼フォーム」

    この3段階の動線が機能すると、「残業がちょっと気になる」という漠然とした課題感で来訪したユーザーが、サイト内の回遊を通じて自然と「クラウド勤怠管理システムの比較検討者」に変わっていきます。

    第5章:「言語化度」視点でコンテンツ戦略を見直す3つのステップ

    ここまでの内容を、明日から実践できるアクションプランとして3つのステップにまとめます。

    Step 1:既存コンテンツを「言語化度」で棚卸しする

    まず、自社サイトに現在ある全コンテンツ(ブログ記事、サービスページ、LP、ホワイトペーパーなど)を、言語化度の3層に分類してみてください。多くのBtoBサイトでは、この棚卸しをすると以下のような偏りが見つかります。

    言語化度 対応コンテンツの例 多くのBtoBサイトでの充足度
    サービスページ、料金表、導入事例、比較記事 充実している
    課題整理記事、診断コンテンツ、フレームワーク解説 やや不足
    問題提起記事、トレンド記事、気づきを促すストーリー 大幅に不足

    この偏りこそが、「検索流入はあるのにCVしない」問題の根本原因です。言語化が不完全な状態で来訪した大多数のユーザーに対して、適切なコンテンツが用意されていないのです。

    Step 2:不足している層向けのコンテンツを優先的に追加する

    棚卸しの結果をもとに、不足している層(多くの場合「言語化度:低〜中」)のコンテンツを重点的に制作します。

    制作の優先順位としては、まず言語化度「中」向けコンテンツから着手することをおすすめします。理由は2つあります。

    1. 言語化度「中」の層は「一押しあればCVに近づく」ユーザーであり、投資対効果が比較的早く現れるから
    2. 言語化度「中」向けコンテンツ(チェックリスト、課題整理記事)は、ホワイトペーパーとしてダウンロードコンテンツにもなるため、リード獲得にも直結するから

    言語化度「低」向けコンテンツは、母数の拡大(サイトへの新規訪問者を増やす)に効果的ですが、CVまでのリードタイムが長くなるため、中長期的な投資として位置づけます。

    Step 3:サイト内の回遊導線で「言語化の階段」を設計する

    最後に、第4章で解説した「言語化の階段」をサイト上に実装します。具体的には以下のアクションです。

    1. 各記事の末尾CTAを「その記事の言語化度に合った次のステップ」に変更する
    2. 関連記事レコメンドに「一段上の言語化度の記事」を含める
    3. 記事本文中の内部リンクを「言語化の進行方向」に沿って再設計する
    4. ユーザーの回遊パターンをアクセス解析で確認し、「階段」が機能しているか検証する

    特にBtoBサイトの場合、訪問企業の行動パターンを可視化できるツールを活用すれば、「どの企業が、どのコンテンツを、どの順番で閲覧しているか」がわかります。これにより、「言語化の階段」が設計どおりに機能しているか、どこでユーザーが離脱しているかを具体的に把握でき、改善の精度が格段に上がります。

    まとめ

    Webコンテンツの設計に迷ったら、まず問うべきは「どんな記事を書くか」ではありません。

    「このサイトに来ているユーザーは、自分の課題をどの程度言語化できているか?」

    この問いから出発すれば、必要なコンテンツの姿が見えてきます。

    検索ワードを完全にコントロールできているユーザーには、比較・選択を助けるコンテンツを。方向性は見えているが曖昧なユーザーには、課題に名前をつけてあげるコンテンツを。漠然とした違和感だけを持って来訪したユーザーには、気づきと自分ごと化を促すコンテンツを。

    そして、この3層のコンテンツを「言語化の階段」として連結させることで、漠然とした課題感で来訪したユーザーを、段階的に「解決策を比較検討できる状態」まで導くことができます。

    多くのBtoBサイトが「言語化できている層」向けのコンテンツに偏っている今、「言語化できていない層」に向き合うコンテンツ設計は、大きな差別化要因となるでしょう。

    参考文献

    1. Dixon, M., Adamson, B. (2011) The Challenger Sale: Taking Control of the Customer Conversation, Portfolio/Penguin — BtoB購買プロセスの57%が営業接触前に完了
    2. Kotler, P., Kartajaya, H., Setiawan, I. (2017) Marketing 4.0: Moving from Traditional to Digital, Wiley — 5Aモデルと顧客影響構造
    3. Google / Nielsen メタ分析 (2018-2020) フルファネル戦略でROI最大45%向上
    4. Wijaya, B.S. (2012) "The Development of Hierarchy of Effects Model in Advertising", International Research Journal of Business Studies, 5(1)
    5. FocusVision / Demand Gen Report (2019) "B2B Buyers Survey Report" — BtoB購買者は購買前に平均13本のコンテンツを消費
    最終更新日:2026-02-21
    編集者:

    中川 晃次

    再生ファンド傘下の複数企業にて、マーケティングディレクターとして事業再生を牽引。戦略立案から実行まで一貫して手がけ、ECサイトにおいては売上前年比150%成長を5年連続で達成した実績を持つ。現在はマーケティングSaaS「tovira」の開発に加え、BtoB領域のマーケティングコンサルティングを通じて、企業の持続的な成長を支援している。

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